懲戒解雇は、非常に重い処分です。解雇理由に争いがあっても「問題社員」のレッテルを貼られ、懲戒解雇されたと転職先に知られれば、再就職で不利になる危険があります。
懲戒解雇は、横領や不祥事など、度を越した問題行為のみに下される重いペナルティです。そのため、懲戒解雇されると会社を辞めざるを得ないだけでなく、将来のキャリアにも傷が付きます。一方、少々の勤怠不良や能力不足では懲戒解雇にはなりません。もし、軽度の理由で懲戒解雇にされてしまったなら、不当解雇の可能性が高いです。
懲戒解雇されたと転職時にバレれば再就職は絶望的なので、なんとしてもバレないための対策を打たなければなりません。懲戒解雇だと退職金が支給されないこともあり、早く再就職したいでしょう。どのようなタイミングで前職の懲戒解雇がバレるかを理解し、適切に対処してください。
今回は、「懲戒解雇が転職先にバレるか」という労働者の不安について解説します。
- 過去の懲戒解雇が、履歴書、離職票、採用面接、前職照会、リファレンスチェックでバレることを知り、バレないための対策を講じる
- 懲戒解雇がバレてもダメージが少なくなるよう、伝え方に注意する
- 過去の懲戒解雇がバレて再度解雇されたら、不当解雇を争えるか検討する
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懲戒解雇されたら転職する時にバレる?
どのような場合に、過去の懲戒解雇が転職先にバレるか、発覚するケースごとに対策を解説します。
冒頭で解説の通り、懲戒解雇は非常に重い処分です。懲戒解雇をされたのは「重い処分に値するほどの問題行為をしたのだろう」と推測されてしまいます。むしろ「事実でない解雇理由なら、汚名を晴らすために戦うのが普通だ」とも邪推されるでしょう。
懲戒解雇されたのに争わずに放置すると、将来に及ぼす悪影響は甚大です。本解説の通り、懲戒解雇されたと転職先にバレれば再就職は難しいでしょうが、懲戒解雇されたらまずは、不当解雇であるとして争うべきではないかをよく検討してください。
「懲戒解雇を争うときのポイント」の解説
履歴書からバレるケースと対策
懲戒解雇はとても厳しい罰であり、バレれば再就職できないでしょう。そのため、入社を希望する労働者の側から、あえて履歴書に書くことはあり得ません。履歴書に賞罰欄があっても、懲戒解雇は「罰」にあたらないと考えるのが通例です。
履歴書の記載から「懲戒解雇」がバレないようにするには、次の点に注意してください。
- 賞罰欄のない履歴書の書式を用いる
- 退職の理由は特に書かない
- 退職後、家業の手伝いなどに従事する
会社によっては、懲戒解雇があったかどうか、採用応募時のエントリーシートや履歴書に記入を求める例もあります。この場合に嘘をついたり、空欄で出したりすることのリスクは「転職後に懲戒解雇されたとバレたらどうなる?」で解説します。
「履歴書の賞罰欄」の解説
離職票からバレるケースと対策
懲戒解雇されて退職すると、離職票では「重責解雇」の扱いとなります。そのため、懲戒解雇で離職したことは、離職票を見れば一目瞭然になってしまいます。懲戒解雇の事実が離職票からバレてしまわないようにするため、次の点に注意してください。
- 離職理由について前職と交渉する
- 離職理由について争い、ハローワークに異議申立てをする
- 離職票を転職時には見せないようにする
離職票は、失業保険の給付のためのものなので、就職活動や採用面接で必須の資料ではありません。転職先の会社にできるだけ見られないよう配慮することは可能です。
「離職票のもらい方」「自己都合と会社都合の違い」の解説
採用面接でバレるケースと対策
懲戒解雇されてしまったことが採用面接で転職先にバレて、再就職できなくなってしまう例もあります。このようなケースは、残念ながら採用面接での労働者側の対応が悪いことも多いです。そもそも、転職するときに退職理由をうまく伝えるのに失敗しているのです。就職を希望するのに、労働者側からあえて懲戒解雇となったと伝えることはないでしょう。転職先から退職理由を聞かれても、やはり懲戒解雇と正直に伝えるべきではありません。
