同じ会社に再就職したり、復帰したりするケースがあります。
一時的な苦境を抜けるために退職するよう会社から求められたり、業績悪化の際に「後で再雇用する」と約束して退職を迫られたりする場合が典型例です。辞めた会社に魅力を感じ、労働者側から再就職を希望するケースもあります。
このような場面では、労働者として、同じ会社に復帰した場合でも失業保険を受け取れるのかが不安になるでしょう。失業保険は、職を失った労働者の生活保障となる重要な制度ですが、同じ会社への再就職だと、その条件を満たさなくなるおそれがあるからです。
今回は、同じ会社に復帰や再就職を予定している方に向け、失業保険を受給する際の注意点について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 労働者に退職を促すための再雇用の約束は、将来破られるおそれがある
- 業績や経営状況の悪化により倒産した場合、再雇用されることはできない
- 同じ会社への再就職や復帰の際は、失業保険の受給に支障がないかを確認する
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同じ会社に再雇用されるケースとは
はじめに、同じ会社に再雇用されるケースがどのようなものかを解説します。
労働契約の終了には、自主退職(辞職)、解雇、合意退職の3つの種類があります。労働者の意思によるものは自主退職か合意退職のいずれかですが、形式上は自主退職でも、会社の働きかけがあることも多く、その中で「将来の再雇用を約束する」というケースがあります。

同じ会社に再雇用されるのは、次のような理由がある場合です。
不当解雇のリスクを軽減したい場合
会社として、不当解雇のリスクを軽減するために退職勧奨を行うことがあります。労働審判や訴訟で不当解雇として争われれば無効になるおそれがある一方で、労働者の同意を取得することで自主的に辞めてもらうことができれば、企業にとって解雇のリスクをなくすことができます。
再雇用を約束して退職の同意を得た場合
解雇リスクを理解する会社は、労働者から退職の同意を得ようとしますが、生活に直結するので容易に同意はできません。そこで、「会社が復調すれば再雇用する」という約束をして退職を促す方法が用いられることがあります。
再雇用を約束する方法によれば、愛社精神の強い人ほど「会社のため」と我慢してしまい、その結果、退職勧奨が会社の思い通りに進んでしまうことも少なくありません。
「退職勧奨のよくある手口」の解説

復調した際の人手不足を避けたい場合
災害や事故、社会問題などによる一時的な業績悪化は、短期間での好転が予想される場合もあります。このとき悩みの種となるのが、人材確保の問題です。
過去の退職者は、自社の業務内容や企業風土、慣習を理解しており、新たに入社する人よりも早期に戦力となります。採用や教育のコストも少なく済むため、再雇用の約束をすることで、いざ経営が上向いたときに人手不足を避けることができます。
「人手不足なのに雇わない理由」の解説

再雇用を約束して辞めると失業保険がもらえない

再雇用を約束して辞める最大の不利益は、失業保険がもらえないおそれがあることです。
失業保険は、職を失った後の労働者の生活を支える重要な給付であり、失ってもよいほどの大きな利益がない限り、退職に同意してはなりません。
なぜ、再雇用を約束して退職すると失業保険を受け取れないのか、理由を解説します。
再就職の意思がないと失業保険がもらえない
「会社が倒産するかもしれないから、一旦退職して、失業保険で生活しよう」と考える人もいるでしょう。しかし、再雇用を約束しての退職だと、失業保険がもらえないおそれがあります。
失業保険は「失業状態」にある場合にのみ給付されます。「失業」とは、就職する意思と能力があるのに仕事が見つからない状態を指します。再雇用が約束された状態は、そもそも「失業」に該当しません。再雇用の予定があると、求職活動をしていないと判断されるからです。
新型コロナウイルスに関するQ&A(厚生労働省)にも、「雇用保険の基本手当は、再就職活動を支援するための給付です。再雇用を前提としており従業員に再就職活動の意思がない場合には、支給されません」と明記されています。
「失業保険の手続きと条件」の解説

同じ会社に再就職しても再就職手当はもらえない
失業保険は、転職活動をしている間に受け取れる給付ですが、早期に再就職した人にも一定の給付があります。この早期再就職者への支援が、「再就職手当」です。
ただし、再就職手当は、同じ会社に再就職した場合には支給されないことになっています。これは、雇用保険法施行規則82条で「離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと」が就業促進給付を受ける条件として定められているからです。
「退職勧奨で辞めるのは会社都合」の解説

入退社の繰り返しは「循環的離職」として不正受給になる
同じ会社で入退社を繰り返し、そのたびに失業保険を受け取る行為は「循環的離職」として問題視されます。最初から再雇用が決まっていながら形式的に退職し、失業保険を受け取ることは制度の悪用とみなされ、ハローワークも短期の離職と再就職が厳しくチェックします。
不正受給と判断されれば、受け取った給付金の返還だけでなく、その2倍の額の納付命令(いわゆる3倍返しのペナルティ)のおそれがあり、会社ぐるみの不正の場合は事業主の責任を問われる可能性もあります。
「会社を助けるため」といった意図が背景にあったとしても、結果として違法行為に加担することになりかねないため、注意が必要です。
「失業保険の不受給」の解説

