不当解雇されたら争うのは当然。「解雇は無効であり、労働者の地位を確認する」という、いわゆる地位確認請求をするケースです。
この戦いに勝てば、解雇は無効となり、復職することができます。しかし、労働者のなかには不当解雇からの復職は、できれば拒否したい人もいます。「不当解雇から復職したくない」「解雇が無効となったら復職して働かなければならないの?」といった相談をよく受けます。
不当解雇された会社で働き続けたくない
解決金をもらって、得して辞めたかった
転職が一般化した昨今、「むしろ解雇された会社で働くより、転職したい」という人も多いです。金銭解決を目指していたなら、「復職したくない」という思いはよく理解できます。このとき、法律上の建前に関わらず、解雇が無効になっても復職する必要は全くありません。
今回は、不当解雇から復職したくないとき、どのように対応したらよいか、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 解雇が無効になれば、法律上、労働者として戻らなければならない
- 解雇され、本音は会社に戻りたくないときでも、「復職の意思」を示し続ける
- 解雇が無効でも、未払い残業代やパワハラなどの問題がある会社には戻らなくてよい
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不当解雇から復職したくない時でも争える
冒頭で解説した通り、不当解雇に納得がいかなくても、復職はしたくないという方が多いでしょう。むしろ、一つの会社にこだわらなくてもよい方ほど、そのような考えが一般的です。
しかし、「どうせ会社には戻らないのだから」といって、解雇トラブルを争うのをあきらめてはなりません。不当解雇から復職したくない時でも、解雇を争うことはできるからです。
そして、このようなケースでは、会社側もまた「どうしても戻ってきてほしくない」と思っています。つまり、この戦いでは、実は、労使の本音は一致しています。解雇を争い、労働審判や訴訟で「不当解雇」だと認めてもらえれば、あなたにどうしても戻ってきてほしくない会社から、解雇の解決金を勝ちとれる可能性があります。これが、「解雇の金銭解決」です。
ただし、解雇の金銭解決は、「解決金をもらう権利がある」わけではないので注意してください。労使の話し合いの末に、落としどころとして解決金をもらって金銭解決できるにすぎません。あまりに要求する解決金が高すぎると、逆効果となってしまう危険があります。
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解雇が無効でも復職拒否できる理由
労働者の多くは、「不当解雇は無効になる」とは理解していても、解雇された会社で働きたいとは思わないものです。このとき「復職の意思」を示しても、実際に復職するかは別問題で、会社に戻らない手もあります。
そこで次に、解雇が無効でも、復職を拒否できる理由を解説します。「本音と建前」を駆使しながら戦う際、労働者側の進め方の参考にしてください。
不当解雇なら心理的に戻れないのは当然
解雇とは、つまり「あなたはこの会社には不要」といわれているのと同じです。「問題社員」のレッテルを貼られたといってもよいでしょう。当然ながら、他の社員にも、あなたが解雇されたことは伝わってしまっています。
たとえ不当解雇だとしても、一度解雇されたら、心理的に戻れないのはもはや当然といえます。不当解雇であり違法ならば、その責任は会社にあります。そのため、心理的に戻れないなら、無理して復帰する必要は全くありません。
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パワハラがあるなら戻らなくてよい
不当解雇の犠牲になった方は、パワハラの被害もあわせて受けているケースも多いです。
会社は、労働者の安全に配慮する義務があり、社内のパワハラは防止しなければなりません。それにもかかわらず、パワハラが横行している会社には、戻りたくないという気持ちは当然。解雇時にパワハラがあり、今後も再発のおそれがあるなら、たとえ解雇が無効でも会社に戻る必要はありません。
残業代が未払いなら戻らなくてよい
労働者は、働くことによって給料をもらっています。そして、決められた時間以上に働けば、残業代も請求できます。不当解雇だと明らかになり、解雇が無効となっても、労働の対価が払われないなら働けません。つまり、給料や残業代が未払いなら、会社に戻らなくてもよいのです。
