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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。
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1日9時間労働は違法?休憩時間のルールと残業代請求について解説

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

不当解雇、残業代、セクハラ、パワハラ、労災などの労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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1日9時間労働の場合、違法ではないかと疑問に感じることがあるでしょう。

結論として、1日9時間の労働そのものが、直ちに違法なわけではありません。一定のルールを守れば、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせることも可能です。ただし、法定労働時間を超える場合は残業代の支払いが義務であり、休憩時間を付与する必要があります。労働者としても、正しい理解なく働いていると、違法な状態に気付かないおそれがあります。

今回は、1日9時間労働が違法となるかどうかの判断基準と、休憩時間のルールや残業代請求のポイントについて、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 1日9時間労働でも、直ちに違法になるわけではない
  • 1日9時間労働の場合、36協定の締結と残業代の支払いが必要となる
  • 1日9時間労働の場合、少なくとも1時間の休憩が途中で取れなければ違法

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1日9時間労働は違法?

結論として、1日9時間労働というだけで直ちに違法とは断言できません。

労働基準法は、原則として「1日8時間、週40時間」の労働を上限としており、これを「法定労働時間」と呼びます。一方で、法定労働時間を超えて働かせる例外も定められています。自分の働き方が違法かどうかを知るための法律知識を身に付けておきましょう。

労働時間の上限と例外

まず、労働基準法32条は、労働時間の上限を「1日8時間・週40時間」と定めています。

会社が労働時間を自由に設定できると、労働者の健康に配慮のない長時間労働を抑制できないため、法律による上限として「法定労働時間」が定められています。1日9時間労働は、法定労働時間を超えるため、次の例外に該当するかどうかを検討する必要があります。

法定労働時間の例外

  • 36協定を締結した場合
    36協定を締結した場合、法定労働時間を超える残業が許されます。ただし、残業時間の上限として、原則「月45時間・年360時間」を遵守する必要があります(特別条項による例外あり)。また、残業代の支払いが必要となります。
  • 変形労働時間制、裁量労働制、フレックスタイム制などを導入した場合
    これらの制度が適法に運用されていれば、1日8時間を超えて働いても、残業とはならないことがあります(詳細は「例外的に1日9時間労働でも残業にならない場合がある」参照)。

労働時間の規定が適用除外となる場合

以下の場合、労働基準法41条により、労働時間、休憩、休日に関するルールが適用されない結果、法定労働時間を超えて働いても残業代は発生しません。

  • 農林・畜産・養蚕・水産の事業
    農業従事者や漁師などは、天候などの自然的条件に左右されます。なお、現場から分離された事業場で、専ら事務作業に従事する人は該当しません。
  • 管理監督者
    経営者と一体的な立場である場合、労働時間の規制は適用されません。ただし、ふさわしい権限や待遇を欠く場合は「名ばかり管理職」となります。
  • 機密の事務を取り扱う者
    秘書など、経営者や管理監督者と行動を共にする職務の者には、労働時間の規制が適用されません。
  • 監視または断続的労働に従事する労働者
    警備員など、労働の密度が濃くない場合に、労働基準監督署の許可を受けることで労働時間の規制の適用除外を受けることができます。

まずは、就業規則や雇用契約書、労働条件通知書により、勤務先の制度や自身の状況を確認することから始めてください。

1日の残業時間の上限」の解説

1日9時間労働だと残業が生じるのが原則

1日9時間労働の場合、法定労働時間を超えるため、原則として残業が生じます。

残業が生じる場合、労働基準法37条により、通常の賃金を割り増した賃金(割増賃金)の支払いが義務付けられています。1日9時間労働の残業代を考える際は、次の2つの区別を理解してください。

  • 法定時間外労働
    法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間であり、上記の通り、割増賃金の支払いが義務付けられます。
  • 所定時間外労働(法定時間内残業)
    所定労働時間(会社の定めた始業から終業までの時間)を超えるが、法定労働時間を超えない時間であり、割増賃金の支払い義務はありません。

