解雇

出張時の交通機関を勝手に変更したら「横領」になる?

お問い合わせ

運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所

遠方への出張は、仕事の一環ではあるものの、会社を離れて「羽伸ばし」できる機会と考える人も多いのではないでしょうか。

遠方へ出張するとき、飛行機や新幹線などの交通手段を使用することとなりますが、この出張の際の交通機関について「横領」といわれてしまいかねない重大な問題があります。それが、「出張時の交通機関を勝手に変更したら『横領』になるかどうか?」という問題です。

出張時の移動には、「交通費の横領」問題以外にも、「労働時間に数えられるかどうか(残業代が支払われるか)」、「移動中の労災」といった難しい問題が多くあります。そこで今回は、出張時の交通機関の変更と「横領」の問題について、労働問題に強い弁護士が解説します。

「横領トラブル」の法律知識まとめ

出張時の交通機関の変更が「横領」になるケース

まずは、特に気を付けておかなければならない、出張時の交通機関の変更が「横領」にあたるケースについて、例を挙げて解説します。

なお、「余分にお金をもらうこと」が「業務上横領」に該当することは当然ですが、法律上「お金をもらうこと」自体が横領罪にあたるため、そのお金が「余分」であるかどうかは、必ずしも問題とならない場合があります。

この問題は、会社から「交通費の横領」を疑われるような出張時の交通機関の変更を行ってしまったときに「結局出張には行っているし、結局交通費の総額は変わらないのだから、全く問題はない」という言い訳が通用しないケースがあることを意味しています。

出張時の移動手段は、新幹線、在来性、バス、自家用車、飛行機など、様々な選択肢がある場合もあります。

チェック
横領を理由とする懲戒解雇は有効?懲戒解雇となる着服の金額は?

会社内で業務中に行われた横領、着服に対する懲戒解雇について解説します。横領・着服などの犯罪行為を行ってしまい懲戒解雇にされそうな場合には、早急に労働問題に強い弁護士へご相談ください。

続きを見る

会社から交通機関を指定されている場合

出張時の交通機関を勝手に変更することが「横領」になってしまう可能性の高い1つ目のケースは、「会社から交通機関を指定されている」というケースです。

会社から交通機関が指定されているケースには、個別の出張につき社長や上司の指示がある場合のほか、就業規則や出張規程、旅費規程などの規程類で、「どのような場合に、どのような交通機関を使用しなければならないか」があらかじめ決められている場合を含みます。

特に、「部長以上であればグリーン車を使用しても良い」、「○○km未満の出張ではビジネスクラスを使用してはならない」といったルールのように、出張時に使用できる交通機関のレベルが指定されている場合があるので、注意が必要です。

これらの会社の指揮命令は、「業務命令」であり、「違反すると業務命令違反として、評価の低下、懲戒処分その他の処分を食らう可能性がある」という点も見逃せません。

チケットを現物支給されている場合

出張時の移動手段、交通機関を指定されている例の中でも、特に、「チケットを現物支給されている」というケースでは、個別具体的な指定が会社から下っているものと考えることができます。

そのため、会社から配られたチケットを使わずに払い戻し、より安い手段で移動するケースでは「交通費の横領」にあたります。

チケットの現物を支給することは、現金でその相当額を支給する場合とは全く異なり、「この交通機関を利用するように」という会社からの具体的な業務命令であると解釈できるからです。

より安い交通機関に変更し、差額を領得した場合

会社からの指定に反し、より安い交通機関に変更しながら、虚偽の交通費申請を行って差額を領得する行為は、問題のある「交通費の横領」行為となることが明らかです。

このような悪質性の高い横領行為を行ってしまった場合、懲戒解雇のほか、業務上横領罪による刑事罰に処せられてしまう危険があります。

移動時間に合わせて「出張日当」が支給されるという場合には、より安い交通機関のほうが移動時間が長くかかることが多いため、交通費以外に「出張日当」についても不正受給となってしまう可能性があります。

また、「移動時間に他の業務を指示されていた」などの理由で、移動時間が「労働時間」と評価され残業代が支払われているようなケースでは、移動時間を偽ることもまた、不正な行いとなります。

出張時の交通機関の変更が「横領」にならないケース

次に、出張時に、交通機関を無断で変更しても「横領」にあたらない可能性の高いケースについての説明です。

ただし、ここに紹介する例はあくまでも一般論であって、類似のケースで絶対に「横領」にあたらないことを保証するものではありませんので、慎重な対応が必要です。

チェック
経費を不正に計上したら違法?横領?懲戒解雇されてもしかたない?

営業の現場では、会社の経費を利用して業務を行うことが日常となっています。営業マンの場合、接待交際費、交通費などの名目で、 ...

