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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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痴漢をしたら解雇される?会社・職場で懲戒解雇になるのかを解説

痴漢行為をしてしまうと、逮捕や勾留により身柄を拘束されるおそれがあります。

逮捕・勾留が続けば、数日から数週間、会社を欠勤せざるを得なくなり、刑事事件として立件された事実が職場に知られる可能性が高まります。

痴漢をはじめ性犯罪の印象は非常に悪く、発覚すれば、「会社の信用を害した」として重度の懲戒処分や解雇となる例も少なくありません。「犯罪行為」や「有罪判決」を懲戒解雇事由とする就業規則も多く、有罪の確定前に解雇される例も見られます。

一方で、懲戒解雇は厳しく制限され、その有効性は争える場合があります。懲戒解雇に相当するほどの重大な事情がなければ、不当解雇として無効となる可能性があるからです。

今回は、痴漢を理由とする懲戒解雇がどのような場合に認められるか、不当解雇として争えるケースや対処法について、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 痴漢行為で逮捕されると、懲戒解雇を検討する会社は多い
  • 冤罪、私生活上の行為で会社への影響が小さい場合は、不当解雇の可能性あり
  • 痴漢による解雇を争う際は弁護士へ相談し、労働審判や訴訟で対応する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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痴漢で懲戒解雇される?基本の考え方

痴漢は犯罪であり、逮捕・勾留され、刑事罰を受けるおそれがあります。

具体的には、行為の内容や程度により、不同意わいせつ罪(刑法176条・6ヶ月以上10年以下の懲役)、または、各都道府県の迷惑防止条例違反に当たります(東京都の条例では、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)。

しかし、罪を犯したとしても直ちに懲戒解雇できるわけではありません。痴漢を理由に会社から処分を受けた場合、その根拠を確認してください。懲戒解雇を含む懲戒処分を行うには、就業規則に次の2点を明記する必要があります。

  • 懲戒処分の対象となる行為(懲戒事由)
  • 事由に該当する場合に選択できる懲戒処分の内容

実務上、就業規則に「犯罪行為により会社の信用を著しく低下させた場合」「有罪判決を受けた場合」といった懲戒事由を定める例は多く、痴漢で逮捕された社員は、この規定に基づいて懲戒解雇とされることがあります。

しかし、懲戒解雇は最も重い処分であり、労使関係における「極刑」ともいわれます。将来のキャリアに深刻な影響を及ぼすため、懲戒解雇に相当するほどの重大な理由があり、弁明の機会などの適正な手続きを踏むことが不可欠です。したがって、痴漢行為があったからといって直ちに懲戒解雇が認められるとは限りません。

懲戒解雇の理由ランキング」の解説

痴漢で懲戒解雇にならないケース

解雇は、解雇権濫用法理により制限されます。具体的には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合は、不当解雇として無効となります(労働契約法16条)。

この原則は、痴漢を理由とする解雇でも例外ではなく、その中でも最も厳しい懲戒解雇の有効性は、極めて限定的に判断されます。

以下では、この考え方を踏まえ、痴漢で懲戒解雇にならないケース(痴漢を理由とした懲戒解雇が無効となるケース)について解説します。

痴漢が冤罪や誤認逮捕の場合

解雇は「客観的に合理的な理由」が必要なので、有効となるには痴漢行為が事実であることが前提です。少なくとも、身柄拘束を受けた事実だけを理由に解雇はできません。「逮捕されたから」というだけで解雇を許せば、冤罪や誤認逮捕でも職を失うこととなってしまいます。

実務上、否認すると身柄拘束が長引く傾向があるため、一律に懲戒解雇を許せば、「痴漢をしていない」と主張するほどに不利益が拡大し、職場復帰が困難になってしまいます。

事実関係に争いがあり、冤罪や誤認逮捕なのに解雇された場合、不当解雇として争える可能性が高く、直ちに弁護士に相談すべきです。

不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説

悪質な痴漢ではない場合

解雇には「社会通念上の相当性」も必要となります。

懲戒解雇は、労働者に与える影響が甚大なので、それに見合う悪質な行為でなければなりません。痴漢行為が軽微であり、初犯で反省の態度が見られる場合などは、懲戒解雇は重すぎて無効と判断される可能性があります。痴漢を理由に懲戒解雇が許されるのは、企業秩序を著しく侵害するほど重大なものである場合に限られます。