区別のポイントは「法定労働時間」と「所定労働時間」の違いです。法定労働時間は労働基準法の定める時間ですが、所定労働時間は、労使の契約によって決まるもので、具体的には、会社の就業規則や雇用契約書に記載された「労働者が働くことを予定された時間」を指します。

具体例

例えば、1日6時間勤務の場合、所定労働時間は6時間となります。

この場合、1日9時間労働すると、法定時間外労働が1時間あり、所定時間外労働(法定時間内残業)が2時間あることになります。

1時間の法定時間外労働には労働基準法を根拠に割増賃金が生じますが、2時間の所定時間外労働(法定時間内残業)に通常の賃金と割増賃金のいずれが払われるかは、就業規則や労働契約の内容によって決まります。

残業代の計算方法」の解説

1日9時間労働が違法となるケース

次に、1日9時間労働が違法となる場合について解説します。

1日9時間労働が直ちに違法とはいえないものの、法定労働時間を上回る時間働いているため、労務管理が適切に行われていない会社では、違法な状態がしばしば生じます。

所定労働時間を9時間として契約する場合

所定労働時間は、法定労働時間内で定める必要があるため、8時間を超えることはできません。そのため、所定労働時間を9時間とすることは違法です。したがって、そもそも毎日9時間働くことを前提とした労働契約は、労働基準法違反となります。労働基準法は、労働者保護のための強行法規なので、労使間の合意があっても違反することはできません。

36協定を締結していない場合

次に、法定労働時間を超えて働かせるには36協定が必要なので、締結していなければ違法です。

1日9時間労働を適法に行うには、残業を命じる権限が必要となるため、就業規則や雇用契約書に残業命令に関する根拠を定め、労使間で36協定を締結しなければなりません。なお、36協定の有無にかかわらず、1日9時間労働なら少なくとも1時間の残業が生じます。

36協定なしの残業の違法性」の解説

1日9時間労働で1時間以上の休憩が取れない場合

労働基準法34条は、労働者の疲労を蓄積させないよう、休憩時間のルールを定めます。

同条により、労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を、労働の途中で与える義務が使用者(会社)に課されています。

したがって、1日9時間労働の場合、1時間以上の休憩が必須であり、1時間未満の休憩しかない場合は労働基準法違反として違法になります。また、形式的に「休憩」とされても、その時間に業務を指示されたなら、労働基準法上の「労働時間」となり、残業が生じます。

短い休憩時間の違法性」の解説

残業代が未払いである場合

1日9時間労働の場合、残業代が支払われていないのであれば違法となります。

前述の通り、労働基準法では、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いた場合、通常の1.25倍の割増賃金(月60時間を超える残業の場合は1.5倍)を支払う義務があるからです。9時間労働すれば、少なくとも1時間の残業が生じます。

残業代が未払いである場合、「6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となり(労働基準法119条)、労働基準監督署に申告すれば、調査や助言指導、是正勧告が行われる可能性があります。また、弁護士に相談すれば、交渉によって会社に残業代を請求したり、話し合いで解決できない場合は労働審判や訴訟といった法的手続きを利用したりすることが可能です。

  • 2025年6月1日より、懲役刑・禁錮刑は廃止され、拘禁刑に一本化されました。

残業代請求に強い弁護士とは?」の解説

例外的に1日9時間労働でも残業にならない場合がある

次に、例外的に、1日9時間労働が違法とならないケースを解説します。

変形労働時間制、裁量労働制、フレックスタイム制といった特殊な労働時間制が導入されている場合、1日8時間を超えて働かせても残業が生じないことがあります。ただし、制度の要件を遵守し、適法に運用されている必要があります。会社が「残業代を支払わない」と反論してきても鵜呑みにせず、違法な扱いでないかどうかをチェックしましょう。

変形労働時間制の場合

変形労働時間制は、1ヶ月、1年、1週間という種類があります。

各期間を平均して週40時間以内に調整することで、特定の日に8時間を超えて働いても残業として扱わない制度であり、繁閑の差のある企業でよく導入されています。変形労働時間制を適切に運用すれば、1日9時間労働をしても残業とならず、残業代も発生させないことができます。

