突然ポジションクローズを告げられると、部署がなくなることを理由に不当な異動を打診されたり、退職を勧奨されたり、最悪の場合は解雇される危険もあります。
ポジションクローズとは、組織再編や経営方針の変更などで、特定のポジションや部署そのものが廃止されることです。外資系企業やジョブ型雇用の企業でよく起こりますが、実際に通告を受けた労働者は強い不安を感じるでしょう。
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最も深刻なのは、退職を余儀なくされる場面の対処法です。
ポジションクローズは会社の経営判断の結果であり、組織再編や合理化が必要だとしても、そのしわ寄せを労働者が負担させられるのは不当です。企業は、労働者の不利益を最小限に抑え、不当な扱いとならないよう配慮しなければなりません。
今回は、ポジションクローズの意味と対処法について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- ポジションクローズは、不当な異動や退職勧奨につながりやすい
- ポジションクローズを告げられたら、納得のいく条件を要求することが重要
- 不適切な対応を受けた場合、安易な合意や署名は避け、不当解雇は争う
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ポジションクローズとは

はじめに、ポジションクローズの意味や目的について解説します。
ポジションクローズの意味
ポジションクローズとは、組織再編や経営方針の変更などで、特定のポジションや部署そのものが廃止されることです。主に外資系企業やジョブ型雇用の企業で使われる考え方で、英語では「Position closure」や「Position elimination」などと表記されます。
ポジションクローズは部署や職務、役割の廃止を意味し、本来は「退職」に直結するわけではないため、一方的に会社を追い出す「解雇」や「リストラ」とは区別されます。
とはいえ、そのポジションで働く労働者は、部署の廃止によって社内での役割が消滅するため、異動や配置転換、退職勧奨や解雇といった不利益を受け、トラブルに発展するケースがよくあります。職務を限定して採用した「ジョブ型」の企業では、異動や配置転換は原則として行わず、ポジションが消滅すると退職を勧奨され、会社に居場所がなくなる傾向があります。
ポジションクローズはあくまで経営判断であり、労働者側に原因や責任はありません。そのため、能力や成果を十分に発揮できていたとしても対象となることがあります。
ポジションクローズの具体例
ポジションクローズは、主に外資系企業やジョブ型雇用の企業でよく起こります。その目的によって、次のような具体例があります。
- 特定の部署の業務上の必要性がなくなった(例:業務委託への切替)。
- 外資系でグローバルな組織変更が起こった(例:事業縮小や撤退)。
- 合理化のために役職が減少した(例:マネジメントの一本化)。
- パイプラインの見直しが行われた(例:顧客ニーズの変化)。
- 顧客変更により事業所が閉鎖された(例:他支店への統合)。
外資系企業では、本国の方針が日本法人に一方的に通達され、ポジションクローズが短期間で決まり、説明も十分になされないことがよくあります。
悪質なケースでは、会社の方針を理由としながら、実際には特定の社員を狙い撃ちにし、辞めさせるためにポジションクローズを理由付けとする違法な例もあります。
ポジションクローズの目的
ポジションクローズは、経営の合理化や、組織の適正化を目的に行われます。
同じ目的の達成のために、事業所の廃止や大規模なリストラが断行されることもありますが、ポジションクローズは、より強度の手段を講じる必要性まではないものの、特定のポジションが不要となるなど、コストカットを進めるニーズのある場面で活用されます。
ポジションクローズで廃止された部署は、そもそも必要性がない場合のほか、その業務を社内で担当するのを廃止し、アウトソースするケースもあります。AIやIT技術の革新による「省人化」は今後も進む傾向にあり、ポジションクローズの起こりやすい社会環境となっています。
「事業所の閉鎖による解雇」の解説

ポジションクローズによる労働者の不利益は許される?