例えば、次のケースでは、懲戒解雇が無効となる可能性があります。

  • 極めて軽微な痴漢行為である(例:着衣の上から一度触れた)。
  • 初犯であり、反省して再発防止を固く誓っている。
  • 被害者との示談が成立している。
  • 身柄拘束がなく(または短期間)、業務への支障がない。
  • 企業名が報道されず、会社への影響は小さい。

痴漢事件の重大さは、行為の内容や程度のほか、労働者の役職や立場、企業規模や業種、知名度なども考慮されます。例えば、女性社員が多い職場や、対外的信用が重視される業種(公務員など)では、影響が大きく見られやすい傾向があります。

痴漢による身柄拘束を理由に懲戒解雇されたら、会社にどの程度の不利益が生じたかを具体的に検討する必要があります。たとえ痴漢が事実でも、実害が小さいのに、見せしめ的に行われた懲戒解雇は、違法と判断される可能性もあります。

逮捕されたら解雇されてしまうか」の解説

私生活上の行為とみなされる場合

痴漢は許されませんが、必ずしも業務と直接関係する行為ではありません。

通勤途中でも、私生活上の行為と評価されます。懲戒解雇は、企業秩序を維持するための制裁なので、私生活上の犯罪で直ちに認められるわけではありません。

労働者は、勤務中は社内ルールを守る必要がありますが、私生活は自由です。

裁判例でも、痴漢を理由とした解雇について、処分が重すぎるとして無効と判断されたものがあります(東京メトロ事件:東京地裁平成27年12月25日判決)。

東京地裁平成27年12月25日判決(東京メトロ事件)

鉄道会社の社員が、通勤途中の電車内で痴漢行為を行い、罰金刑の略式命令を受けたことを理由に諭旨解雇とされた事案です。

裁判所は、次の点を総合考慮し、諭旨解雇は重きに失し、権利濫用として無効であると判断しました。

  • 行為の悪質性
    痴漢行為の態様は比較的悪質性の低いものであったこと。
  • 会社への社会的影響
    事件が報道されず、会社の社会的評価や信用に対する悪影響は大きくなかったこと。
  • 労働者の情状
    過去に懲戒処分歴はなく、勤務態度も問題なかったこと。

これらの事情から、裁判所は、痴漢行為自体は非難されるべきとしつつも、諭旨解雇という重大な処分を科すほどの相当性はないと結論づけました。

痴漢で懲戒解雇になりやすいケース

痴漢で懲戒解雇にならないケース」の通り、痴漢をしたからといって直ちに懲戒解雇が有効なわけではないものの、行為の態様や結果が重大だと、企業の秩序や信用を著しく損なうのも事実です。その場合、懲戒解雇が有効と判断されやすくなります。

以下では、特に懲戒解雇のリスクが高いケースを解説します。

業務中の痴漢の場合

勤務時間中に痴漢行為に及んだ場合、懲戒解雇が有効とされる可能性は極めて高いです。

業務の遂行中の痴漢は職務専念義務に反するだけでなく、会社の名誉や信用の低下に直結するおそれのある非常に重大な行為です。例えば、外回り移動中、制服や社章を着用した状態での犯行は、仕事と密接に関連した不祥事と見られ、重い処分が下りやすいです。

常習的な痴漢の場合

過去にも痴漢で注意や指導、懲戒処分を受けていた場合、厳しく評価されます。

再犯の場合や余罪がある場合、常習性があると評価されて刑事処分が重くなる上に、社内でも懲戒解雇となるリスクが高まります。反復して繰り返す人は規範意識を欠いており、更生の可能性が低いと考えられるからです。

裁判例でも、再度の痴漢について、懲戒解雇を有効と判断したものがあります(小田急電鉄事件:東京高裁平成15年12月11日判決)。

東京高裁平成15年12月11日判決(小田急電鉄事件)