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「復職の意思」は示さないと解雇トラブルで不利になる
本音としては「解雇から復職したくない」というときも、建前として「復職の意思」を示しておかないと、解雇トラブルで不利になってしまうので注意してください。
不当解雇を争い、労働者側に有利な解決を勝ちとるには、「復職の意思」を示すのは必須です。というのも「復職の意思」がないなら、労働者が解雇を認めたのと同じだとされるおそれがあるからです。このとき、次のような会社の反論が正当化される危険があります。
- 解雇ではなく、合意退職だった
- 労働者が解雇に同意していた
- 労働者にとって損失はなかった
そのため、「不当解雇だ」と主張して争うなら、たとえ本音では戻りたくなくても、「解雇は不当であり復職させるべきだ」と強く主張しなければならないのです。これが、労働審判や訴訟で、「地位確認」を請求する理由です。
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再就職・転職した後でも解雇は争える
解雇トラブルを有利に解決するには「復職の意思」が必要。しかし現実には、解雇から復職しなくても、金銭解決を目指すこともできます。
そのため、再就職、転職した後であっても、解雇を争うことは可能です。再就職、転職していたとしても、「復職の意思」を示すことができるからです(なお、転職後であっても、転職先の会社を退職すれば、「意思」だけでなく、現実に復職することも可能ですから、この点でも解雇を争うことにはまったく支障はありません)。
生きていくためには、どうしてもお金を稼がなければいけません。解雇に納得がいかないからといって、無職無収入のままいつまでもいるわけにもいきません。そのため、解雇後、他に仕事をしたからといって「復職の意思」が否定されるわけではなく、解雇を争い続けることができるのです。不当解雇の無効を主張して争う場合も、安心して再就職、転職先を探してかまいません。
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不当解雇から復職したい時の対応
以上の通り、解雇トラブルを有利に解決するには、「復職するかどうか」について「本音と建前」の使い分けが大切なポイントとなります。
むしろ現在、解雇トラブルの多くは、金銭解決で終わっています。転職が一般化し、終身雇用は崩壊、一つの会社に勤め続けるメリットは低くなりました。労働審判が整備されたことにより、簡易かつ迅速に、金銭解決を実現できる手段も整っています。
しかし、本心から復職を希望する人もいます。例えば、次のようなケースでは、解雇が無効となるので、復職を求めるべきです。
- 上場企業など、在籍自体がステータスとなる場合
- 優良企業で、福利厚生がしっかりしている場合
- 長年勤務しており、年功序列によって給料が高い場合
- 他社より高待遇を受けている場合
- 高齢で、再就職の可能性がない場合
- 在籍期間が短く、転職すると経歴に傷がつく場合
不当解雇から、復職したいと切に願う方は、解雇の無効を確認すべく徹底して争う必要があります。
このとき、労働審判は、話し合いを重視した制度のため、解雇無効を主張するケースには向きません。最後まで徹底して争いたいなら、訴訟提起する方法がお勧めです。
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まとめ
解雇トラブルでは、たとえ「不当解雇だ」と主張して争っても、復職したくない方も多くいます。
ひとたび問題ある解雇をした会社に、二度と勤めたくないという労働者は珍しくありません。法律上の建前としては、解雇トラブルを有利に進めるには、復職する意思を示し、「解雇の無効」を希望しなければなりませんが、この建前は、本音と矛盾するケースが多いでしょう。
本心では「解雇が無効とはいえ復職したくない」と希望するなら、それでもなお有利な解決を勝ちとるため、法律知識を知らなければなりません。
- 解雇が無効になれば、法律上、労働者として戻らなければならない
- 解雇され、本音は会社に戻りたくないときでも、「復職の意思」を示し続ける
- 解雇が無効でも、未払い残業代やパワハラなどの問題がある会社には戻らなくてよい
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