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障害者でも解雇は違法!障害者雇用のトラブル事例と、差別の解決策

働き方改革により、多様な働き方が広まり、さまざまな労働力に光が当たりました。
バリアフリー化は進み、障害者が活躍しやすい環境の整った社会が目指されています。
一方、ストレス社会となり、残念ながら、精神障害を負う労働者も増えています。

平成28年に障害者差別解消法(正式名称「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)が施行され、障害があることを理由に事業者がサービスや施設利用を拒むのは厳しく規制されるようになりました。
労働問題においても、障害者差別が許されず、社会課題なのは当然です。

しかし、障害者雇用に配慮のない会社もあり、トラブルとなる事例は少なくありません。
障害者なのを理由にした差別の問題は、職場でもよく起こっています。

今回は、労働分野における障害者雇用のトラブルと、差別の解消法を、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 障害者雇用でも、通常の労働者(健常者)と同じく、労働トラブルが起こりうる
  • 障害者でも解雇は違法であり、特に、採用時に伝えた障害を理由にクビにするのは許されない
  • 障害者が、解雇をはじめ差別を受けたとき、裁判に訴える方法が有効

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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障害者雇用のよくあるトラブル事例

労働分野における障害者差別とは、会社が、労働条件や職場での処遇について、「障害者であること」を理由に、他の労働者(健常者)より不利な扱いをすることです。
全社的な差別なこともあれば、一部の社員がパワハラ、いじめとして差別するケースもあります。

障害者を雇うことを「障害者雇用」といいます。
障害者雇用は、法定雇用率を満たさないと納付金の支払いを要するなど、特別なルールで守られています。
また、職場では、能力評価が重視されるのは当然ですが、これによっても差別は正当化されません。

障害者を差別するのは許されないのが当然。
労働の場でも、障害者差別は問題視されます。

障害者に配慮し、他の社員とは、業務内容や労働条件の面で区別があってしかるべき。
区別の結果として扱いが異なることがあっても、不当な差別は、違法です。

障害者雇用でよくあるトラブル事例は、次のケースがあります。

  • 「障害者であること」を理由に募集の対象としない
  • 障害者にだけ、特別な採用基準を設ける
  • 「障害者であること」を理由に仕事を与えない
  • 身体的な障害を指摘し、馬鹿にする
  • 障害者を能力不足とし、パワハラ的な指導をする
  • 「障害者であること」を理由に、評価を下げる
  • 障害者だけを退職勧奨の対象にする
  • 「障害者であること」を理由にして解雇する
  • 障害者雇用は、契約更新しない

この他にも、差別は、労働のあらゆる場面に及びます。
給料や賞与、残業代の未払い、業務の配置や昇進、降格などの人事で、不当に扱われるおそれがあります。

逆に、障害者を優遇しすぎるあまりに不公平となる、逆差別のケースもあります。
このように、障害者雇用は、多くの問題をはらんでいるのです。

障害者を理由とした就職差別も問題です。

詳しくは、次に解説しています。

障害者でも不当な解雇は許されない

障害者雇用の労働者が、最もよく被害にあいがちな労働問題が、「解雇」です。
これは、通常の労働者も同じで、会社を辞めなければならないという大きな不利益を負います。

障害者だからといって、解雇してよいわけではありません。
むしろ、障害者だと採用時からわかっているわけですから、それにともなう不都合や、障害による配慮を理由として、クビにすることは許されてはいません。

障害者雇用の労働者に対する解雇についても、解雇権濫用法理が適用されます。
つまり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でなければ、不当解雇として無効なのです。

解雇権濫用法理とは
解雇権濫用法理とは

悪質なブラック企業のなかには、障害者雇用率を満たすために障害者の退職を止めようとして、「解雇する」ということを脅しに使ってくるようなケースも目にします。

しかし、このようなブラック企業の障害者に対する行為はいうまでもなく違法です。

病気を理由に、辞めるように仕向けられた時の対応が参考になります。

障害者雇用促進法による差別の禁止

近年政府の推奨した「働き方改革」では、「1億総活躍社会の実現」というキーワードがありました。
多様な労働者の活躍が目指され、障害者雇用の活用も、当然ながら大切になってきます。