鉄道会社の社員が、過去に痴漢で2度の罰金刑を受け、社内でも昇給停止や降格といった懲戒処分を受けたにもかかわらず、約半年後に同様の痴漢で、懲役4か月・執行猶予3年の有罪判決を受けて懲戒解雇された事案です。

裁判所は、次の理由で、懲戒解雇を有効と判断しました。

  • 行為の性質
    痴漢行為は、被害者に大きな精神的苦痛を与え、癒しがたい心の傷をもたらす可能性があり、軽微な犯罪ではないこと。
  • 従業員の立場
    鉄道会社の社員として、電車内における乗客の安全や秩序を守る立場にあり、高い倫理意識が求められること。
  • 常習性の高さ
    わずか半年前に、同種の痴漢行為で刑事罰と社内処分を受けたにもかかわらず、再び同様の犯罪行為を行ったこと。
  • 会社の対応状況
    痴漢撲滅運動に力を入れており、再発防止に向けた明確な姿勢を示していたこと。

これらの事情から、裁判所は、事件が報道されたかどうかにかかわらず、懲戒解雇もやむを得ないと結論づけました。

痴漢で逮捕・勾留された場合

痴漢事件で逮捕・勾留され、長期間の身柄拘束を受けると、その間は出社できず、業務に重大な支障を及ぼします。無断欠勤が続くことは、労働契約上の義務に違反する行為であり、解雇が検討されます。長く休むほど、「痴漢で逮捕された」という事実が社内に広まりやすく、職場の秩序を乱す結果にもつながります。

痴漢で有罪判決が確定した場合

刑事裁判で有罪判決が確定すると、さらに懲戒解雇されやすくなります。

「有罪判決を受けた」「刑罰に処された」といった表現で懲戒解雇事由を定める就業規則は多く、形式的にも該当しやすくなります。実刑判決を受けると刑務所に収監され、労務提供が長期間不能となるため、解雇(または退職)は事実上避けられません。執行猶予付き判決も有罪には変わりなく、その重大性を考慮して、懲戒解雇が有効とされるケースもあります。

痴漢行為の態様が極めて悪質である場合

痴漢行為の態様が非常に悪質な場合、たとえ私生活上の行為でも、懲戒解雇が認められやすくなります。例えば、執拗に身体を触る、下着の中に手を入れるといった行為は、迷惑防止条例違反にとどまらず、不同意わいせつ罪に該当します。

被害者に与える精神的苦痛が大きく、社会的非難も強いため、企業の信用を著しく毀損したと評価され、初犯であっても懲戒解雇となるおそれもあります。

痴漢事件がメディア報道された場合

痴漢事件がテレビ・新聞・ネットニュースなどで報道され、勤務先が特定された場合、会社の社会的評価は大きく低下します。「社員の犯罪行為によって会社が具体的な損害を受けた」という事情が明確になるため、懲戒解雇が認められやすいケースです。

社会的信用が重視される大企業や公務員、教職員などは報道されるリスクが高く、懲戒免職や懲戒解雇といった重い処分につながります。

痴漢による解雇処分の主なパターン

痴漢を理由とする社内処分は、主に懲戒解雇が問題となりますが、それだけではありません。どの種類の処分に該当するかによって、有効性の判断基準も異なります。

以下では、よくある処分のパターンとその特徴を解説します。

懲戒解雇

懲戒解雇は、企業秩序違反に対する制裁として最も重い処分です。

労働者の不利益が極めて大きいため、就業規則上の懲戒解雇事由に該当し、かつ、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が認められる場合にのみ有効とされます。懲戒解雇では、退職金を不支給または減額とするケースも少なくありません。

このような影響の大きさから、懲戒解雇の有効性は、裁判所においても特に厳格に判断される傾向があります。

普通解雇

普通解雇は懲戒処分の一種ではなく、労使の信頼関係が喪失したことを理由とする契約の解約です。痴漢事件でも、逮捕・勾留・収監などで長期間出勤できないこと、企業の信用を低下させたことなどを理由に、普通解雇になることがあります。また、懲戒解雇が無効と判断されるリスクを避けるため、あえて普通解雇を選択する会社もあります。