続きを見る

会社から交通機関を指定されていない場合

会社から出張時の交通機関の指定を受けていない場合には、どのような交通機関を選んでも、また、直前で勝手に変更しても、「業務命令違反」にはあたらず、「交通費の横領」にもあたりません。

特に、出張場所までいく移動は、「重大な荷物を監視しなければならない」とか「移動中の業務を指示されている」といった特別な場合を除いては、原則として「労働時間」にはあたらず、賃金も残業代も発生しません。

そのため、特段交通機関やルート、経路が指定されておらず、決められた時間までに出張場所について業務を開始できればよい、というケースでは、交通機関の決定・変更が横領などの問題行為に問われることもありません。

より高い交通機関に変更し、差額が自腹な場合

上記のように、会社から出張の移動手段を指定されていないケースでも、会社に虚偽の報告をして交通費を不正受給している場合には「交通費の横領」にあたることは疑いありません。

しかし、より高い交通機関に変更し、差額を自腹で支払っているということであれば、特段責められる要素はありません。

通常、会社の一般的な慣行では深夜バスで移動することが多かったとしても、「深夜バスは疲れるから」という理由で、差額を自腹で支払い飛行機で移動したとしても、交通機関を指定されていないのであれば、特段責められる理由はありません。

交通機関を変更する正当な理由がある場合

交通機関を変更することに正当な理由がある場合には、その変更が「横領」その他の問題行為とならないケースがあります。

例えば、交通機関の遅延、運休、事故といった理由で指定された交通機関が利用できなくなってしまった場合がその典型例です。自身の怪我や病気により、そもそも出張自体が継続できない場合もあります。

ただし、交通機関を変更する緊急の必要性があり、やむを得ず事前承諾を得ることができない場合であっても、事後に会社に報告し、「横領」などの疑いをかけられないようにしておいてください。

出張時の交通機関変更のその他の問題点

出張時の交通機関を、会社に無断で変更することには、「交通費の横領」の疑いをかけられてしまうこと以外にもデメリット、リスクが存在します。

そこで、その他の問題点と、その対策について、弁護士が解説します。

労災の補償・安全配慮義務違反

会社が一定のルート、経路を指定しているにもかかわらず、その経路を外れたり交通機関を変更したりした結果、不慮の事故にあって怪我をしてしまったとき、その補償が十分になされないおそれがあります。

会社の業務によって怪我を負ったり、死亡してしまったりした場合には「業務上災害(労災)」として、労災保険による補償を受けることができます。しかし、労働者が勝手に交通機関を変更した場合、「業務条の災害かどうか」が争いになるためです。

同様に、会社は労働者を安全に働かせる義務(安全配慮義務)を負っており、業務中の怪我、事故について損害賠償請求をすることができますが、会社の指示に違反して怪我、事故に遭った場合にまで、この安全配慮義務による補償を受けることはできません。

特に、会社が安全かつ合理的な移動手段を指定し、その費用を支給していたにもかかわらず、労働者があえて危険かつ安い経路に勝手に変更した場合に、労災・安全配慮義務の責任を会社に追及することは困難です。

賃金・残業代

会社に雇用される労働者は、「会社の指揮命令下で働いている時間(労働時間)」について賃金を得ることができます。そして「1日8時間、1週40時間」を超える労働をした場合、割増賃金(残業代)を支払ってもらうことができます。

出張中の移動時間について、「出張に行く移動時間」は原則として労働時間にあたらず、例外的に、出張中も「指揮命令下」にあった場合には労働時間にあたることとされています。これは、常識的な移動手段であれば、基本的に労働者の自由だからです。

これに対し、出張中の移動は労働時間に当たる場合が多いです。

そのため、先ほど解説した中でも「出張時の交通機関を指定されている(チケットをもらっている場合など)」の場合、その時間に、その移動手段で移動する業務を指示されていると考えられるケースでは、労働時間と評価され賃金・残業代を支払ってもらうべき場合もあります。

「横領トラブル」は、弁護士にお任せください!

今回は、出張時の問題について、「横領トラブル」が起こってしまう場面を解説してきました。

出張は、会社を離れて「鬼の居ぬ間に洗濯」を楽しむ、という浮かれ気分の方も多いかもしれません。しかし、「会社の目が届かない」という甘い考えで不正を働くと、その後の処分は懲戒解雇など厳しいものとなるおそれがあります。

出張時の交通機関を勝手に変更してしまい、「交通費の横領」という責任追及を受けかねない方は、ぜひ一度、労働問題に強い弁護士に法律相談してください。

「横領トラブル」の法律知識まとめ

お問い合わせ

運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所
  • この記事を書いた人
  • 最新記事
弁護士浅野英之(弁護士法人浅野総合法律事務所 代表)

弁護士浅野英之(弁護士法人浅野総合法律事務所 代表)

弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区銀座)の代表弁護士(第一東京弁護士会所属)。 不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、近年ニュースでも多く報道される労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

-解雇
-, , , , ,

お問い合わせ

Copyright© 労働問題弁護士ガイド│不当解雇・残業代請求の相談は「弁護士法人浅野総合法律事務所」 , 2020 All Rights Reserved.