ただし、変形労働時間制だからといって残業が全くなくなるわけではありません。例えば、1日9時間の所定労働時間を設定した日に10時間労働したり、法定労働時間の総枠を超えて労働したりした場合は、残業となり、残業代の支払いが必要となります。

変形労働時間制の残業代」の解説

裁量労働制の場合

裁量労働制には、専門業務型、企画業務型の2種類があります。

いずれも、特定の業種について、労使協定の締結などを要件として、実労働時間にかかわらず一定の時間分働いたものとみなす制度です。その結果、1日9時間労働でも残業とはなりません。

ただし、裁量労働制の適用される業種は、専門的な裁量を有する職種、事業運営や企画などに携わる職種に限られており、働き方に裁量がなければなりません。裁量労働制とされているのに、実際の働き方に裁量がない場合、違法となる可能性があります。

裁量労働制の違法性」の解説

フレックスタイム制の場合

フレックスタイム制では、あらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が出退勤の時刻を自由に定めることができます。その結果、1〜3ヶ月以内で設定される「清算期間」における週の労働時間が平均して40時間に収まっていれば、1日9時間労働したとしても残業にはなりません。

ただし、清算期間における法定労働時間の総枠を超える場合は残業となり、残業代が生じます。例えば、1ヶ月の清算期間とし、総労働時間が170時間とされる会社では、180時間働いた場合には10時間の残業が発生します。

フレックスタイム制の残業代」の解説

1日9時間労働の残業代の計算と請求の方法

次に、1日9時間労働をした場合の残業代の計算と請求について解説します。

1日9時間労働の残業代は、法定労働時間である8時間を超えた1時間分が対象となります。この1時間に対し、通常の1.25倍(25%割増)を乗じた金額を支払う義務があります。

1日9時間労働の残業代の計算方法

1日9時間労働の残業代は、通常と同じく「残業代の計算方法」で算出します。

まず「1日8時間」という法定労働時間を超えた分を、証拠により正確に把握することがスタートとなります。変形労働時間制などが適用されなければ、9時間のうち8時間を超える1時間が法定時間外労働となり、通常の1.25倍の割増率を乗じた金額を支払う義務があります。

具体的な計算式は、次の通りです。

  • 残業代 = 基礎賃金(基礎単価 ÷ 月平均所定労働時間) × 割増率 × 残業時間

月給制の場合は、月給から除外賃金を控除した額(基礎賃金)を月平均所定労働時間で割って、基礎単価を算出します。月60時間を超える残業には50%、深夜労働(午後10時〜翌午前5時)には25%、法定休日の労働には35%の割増率が適用されます。

残業代計算の具体例

1日9時間労働の残業代の具体例は、次のケースを参考にしてください。

具体例

基礎賃金が30万円、月平均所定労働時間が163.3時間の例で解説します。

基礎単価は1,837円(=30万円÷163.3時間)です。時間外労働の割増率の下限は25%であり、これを下回るのは違法です。残業時間は、1日9時間労働の場合は、法定労働時間である8時間を超えた分である「1時間」が残業となります。

したがって、残業1時間につき支払う残業代は、2,296円(=1,837円×1.25×1時間)です。月の労働日数が20日間で、毎日9時間労働だったと仮定すると、残業時間は20時間であり、1ヶ月の残業代は4万5,920円(2,296円×20時間)となります。