ポジションが廃止されることで、そこで働く労働者に不利益が生じます。最たる例が、ポジションクローズにより退職を勧奨されるケースですが、他にも様々な扱いがあります。労働者に責任のないポジションクローズによるデメリットを甘受すべきではありません。
下記の具体的なケースを踏まえ、退職する場合は「ポジションクローズで退職しても退職金はもらえる?」、会社と争う場合は「不適切なポジションクローズへの対処法」も参考にしてください。
退職勧奨されるケース
退職勧奨とは、会社が労働者に、自主的な退職を促すことです。
ポジションクローズの場面では、「ポジションがなくなる予定なので、ふさわしい仕事が社内に存在しない。退職を検討してほしい」と誘導されるケースが典型例です。
退職勧奨は、あくまで自主的な退職を促すに過ぎず、最終判断は労働者の自由です。しかし、表向きは任意でも、「担当させる仕事がない」などと不安を煽ったり、退職パッケージを示したりして圧力をかけるケースも多いのが実情です。中には、ポジションクローズを理由に執拗に退職を迫ったり、仕事から隔離したり、人格攻撃を行ったり、あまりに直近の期限を設定して追い込んだりといった悪質な例も見られます。
ポジションがなくなると言われ、焦って退職に応じる人もいますが、拒否しても続く強要は、違法なパワハラとなる可能性があります。退職勧奨を断ると、理不尽な条件での異動や降格、PIPの対象とするといった不利な扱いを受けることがあるため、弁護士に相談して慎重に対応することをおすすめします。
「退職勧奨されたときの対応」の解説

降格や異動、配置転換を受けるケース
ポジションクローズを理由に、異動や降格、配置転換を命じられる例もあります。
- 「人員不足の部署に異動してほしい」
- 「社内公募のあるポジションを探し、面接を受けてほしい」
- 「関連会社に出向してほしい」
ポジションがなくなっても労働契約は終了しないので、社内で役割を与えるのは会社の責任です。しかし、希望の職務に就けるとは限らず、下位のポジションしか提示されないこともあります。
不利益の大きいケースでは、職位や給与の引き下げ、権限の剥奪を伴うことがあります。さらに悪質だと、「ポジションは社内で自ら見つけるように」と命じられ、事実上他に仕事がないことを通達されて退職するよう仕向けられたりするケースもあります。
しかし、業務上の必要性がある異動や配置転換でも、不当な動機・目的があったり、労働者に著しい不利益を与えたりする場合には違法となります。
「違法な異動命令を拒否する方法」の解説

解雇されるケース
ポジションクローズに伴う退職勧奨に応じないと、解雇される例もあります。
ポジションクローズは能力不足や勤怠不良などと異なり、労働者に責任はありません。そのため、これを理由とする解雇は会社の都合であり、いわゆる「整理解雇」に近い性質を持ちます。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、不当解雇として違法、無効となります(労働契約法16条)。したがって、単に「ポジションクローズがあった」という理由で解雇することは認められません。少なくとも、職種を限定した労働契約を締結していて、解雇を回避する努力を十分に行ったが、他の部署では就労できない理由があるといった事情がなければ、不当解雇である可能性は高いです。
「不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説

ポジションクローズで退職しても退職金はもらえる?

ポジションクローズとなり、これ以上その会社で働くことが現実的に難しいと感じるとき、退職を検討する人が最も悩むのが退職金に関する問題ではないでしょうか。
以下では、ポジションクローズと退職金の関係について解説します。
ポジションクローズと退職金の考え方
一般に、退職金が受け取れるかどうかは、退職金制度の有無によって決まります。
就業規則や退職金規程で、自分が制度の対象かを確認してください。外資系の場合、個別の契約で退職金を約束する人も少なくありません。ポジションクローズによる合理化は会社側の事情なので、「会社都合退職」と評価され、退職金について有利な扱いを受けられる可能性が高いです。
自分の希望していたポジションがなくなったり、役割を大きく変更されたりしてまで会社に残りたくない場合、交渉し、少しでも有利な条件で辞めるのがよいでしょう。
退職金やパッケージの交渉はできるか
外資系企業では、よく退職パッケージの交渉が行われます。
ポジションクローズに限りませんが、会社から退職を勧奨される際に一定の有利な扱い(退職パッケージ)を提案され、労使の交渉が行われることがあります。退職金の上乗せに加え、ガーデンリーブ、未消化の有給休暇の買い取りなどが含まれるのが通常です。
ポジションクローズが実行される場合、一定の予算が組まれ、パッケージ交渉の余地が生まれやすい傾向があります。したがって、ポジションクローズの対象となって辞めざるを得ない立場に追い込まれた場合、納得できる金額や条件を引き出して退職すべきです。
一方で、ポジションクローズを速やかに進める必要がある場面では、期限付きでサインを急がせたり、退職後の競業避止義務などの不利な条項を合意書に盛り込んだりといったケースもあります。不安や疑問があるなら安易に署名に応じてはいけません。相場に見合わない金額で妥協してしまうリスクを軽減し、有利に交渉を進めるため、弁護士に相談するのがおすすめです。
「外資系企業の退職金の相場」の解説

ポジションクローズは違法?