このような面接対策は、転職先がどれほど根掘り葉掘り聞いてくるかによっても変わります。不安な方は、採用面接の前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
前職への照会でバレるケースと対策
法律相談で「前職の会社に照会されることはありますか?」という質問をよく受けます。前職への照会について法律上の決まったルールはなく、前職に照会をするか、そして、どのようなことを聞くか(どのように回答するか)は、結局は会社次第と言わざるを得ません。
あくまで一般論ですが、会社の属性や規模などにより、次の傾向があります。
- 金融系、警備系など、労働者の身元に慎重な業界ほど、前職へ照会する傾向にある
- 大手企業など、コンプライアンスの厳しい会社ほど、照会されても個人情報をバラさない傾向にある
前職への照会は、適切な方法で行えば必ずしも違法ではありません。そのため、労働者の側でも、照会そのものをストップさせることはできません。
リファレンスチェックでバレるケースと対策
求人応募をしてきた労働者のバックグラウンドをチェックするのが、リファレンスチェックです。前章の前職照会のほか、同僚の評価を聞いたり、ネット上で調査したりなど、手法は様々です。
ただ、採用選考で落とされても、それが面接時の不手際なのか、あなたの能力や適性が評価されなかったのか、それともリファレンスチェックの結果によるものなのかは、知らせてはもらえません。そのため、あまり気にせず、まずはしっかり自分をアピールすることを優先すべきです。
「リファレンスチェックの違法性」の解説
懲戒解雇されて再就職するときの対処法
懲戒解雇されても、いずれは再就職しなければならないでしょう。このとき、転職のための採用選考において、どのように対処すべきかを解説します。
懲戒解雇されたことを隠したら経歴詐称になる?
採用面接で退職理由について聞かれることがあります。直接的に「懲戒解雇されたことがありますか?」と聞かれるケースもあります。履歴書に懲戒解雇の記載がなかったり、退職理由が曖昧だったりすると、突っ込んだ質問を受けがちです。
懲戒解雇された過去について面接で積極的に話すべきでないのは当然ですが、直接的に質問されたら答えざるを得ません。このとき、どうしても入社したい会社なら、嘘の理由を伝えるのも一つの手です。嘘をつくのは褒められた行為ではないものの、そもそも懲戒解雇が不本意なものだったとき、それだけで労働者の人生を狂わせてよいわけではありません。
直接的に聞かれない限り、積極的には言わないことは許されるものの、「聞かれて隠した」という場合には経歴詐称となるリスクがあります。この場合、次章の通り、入社後に発覚すると再度解雇される理由となる危険があるので、リスクを理解して進めてください。
「経歴詐称のリスク」の解説
懲戒解雇されたと転職先に伝えるときの注意点
面接官の質問が巧妙で隠しきれないなど、懲戒解雇されたと転職先に伝えるしかない場面もあります。言い方に注意してポイントを押さえることで、悪いイメージを抱かれない工夫をしましょう。
- 正直に伝える
懲戒解雇が発覚してしまうなら、隠そうとするのは逆効果なこともあります。不本意な形でバレて信頼を失うより、正直に伝えて誠実さをアピールしましょう。 - バレる前に自分から積極的に伝える
バレてから白状するより、「バレる前」に自ら積極的に伝える方が好印象です。 - 懲戒解雇になった理由は簡潔に説明する
解雇理由は簡潔に説明し、詳細は述べないようにしましょう。詳しく伝えすぎるとイメージが悪くなりますし、前職への愚痴や批判ばかりだと「転職後も同じことを繰り返すのではないか」と不安視されてしまいます。 - 懲戒解雇から学んだ教訓と改善点を伝える
自身にも非のある懲戒解雇なら、そこから学んだ教訓や改善点を伝え、当時よりも成長していて同じ過ちは繰り返さないとアピールすべきです。 - 前向きな姿勢を示す
懲戒解雇について説明した後は、未来に向けた努力を伝え、転職への意欲や目標を強調しましょう。ポジティブに話すことで面接官に前向きな印象を与えることができます。 - 面接官の反応は受け入れる