この金額を下回る場合、残業代が未払いとなり、労働基準法違反となります。

1日9時間労働の未払い残業代の請求方法

1日9時間労働で未払い残業代が発生している場合、会社に支払いを求めるべきです。請求は、交渉から労働審判、訴訟へと段階的に進めていくのが適切です。

  • 内容証明郵便で通知書を送付する
    内容証明で通知書を送付し、請求の意思を明確にします。残業代の時効は3年なので、通知書の送付により一時的に時効の完成を猶予させることが重要です。
  • 証拠を収集する
    タイムカードをはじめとした残業時間を証明するための証拠を収集してください。労働者の手元にない証拠は、会社に開示を請求する必要があります。
  • 未払い残業代を計算する
    会社から開示された資料をもとに、「1日9時間労働の残業代の計算方法」を参考に金額を算出します。会社が開示を拒否した場合、パソコンのログやメールの履歴、メモなどをもとに概算して請求することが可能です。
  • 算出した金額をもとに会社と交渉する
    具体的な未払い額が確定したら、計算根拠を会社に示し、交渉を行います。会社から反論がある場合、法律と裁判例に基づいて説明することが重要です。
  • 解決しない場合は労働審判や訴訟に移行する
    交渉が決裂した場合、労働審判や訴訟といった法的手続きを検討します。労働審判は、通常の訴訟よりも短期間で解決を図る制度であり、それでも結果に不服がある場合は、最終手段として訴訟を提起して裁判所の判断を仰ぐことになります。

1日9時間労働で働く場合の注意点

最後に、1日9時間労働で働く労働者が注意すべきポイントを解説します。

労働時間が長くなるほど、休憩時間の重要性が増します。適切に取得できなければ、休養が取れず、疲労が蓄積してしまうため、以下の点にくれぐれも注意してください。

休憩時間は自由利用が保障される

休憩時間は、労働から完全に解放され、自由に利用できることが保障されます。

これを「休憩時間の自由利用の原則」と呼び、単に作業が止まっているというだけでなく、心身ともにリフレッシュできる状態でなければなりません。休憩中でも電話や来客への対応を命じられている場合、法的には「労働時間」とされ、残業代の支払いが必要となります。

休憩時間を取れなかった場合の対応」の解説

長すぎる休憩時間は不適切である

労働基準法における休憩時間の定めは、最低限の基準とされています。

そのため、1日9時間労働の場合、少なくとも1時間の休憩が必要ですが、上限については定めがないため、会社の判断で1時間半や2時間といった長めの休憩を設定することも可能です。ただし、休憩時間が長くなるほど、職場での拘束時間が延びてしまう点には注意が必要です。一日を通じた拘束時間が長引くと、プライベートが圧迫される結果、疲労が蓄積しやすくなってしまいます。

会社は、労働者の安全と健康に配慮する義務(安全配慮義務)を負うため、法律の要件を満たす休憩があっても、拘束時間が長すぎる場合は違法となるおそれがあります。

長時間労働の原因と対策」の解説

労働者が希望しても休憩を取らずに退勤することはできない

休憩はいらないので、その分だけ早く退勤したいと考える方もいるかもしれません。

しかし、休憩時間の付与は労働者の健康を守るために労働基準法に定められた使用者(会社)の義務であり、労働者が休憩を拒否することは認められません。会社は労働者が安全に働ける環境を整える責任を負っており、労働者が希望しても休憩を与えないことは違法です。

また、休憩は、労働時間の途中で与える必要があるため、1日9時間労働させた後で休憩を与えるといった対応も不適切です。

休憩はいらないから早く帰りたい」の解説

【まとめ】1日9時間労働の違法性

弁護士法人浅野総合法律事務所
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今回は、1日9時間労働の違法性と、労働者側の対処法について解説しました。

1日9時間労働は、それだけで直ちに違法となるわけではありませんが、休憩時間が1時間以上取得できなかったり、残業代が未払いだったりすれば違法となります。労働基準法によって、6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を取得させる必要があり、また、実労働時間が8時間を超える場合は、原則として1時間の残業が生じるからです。

1日9時間労働したのに、これらの要件を満たさない場合、会社に対して残業代を請求する必要があります。さらに、十分な休憩が取れずにつらい思いをしているときは、安全配慮義務違反を理由とする慰謝料を請求することも検討してください。

まずは、自身の労働時間や休憩の実態を正確に把握し、必要な対応をするためにも、労働問題に精通した弁護士に早めに相談してください。

この解説のポイント
  • 1日9時間労働でも、直ちに違法になるわけではない
  • 1日9時間労働の場合、36協定の締結と残業代の支払いが必要となる
  • 1日9時間労働の場合、少なくとも1時間の休憩が途中で取れなければ違法

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