次に、ポジションクローズが違法と判断されるケースについて解説します。
ポジションクローズそのものが直ちに違法となるわけではないものの、告知した後の会社の対応によっては、法令違反に当たるケースもあります。
ポジションクローズ自体は違法ではない
まず、ポジションクローズ自体は違法ではありません。「ポジションクローズとは」で解説した通り、部署や職務をなくすこと自体に法令違反はないからです。ポジションクローズは経営判断の範囲内であって、企業の裁量で進めることが可能です。
ただし、以下で解説するように、ポジションクローズ後の対応には、違法性の強い扱いもあるため、労働者としては注意しなければなりません。
ポジションクローズが違法と判断されるケース
ポジションクローズが適法なのは、労働契約の終了には直結しないことが前提です。
これに対し、ポジションクローズを理由として退職を強要したり、パワハラを伴ったり、実質的には解雇に等しい状況に追い込んだりすれば、違法となります。例えば、ポジションクローズ後の対応で、違法と判断される可能性が高いのは次のような事案です。
- 退職勧奨を拒否したら、違法な扱いを受けた場合
不当な降格や異動、配置転換、必要性のないPIPなどは、ポジションクローズを理由としても許されない違法な扱いです。 - 実質的には整理解雇だが、その要件を満たさない場合
整理解雇の4要件(人員削減の必要性、解雇回避の努力、人選の合理性、手続きの相当性)を満たさないのに、ポジションクローズを理由に解雇するのは違法です。 - 報復的なポジションクローズの場合
部署や役割をなくすことよりも、そこで働く人を辞めさせることを目的とするのは不当であり、違法なポジションクローズとなります。同様の職務が残っているのに特定の人だけを選別してポジションクローズを伝えるのも違法の可能性が高いです。 - 虚偽の説明を行った場合
ポジションクローズをきっかけに辞めさせようとする場合、その過程で労働者に虚偽の説明をされることがあります。
特に、会社の都合で労働者を辞めさせる「整理解雇」は厳しく制限されており、他部署への異動や、人件費を削減する他の方策を検討せず、「ポジションクローズだから」と伝えて安易に辞めさせるケースは、不当解雇と判断される可能性が極めて高いです。
「退職強要の対処法」の解説

ポジションクローズの違法性について判断した裁判例
実際に、ポジションクローズについて判断した裁判例を紹介します。
東京地裁令和3年9月29日判決は、医薬品販売会社における「マーケティングマネージャー」のポジションクローズの事案です。会社側は、ポジションをクローズするに際して次の内容を告げ、退職条件を提示しました。
- 現状、他のマーケティング部署には空きがないこと
- 品質管理部門には空きポジションがあるものの業務内容が変更されること
- 品質管理部門への異動を希望しないなら退職の選択肢もあること
交渉の結果、「セールス・オペレーション・マネージャー」に配置転換され、裁判で争われました。本裁判例は結論として、異動命令を有効と判断し、労働者の請求を認めませんでした。裁判所は、以下の点を考慮し、異動命令には業務上の必要性があると判断しました。
- 戦略の変更に伴い、マーケティング本部を再編成するとともに、業務量を考慮すると、マネージャーポジションを常設する必要はないとする判断には業務上の必要性があること
- ポジションクローズは、日本支部だけではなく、アジアパシフィック部門や米国本社とも議論の上での判断であること
- マーケティング本部の他のポジションは、業務の性質上、医療従事者のマネジメントの知識や経験を有することが必須であったが、当該労働者はそのようなスキルを有していないこと
労働者は、社内告発を理由に職場から排除する不当な動機があったと主張したものの、証拠不十分で認められませんでした。また、異動に伴う給料面での変更がなく、不利益も著しいとはいえないと判断されています。
不適切なポジションクローズへの対処法