少子高齢化の影響により、労働力人口は減少しています。
「障害者である」というだけの理由で不当な差別を受け、労働できないのは不適切です。
不当な扱いを受けた障害のある労働者の方は、障害者を差別から守る「障害者雇用促進法」を理解しましょう。

保護される「障害者」とは

障害者雇用促進法で保護される「障害者」には、さまざまな労働者が含まれます。
視覚障害や聴覚障害といった身体障害者だけでなく、知的障害者、精神障害者なども広く含まれます。

身体障害、知的障害のいずれでも、仕事に支障が出るような重度の場合ほど、保護されるべきです。
法律の定める条件にあてはまれば、障害者手帳の交付を受けていなくても、保護の対象です。

不当な障害者差別の禁止

障害者雇用促進法は、次の条文のとおり、障害者に対する不当な差別を禁止しています。

障害者雇用促進法34条

事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。

障害者雇用促進法35条

事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。

障害者雇用促進法(e-Gov法令検索)

禁止される不当な差別の内容について、ガイドラインに詳しく定められています。

差別禁止指針(厚生労働省)

障害者への合理的な配慮

障害者雇用促進法では、障害者の平等な取り扱いを確保するため、労働時間を調整したり、社内の設備を整えたりといった「合理的な配慮」をするよう会社に求められています。

障害者は、障害の分だけ労働能力に欠けるのが通常。
そのため、他の健常者に比べて配慮が必要となります。
実情にあわせ、他の労働者より有利な扱うなど、差が生まれるのはしかたありません。

「合理的な配慮」がまったくなく、「障害者であること」を理由に不利な扱いをすれば、不当な差別です。
「合理的な配慮」の内容についても、ガイドラインに詳しい定めがあります。

配慮指針(厚生労働省)

労働条件を不利益に変更されたら、対応は次の解説を参考にしてください。

障害者差別を訴える方法

違法な障害者差別をされたとしても、法律に基づいて救済を受けることができます。
労働者としても、ただ泣き寝入りするばかりではいけません。

以下では、違法な障害者差別の被害にあったとき、労働者が利用できる救済方法を解説します。
最終的には、障害者差別だと、裁判で訴える方法が有効です。

指導・勧告を求める

不当な障害者差別を受けた場合には、労働基準監督署、労働局に通報する方法があります。
労働基準監督書、労働局は、各都道府県、地域に設置される行政機関で、法違反の企業を監督してくれます。

通報が受理されれば、会社に対し、差別を止めるよう、指導、勧告を出してもらうことができます。

労働基準監督署への相談は、次の解説を参考にしてください。

弁護士に法律相談する

不当な差別をされた障害者が、差別に対策するなかで、弁護士のサポートを受けられます。
弁護士のサポートを受ければ、差別に一人で立ち向かう必要はなく、協力してもらえます。

労働の場でなされる障害者差別は多岐にわたります。
同時に、複数の差別的な扱いを受けるケースもあります。
このようなとき、障害を持つ労働者が、一人で調査、検討し、会社と戦うのは困難でしょう。

障害者差別の問題を扱う弁護士なら、被害状況を整理し、救済手段についてアドバイスできます。
あわせて、裁判手続きの準備や遂行についても、代理してすることができます。
障害を理由とした被害にあったとき、一人で悩まず、弁護士に相談ください。