懲戒解雇を伝えた際、面接官の反応がどのようなものでも甘んじて受け入れるべきです。採用面接で議論をしても、転職に良い影響はありません。
最悪なのは、不安や焦りが表情に出てバレてしまうことです。面接官は、質問しながらあなたの態度を観察しています。堂々と答えておけばよいものを、対応が悪かったことで「やましいことがあるのか」「まともに受け答えできない人物だ」といった低評価を受けるおそれもあります。
「圧迫面接の違法性」の解説
不当解雇ならすぐ争うのが基本
以上の伝え方のポイントはいずれも、労働者にも一定の非のある場合のものです。真実でない理由に基づくなど、懲戒解雇が不当な場合は、すぐに争うと共に、転職活動においても前職による誤った解雇であることを端的に伝えましょう。
懲戒解雇が悪いレッテルに繋がるのは周知の事実ですから、採用面接で「面倒だから争わなかった」「家庭の事情であきらめざるを得なかった」などともっともらしい理由を付けても納得してもらえません。「争わなかったのは勝てないからだろう」と思われ、懲戒解雇の再就職に対する不利な影響を無くすことはできません。
「経歴詐称のリスク」「懲戒解雇を弁護士に相談すべき理由」の解説
転職後に懲戒解雇されたとバレたらどうなる?
最後に、転職するときに懲戒解雇を隠して、再就職した後でバレたときにどのような扱いを受けるのかについて解説します。
最悪のケースは、懲戒解雇を隠していたのがバレて、内定取り消しをされたり解雇されてしまったりする場合です。これらのケースでは更に、その内定取り消しや解雇について争うことができるかも検討しましょう。
内定後、入社前にバレたケース
内定後、入社前にバレてしまったとき、内定取り消しされるリスクがあります。このとき、内定といえど雇用契約が既に成立しているものと法律上は扱われます。
そのため、内定取り消しに正当な理由がなければ、違法です。このとき、懲戒解雇されたかどうかが、採用面接の段階で話題にあがっていたかどうか、そして、そのことを転職先の会社がどれほど重視していたかどうかによって、内定取り消しが違法となるかの判断は異なります。
「内定取り消しの違法性」の解説
入社後にバレたら解雇される?
解雇は、厳しく制限されており、正当な理由がなければ、不当解雇となります。そのため、解雇権濫用法理のルールによって、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当でなければ、解雇は違法、無効となります(労働契約法16条)。
懲戒解雇を隠していたことを、経歴詐称として新たな解雇理由とするには、その嘘が「解雇をするに足りるほど重大だ」と言えなければなりません。採用面接時に会社がしっかりと問い質し、それでもなお労働者が嘘をついて懲戒解雇を隠したという事実が少なくとも必要と考えられます。
また、入社後、どれほどの能力や適性を示し、活躍していたかも考慮要素となります。そのため、懲戒解雇を隠して転職するにしても、再就職後の業務はしっかりこなす努力が必要です。
「解雇を撤回させる方法」の解説
まとめ
今回は、懲戒解雇が転職活動でバレるか、再就職で不利になるかについて解説しました。
過去に懲戒解雇されたという事実は、非常に残念なことです。重い処分ですから、将来の転職、再就職のことを考えれば、絶望的な思いを抱くかもしれません。しかし、転職先にバレさえしなければ、解雇は1つの会社内における評価にすぎません。ある会社から厳しい評価を受けたとして、労働者自身の価値が下がることはありません。
あわせて、正当な理由のない懲戒解雇なら、不当解雇として積極的に争うべきです。解雇を撤回させることに成功すれば、転職時にも不利な扱いを受けずに済みます。
- 過去の懲戒解雇が、履歴書、離職票、採用面接、前職照会、リファレンスチェックでバレることを知り、バレないための対策を講じる
- 懲戒解雇がバレてもダメージが少なくなるよう、伝え方に注意する
- 過去の懲戒解雇がバレて再度解雇されたら、不当解雇を争えるか検討する
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