再雇用の約束が果たされる保証はない
業績悪化が進行して倒産に至る場合、「再雇用する」という約束は果たせません。
不況時には、多くの企業で集団的なリストラが行われる傾向にありますが、たとえ業績が悪化していても、整理解雇には厳しい要件が課されます。整理解雇の4要件(①人員削減の必要性、②解雇回避の努力、③人選の合理性、④解雇手続の妥当性)を満たさないなら、経営が厳しくても、解雇は不当となる可能性があります。当然ながら、そのような状況では、再雇用の約束を持ちかけられたとしても、安易に退職に応じてはなりません。

労働者側から見れば、再雇用の約束が守られる保証はないのですが、「再雇用されない」ことが決定的になるのは、会社が倒産したときです。そのときまで期待して待っていては手遅れになってしまいます。その時点ではもはや法人そのものが消滅していて、責任追及も不可能だからです。
「整理解雇が違法になる基準」「会社が倒産したら解雇される?」の解説


再雇用を条件に辞めさせられそうな時の対処法

最後に、「いずれ再雇用するから」と言われ、辞めさせられそうな時の対処法について解説します。ここまで解説した「会社の意図」を知れば、拒否するのが基本であると理解できるでしょう。
納得できない退職は拒否する
退職を決めるのは労働者の自由であり、会社が行えるのは退職勧奨、つまり「お勧め」にとどまり、労働者に判断の余地がなく、退職を強要する行為は違法となります。会社による退職の強要は、実質的には解雇と同義です。解雇は、解雇権濫用法理によって「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要とされ、不当解雇として無効となる可能性があります。

解雇の規制を、違法にくぐり抜ける会社の行為に、素直に従ってはいけません。責任感の強い人ほど、会社のためを思って身を引きがちであり、会社もそこを利用していることがあります。情を感じたり、その場の雰囲気に流されたりして、退職に応じてしまいそうなときは、「家族への相談」などと口実を付け、一度持ち帰りましょう。一人で戦う覚悟が付かないときは、早い段階で弁護士に相談してください。
「退職合意書を強要されたら違法」の解説

退職以外の方法を提案する
仮に、会社の業績が苦しく、退職を検討せざるを得ない場合でも、まずは退職以外の方法を提案しましょう。倒産してしまえば最終的に解雇となりますが、業績回復の兆しがあるなら、一時的に休業する方法も有効です。
休業が「使用者の責めに帰すべき事由」によるなら、給与請求権を失いません(民法536条2項)。また、会社の都合で休ませた場合は休業手当(平均賃金の6割)が支給されます(労働基準法26条)。就労の意思を示し続けなければ給料や休業手当を受け取ることができないので、軽率に退職に応じてはいけません。雇用調整助成金の受給など、企業側もまた、経営再建に努めるべきです。

「休業手当の計算と請求方法」の解説

再雇用の約束は書面で合意する
雇用の維持が困難な場合、一時的に退職し、再雇用するという約束を提案されることがあります。立て直せると期待しての提案ですが、再雇用の約束が守られる保証はありません。それでもなお、再雇用の約束を前提に退職を決めるなら、口頭の約束ではなく、書面で合意して証拠に残しておくことが重要です。再雇用に関する合意書には、次の点を明記しておきましょう。
- 努力義務ではなく、確実に再雇用する旨を明記する。
- 再雇用の条件を、具体的な数値で明確化する。
- 再雇用の時期を、具体的な年月日で特定する。
- 再雇用後も、退職時と同じ労働条件が保証されることを約束する。
とはいえ、再雇用の条件が労働者によほど有利でもない限り、安易に自主退職を選ぶべきではありません。再雇用後も含めた退職の条件が、本当に労働者の利益となるかどうか、慎重に見極めるべきであり、迷うときは、弁護士に相談して判断を仰ぐのがよいでしょう。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

【まとめ】同じ会社に復帰した場合の失業保険

今回は、同じ会社に再雇用された場合の失業保険について解説しました。
業績が悪化している会社では、自主退職を促すために、将来の再雇用を約束されることがあります。しかし、一旦会社を辞めた場合、将来必ず再雇用されるという保証はありません。労働者にとって、失業保険の面で不利益が大きいため、立ち止まってよく確認すべきです。
会社からの働きかけによって同じ会社に再雇用されるケースは、「不当解雇」や「経営悪化」のリスクを労働者に転嫁される危険があります。労働者にとって生活のかかった非常事態において、会社の状況に配慮する必要はなく、退職の同意をする前に不利益がないかを確認しましょう。
失業保険について、将来どのような場合に受け取ることができるかを検討するには、労働問題に精通した弁護士に相談するのが賢明です。
- 労働者に退職を促すための再雇用の約束は、将来破られるおそれがある
- 業績や経営状況の悪化により倒産した場合、再雇用されることはできない
- 同じ会社への再就職や復帰の際は、失業保険の受給に支障がないかを確認する
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