懲戒解雇ほどではないものの、普通解雇にも客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。なお、解雇の30日前の予告(もしくは不足する日数分の解雇予告手当)が必要となり、退職金についても規程にしたがって支給されるのが通例です。

解雇予告手当の請求方法」の解説

諭旨解雇

諭旨解雇は、本来は懲戒解雇に相当する事案で、本人の反省やこれまでの功績を考慮し、恩情として行う処分です。具体的には、退職を勧告し、労働者が退職届を提出する(拒否する場合は懲戒解雇となる)という流れとなります。懲戒処分の一種ですが、懲戒解雇とは異なり、退職金の一部または全部が支給されることが多いです。

諭旨解雇」の解説

解雇以外の処分

以上の通り、「痴漢で逮捕されたら即座に懲戒解雇」というのは誤りです。事実関係に争いがあり、冤罪や誤認逮捕の可能性もあるケースでは、社内でも安易な処分は許されません。しかし、痴漢行為が認定された場合、「処分なし」で済むとは限らないのも事実です。

解雇のほかに検討されるのは、以下の処分です。

懲戒処分

懲戒解雇は重すぎるにしても、行為の内容や職場への影響に応じ、軽度の懲戒処分を下されることがあります。

例えば、痴漢行為で検討される処分には、次のものがあります。

  • 軽度の懲戒処分にとどまる例
    初犯で、態様も軽微、示談が成立しており、会社への影響もほとんどないといったケースでは、戒告や譴責などの軽度の処分にとどめるのが妥当です。
  • 中程度の懲戒処分が検討される例
    被害者に精神的苦痛を与えたものの、悪質性が極端に高いとはいえず、会社への影響も限定的な場合、減給や出勤停止などが選択されます。
  • 重度の懲戒処分になりうる例
    態様が悪質で、被害者に深刻な被害を与えた場合や、常習性が認められる場合には、諭旨解雇や懲戒解雇といった重度の処分が問題となります。

人事処分

懲戒処分とは別に、人事処分を行う例もあります。

例えば、女性社員の多い部署からの配置転換、他の部署や事業所への異動、人事評価の引き下げといった対応です。懲戒処分が「制裁」であるのに対し、人事処分は、職場環境への配慮や再発防止を目的とした措置として位置づけられます。

痴漢の発覚をきっかけに職場に居づらくなり、自ら退職を選択する人もいます。ただし、退職はあくまで本人の意思によるべきで、無理やり辞めさせられそうになっても、決して同意してはいけません。

退職勧奨の拒否」の解説

痴漢による解雇を弁護士に相談するメリット

痴漢による懲戒解雇は、その有効性を争えるケースが少なくありません。

会社から「痴漢をしたなら解雇で当然」と反論されて交渉が決裂し、労働審判や訴訟に進むケースも多いため、一人で争うのは時間的にも精神的にも負担が大きいでしょう。弁護士に会社との対応を任せることには、次のメリットがあります。

  • 法的に正確な主張・説明ができる
    「悪質な痴漢だから逮捕されたのだ」といった誤解もありますが、刑事手続きには無罪推定の原則があり、有罪判決確定までは無罪として扱われます。冤罪の可能性もある中で直ちに懲戒解雇とするのは問題があります。弁護士が介入することで法的に正確な説明をし、過剰な処分を抑止できます。
  • 守秘義務のもとで安心して相談できる
    弁護士は、弁護士法に基づく厳格な守秘義務を負うので、接見や相談の内容が第三者に漏れることはありません。会社に説明する際も、常に依頼者の利益を最優先とし、「会社に伝えないでほしい」と希望することも可能です。
  • 勤務先との関係悪化をできる限り防げる
    弁護士が関与しても、直ちに労使関係が悪化するとは限りません。むしろ会社側のリスクに配慮した解決策を示せるメリットがあります。企業名公表を回避するなど、会社への影響も考慮して対応することで、信頼関係を維持しながら解決を図れます。