労働問題に強い弁護士の選び方は、次の解説をご覧ください。

差別による不利益を特定する

どのように救済すべきかは、実際に受けた不利益の内容によって異なります。
そのため、障害者差別によって、どんな不利益があるのかを検討し、特定しなければなりません。

障害者雇用の労働者に起こりうる不利益には、金銭的なもののほか、精神的なものもあります。

「障害者なのを理由に差別されているのでは」「他の従業員と明らかに扱いが異なる」と不安をお持ちのとき、自分1人では判断に迷うなら、弁護士のアドバイスが有益です。

障害者差別を裁判に訴える

もっとも、行政による指導、勧告は、会社が従わなければ、労働者の救済につながりません。
障害者雇用なのに理由なく解雇するなど、悪質な会社ほど、法律を無視する傾向にあります。
このとき、障害者差別を裁判に訴える方法で解決しなければなりません。

民事裁判を通じて、障害者が受けられる救済は、主に次にものがあります。

  • 給料の支払いを請求する
    障害を理由に、給料や残業代について不当に差別されたら、通常なら受け取れたはずの不足分を払うよう請求できます。
  • 地位確認を請求する
    障害を理由に、解雇をはじめとした不当な処分を受けたら、元の労働条件に戻したり、契約を更新したりするよう請求できます。
  • 損害賠償を請求する
    障害者であるのを理由にした差別的な取り扱いで、精神的苦痛を受けたら、不法行為(民法709条)による慰謝料請求ができます。

いずれも、障害者が差別されたことによる被害の回復を意味します。

請求のしかたは、通常の労働者でも障害者でも同じですが、障害を理由にした不当な扱いだと、その分だけ損害が大きくなってしまい、被害回復がぜひとも必要となります。

労働問題の種類と、その解決方法は、次に解説しています。

障害者を辞めさせてくれない会社も問題あり

最後に、障害者特有の問題として起こる、「障害者の引き留め」の問題を解説します。
つまり、「障害者を辞めさせてくれない」という会社の労働問題。
障害者なのを理由に解雇する問題だけでなく、その逆もまた違法の可能性があるのです。

会社がいかに社員を引き留めても、退職するのは本来、労働者の自由。
労働者には、「退職の自由」があります。
このような保護は、障害者雇用だったとしても同じです。

民法627条1項では、雇用期間の定めのない正社員は、2週間を経過すれば退職できます。

民法627条1項

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法(e-Gov法令検索)

労働者の自由である退職を、しないよう強要する引き留めは、障害者でももちろん違法。

「障害者の引き留め」の裏に、「法定雇用率を満たし、納付金を払いたくない」という悪質な動機があることも。
日本の「障害者雇用率制度」では、自社の従業員に占める障害者の割合を一定水準(法定雇用率)以上にする必要があり、この水準を下回ると、不足割合に応じた納付金を国に収めなければならず、逆に水準を上回れば助成金や報奨金を受け取れます。

障害者雇用率制度により、障害者を雇用すれば得をし、手放せば損することに。

しかし、あくまで会社のメリットに過ぎず、そのために障害者を傷つけてよいわけがありません。

会社を辞めたくても辞められない問題は、次に解説しています。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、労働の場における障害者差別の問題について解説しました。

不当な差別を受けた障害者雇用の方は、救済方法と対処法を知っておいてください。
障害者だからといって解雇をあきらめる必要はありません。
また、逆に、障害者の心の弱みにつけ込んだ不当な差別、引き止めなど、問題のあらわれ方は多様です。

多様な人材の活躍が必要でも、障害を持つ労働者の地位は、まだまだ軽視されているのが現状。
障害者差別の被害に、声をあげられない労働者も少なくありません。
障害者なのを理由に、解雇をはじめ不利益な扱いとするのは違法で、法的な救済を受けるべきです。

この解説のポイント
  • 障害者雇用でも、通常の労働者(健常者)と同じく、労働トラブルが起こりうる
  • 障害者でも解雇は違法であり、特に、採用時に伝えた障害を理由にクビにするのは許されない
  • 障害者が、解雇をはじめ差別を受けたとき、裁判に訴える方法が有効

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