最後に、不適切なポジションクローズへの対処法について解説します。
違法なポジションクローズの被害に遭ったら、泣き寝入りせず争うべきです。外資系企業は特に、日本の労働法に精通しておらず、違法な扱いがまかり通っているケースもあります。
退職合意書や覚書にすぐサインしない
ポジションがクローズすると告げられ、焦って退職してしまう人もいます。
しかし、一度退職に合意すると、後から覆すのは困難です。希望しない退職に応じる必要はなく、条件面に納得できないならサインは拒否すべきです。パッケージや上乗せ退職金の金額、退職後の競業避止義務といった点は特に争いになりやすく、積極的に交渉しましょう。
会社の圧力に負けず、その場で判断を促されても「検討します」といって持ち帰るべきです。期限を付けて焦らせる例もありますが、「辞めさせたい」と希望している会社は、期限延長の交渉にも応じる可能性が高いです。
万が一争いになる場合に備え、パッケージ交渉も、口頭だけで終わらせるのではなく、メールなどで記録化しながら進めるのがおすすめです。
「退職合意書の強要」の解説

ポジション変更や退職勧奨を拒否する選択肢も検討する
会社から「これしか選択肢がない」と言われても信じないでください。
ポジション変更や退職を打診されても、納得いかない場合には拒否する選択肢もあります。ただし、拒否を検討する際は、自身の契約において職務が限定されているか、会社の提案が不当かどうかといった点を慎重に見極める必要があります。
ポジションクローズに伴う交渉は感情的になりやすい場面ですが、条件を明確化したり、代替案を提示したりしながら合意を目指す姿勢が大切です。例えば、労働者側としても同等のポジションを見つけたり、条件調整を行ったりといった譲歩が考えられます。
不当解雇として争う
ポジションクローズをきっかけに解雇されたら、不当解雇として争いましょう。
ポジションクローズを理由とした解雇を争う際は、証拠の集め方に工夫を要します。特に役立つのは、次のような資料です。
- 雇用契約書・労働契約書(特に、職務を限定して雇用されているか)
- ポジションクローズやパッケージ交渉の経緯メモ
- 会社とのやり取りのメール
- 会社からのパッケージ条件の提案書
不当解雇として争う場合、まずは撤回を求めて交渉し、解決しない場合には労働審判や訴訟などの裁判手続に進むのが最善です。

「解雇を撤回させる方法」「解雇の解決金の相場」の解説


退職して転職する
ポジションクローズが事実であるなら、退職して転職するのも一つの選択肢です。
社外でも活躍できる十分な能力と経験がある人にとっては、ふさわしいポジションを用意できない企業に居続けるよりも、他に活躍の場所を探した方がメリットが大きいでしょう。異動や配置転換を打診されたときは特に、「応じて残るか、退職するか」の選択を迫られます。
なお、「ポジションクローズで退職しても退職金はもらえる?」の通り、ポジションクローズによる退職は労働者の責任ではないので、有利な条件を勝ち取るために交渉してください。

弁護士に相談する
不適切なポジションクローズだと感じたら、弁護士に相談してください。
弁護士は、ポジションクローズ後の不当な扱い(異動や配置転換、解雇など)を争うサポートも可能ですが、パッケージ交渉も代理で行うことができます。労働問題に精通した弁護士は、法律知識を有するだけでなく、交渉力も身に付けているからです。弁護士に依頼すれば、「不当な扱いは断固として戦う」という姿勢を示し、交渉を優位に進められます。
したがって、弁護士に相談するタイミングは、解雇などの重大な不利益を受けるまで待つのではなく、ポジションクローズを告げられたり、提案を受けたりした時点で行うのが最適です。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

【まとめ】ポジションクローズで損しないために

今回は、ポジションクローズが労働者に与える影響と、通告された際の対処法を解説しました。
ポジションクローズは、会社の経営判断として行われ、組織の合理化や事業戦略の見直しを目的としています。会社側に必要性があるとしても、労働者側としては、ポジションクローズを理由とした不当な異動、退職勧奨、解雇といった不利益を一方的に受け入れる必要がありません。
ポジションクローズの結果、退職に応じるとしても、条件交渉の余地はあります。外資系企業やジョブ型雇用の企業では、パッケージとして一定の退職金や補償を想定しているケースも少なくありません。提示をそのまま受け入れるのではなく、納得できる内容となるよう交渉しましょう。
「ポジションクローズである」と突然告げられると、不安や焦りから冷静な判断ができない人も多いものです。損のない決断をするため、ぜひ弁護士に相談してください。
- ポジションクローズは、不当な異動や退職勧奨につながりやすい
- ポジションクローズを告げられたら、納得のいく条件を要求することが重要
- 不適切な対応を受けた場合、安易な合意や署名は避け、不当解雇は争う
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