弁護士に会社対応を任せれば、懲戒解雇をはじめとした労働者側のリスクを軽減し、社内処分が確定してから争うよりも、検討前の段階で予防できます。デメリットとして考えられるのは弁護士費用がかかる点ですが、将来の仕事や生活への影響を考えれば、早期の段階でアドバイスを受ける意義は非常に大きいと考えられます。

痴漢で会社に解雇されないためのポイント

痴漢の疑いをかけられたとき、迅速な対応が不可欠となります。

直後の対応を適切に行うことは、刑事手続きにおける処分を軽くするだけでなく、解雇のリスクを下げることにもつながります。

弁護士に対応を任せる

痴漢事件への対応は、時間との勝負であり、専門的な判断を求められます。

初動を誤ると刑事処分が重くなったり、会社に発覚して解雇されるリスクが高まったりするおそれがあるので、弁護士に対応を任せるべきです。逮捕後は、最大72時間の身柄拘束を受けます(警察で最大48時間、検察送致後に最大24時間)。勾留が決定されれば10日間、延長されると最大でさらに10日間、合計で最大23日間、出社できない状態が続きます。

限られた時間の中で早期釈放を目指すため、弁護活動が不可欠です。会社に伝える場合も、説明を弁護士に任せた方が、状況を正確に伝えて過剰反応を抑え、不当解雇を回避しやすいです。

会社に発覚する前の早期釈放を目指す

痴漢事件が会社に知られなければ、当然ながら解雇の問題は生じません。

業務に関連する犯罪でない限り、警察から会社に連絡されることは通常ありませんが、逮捕・勾留が長引くと、不審に思われて発覚しやすくなります。そのため、逮捕直後の弁護活動で勾留を阻止し、早期釈放を目指すことが、会社バレを防ぐためにも重要です。報道をしないよう捜査機関に働きかけることも、勤務先に知られるリスクを下げるのに有効です。

「いつ会社に事実を伝えるか」の見極めも非常に重要で、早期釈放の可能性が高ければ、家族を通じて「体調不良」「急病」などと隠すケースもあります。ただ、短期間に限った対応であり、長期間欠勤せざるを得ない状況となれば、いずれは会社に知られます。

示談交渉で不起訴を目指す

解雇を回避する上で、最も効果的な手段の一つが、被害者との示談です。

痴漢事件で被害者と示談が成立すれば、身柄拘束から釈放されたり、処分が軽減されたりしやすくなります。不起訴処分となれば刑事裁判にならず、前科もつきません。社内でも「犯罪事実が裁判で確定していない」という状態なので、懲戒解雇を行う根拠がなくなることを意味します。

会社にバレずに示談する方法」の解説

痴漢で懲戒解雇されたときの争い方

丁寧に対応しても、痴漢で逮捕されれば、懲戒解雇の危険はゼロにはできません。

懲戒解雇を言い渡されたからといって直ちに受け入れる必要はなく、弁護士に相談すれば、その有効性を争うことができます。前述「痴漢で懲戒解雇にならないケース」で解説した通り、痴漢が私生活上の行為である場合や、会社への影響が限定的な場合、懲戒解雇が無効と判断される可能性も決して低くはありません。

痴漢を理由とする懲戒解雇を争う場合、次の手順で進めてください。

STEP

内容証明で懲戒解雇の撤回を求める

痴漢を理由に懲戒解雇された場合、まずは撤回を要求します。

弁護士は、内容証明を用いて、懲戒解雇が無効であることを法的根拠とともに主張し、会社に対して撤回を強く求めます。交渉で解決できれば裁判手続きに進む必要がなく、時間・費用ともに負担を抑えることができます。

ただ、懲戒解雇という重大な処分を下した会社は、容易には撤回に応じません。一旦解雇を撤回した上で合意退職とする解決策が話し合われることもあります。

解雇を撤回させる方法」の解説

STEP

労働審判で懲戒解雇を争う

話し合いで解決できない場合、裁判所の法的手続きに頼るしかありません。

まずは裁判より簡易な労働審判の制度を利用します。労働審判では、懲戒解雇の無効を主張し、労働者としての地位確認を請求します(地位確認請求)。労働審判は、通常3回以内の期日で進行し、比較的迅速な解決が期待できます。実務上は、復職よりも、解決金の支払いによる金銭解決が選択されるケースが多いのが特徴です。

不当解雇の解決金」の解説

STEP

訴訟で懲戒解雇の無効を争う

労働審判で解決に至らなかった場合、訴訟を行うこととなります。

訴訟は、労働審判と比べて時間も費用もかかり、労働者の負担は小さくありません。しかし、痴漢が冤罪なのに十分な調査もなく懲戒解雇とされたり、私生活上の行為なのに過大な処分を科されたりといった深刻なケースは、訴訟で争う意義が大きいです。

労働者側が復職を強く希望する場合や、懲戒解雇という評価を将来に残したくない場合にも、訴訟による解決が選択される傾向があります。

懲戒解雇を不当解雇だと争う方法」の解説

痴漢による解雇に関するよくある質問

最後に、痴漢による解雇に関するよくある質問に回答しておきます。

痴漢冤罪でも示談金を払えば解雇されずに済む?

痴漢冤罪の場合、安易に示談金を支払うことはおすすめしません。

確かに、示談は有利な情状として考慮され、早期釈放や不起訴といった結果を得やすくなります。しかし、罪を認めて謝罪することを前提とするため、後から「実はやっていない」と主張しても信用されないリスクがあります。

示談が成立しても、必ず釈放や不起訴となる保証はないし、会社との関係では「痴漢行為を認めた」と評価されやすく、示談しても懲戒解雇を避けられるとは限りません。

後悔しないためにも、冤罪であれば毅然とした態度で否認し、弁護士に依頼して無実を証明すべきです。

不起訴でも会社にバレたらクビになる?

不起訴処分でも、会社に発覚すれば処分を受ける可能性は否定できません。

ただし、不起訴処分は、刑事罰は受けなかったことを意味するので、「刑事罰を受けたこと」を要件とする処分は根拠を失います。仮に、形式的に要件に該当しても、不起訴となったケースで懲戒解雇などの重い処分をするのは無効となる可能性があります。

したがって、不起訴となった事実は、解雇を回避するためにも重要な事情なので、会社に対して積極的に主張していくことが重要です。

懲戒解雇されたら退職金はなしになる?

「懲戒解雇されたら、退職金は一切もらえない」というのは誤りです。

懲戒解雇でも、直ちに退職金が全額不支給となるわけではなく、全部または一部の支給を認めた裁判例も存在します。この点は、痴漢を理由とする場合でも同様です。

痴漢で逮捕されたケースは、会社側も感情的になり、退職金を不支給にしようとすることが多いです。しかし、仮に懲戒解雇が有効でも、長年にわたる勤続の功労を考慮し、退職金を請求すべきケースも少なくありません。

そのため、痴漢を理由に解雇された場合、解雇の有効性を争うとともに、退職金についてもあわせて請求を検討すべきです。

懲戒解雇でも退職金がもらえるケース」の解説

【まとめ】痴漢による解雇について

弁護士法人浅野総合法律事務所
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今回は、痴漢を理由とした解雇や懲戒解雇の可否について解説しました。

痴漢をしたことが会社に発覚した場合、たとえ私生活での行為でも、懲戒解雇などの重い処分が検討されることがあります。職場での痴漢ならなおさらです。しかし、懲戒解雇は労働者にとって重大な不利益を伴うため、厳しい制限があり、会社が自由に行えるものではありません。

逮捕されても直ちに犯罪であることが確定するわけではありません。事実関係を争っていたり、痴漢を否認していたりする場合、冤罪の可能性もあります。十分な検討もなく解雇されたなら、不当解雇として争える余地は大いにあります。

痴漢を理由に懲戒解雇をはじめとした厳しい処分を受けた場合、泣き寝入りせず、速やかに労働問題に精通した弁護士に相談することが重要です。

この解説のポイント
  • 痴漢行為で逮捕されると、懲戒解雇を検討する会社は多い
  • 冤罪、私生活上の行為で会社への影響が小さい場合は、不当解雇の可能性あり
  • 痴漢による解雇を争う際は弁護士へ相談し、労働審判や訴訟で対応する

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