懲戒解雇は、労働者にとって極めて重大な処分です。
突然告げられることも多く、驚きや不安を感じる方も少なくありませんが、懲戒解雇は、会社が自由に行えるものではありません。退職金の不支給や再就職への影響など、労働者にとって多くのデメリットがあるため、法的にも厳しい制限が適用されます。
「本当に懲戒解雇が有効なのか」「会社の対応に問題はないか」と疑問を感じたら、すぐに弁護士に相談することが重要です。弁護士に相談・依頼すれば、懲戒解雇の有効性を法的に検討し、不当解雇の疑いがあるときは撤回交渉や解決金の請求といった対応が可能です。争う場合、懲戒解雇された直後の初動が重要で、対応が遅れると不利になるおそれもあります。
今回は、懲戒解雇されたら弁護士に相談すべき理由や解決方法、その際にかかる費用の目安について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 懲戒解雇後すぐに弁護士に相談することで、デメリットやリスクを軽減できる
- 懲戒解雇直後の初動が、解雇撤回や解決金請求といった有利な解決につながる
- 懲戒解雇について弁護士に相談する際は、無料相談となることが多い
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懲戒解雇とは

まず、懲戒解雇がどのような処分なのか、基本的な知識について解説します。
懲戒解雇は最も厳しい処分
懲戒解雇とは、企業秩序の違反に対して下される制裁の意味を持つ解雇です。
会社が一方的に労働契約を解約することを「解雇」と言い、その中でも最も重大で、企業秩序に違反した労働者への制裁としての意味合いを持つのが「懲戒解雇」です。懲戒解雇は、「極刑(死刑)」に例えられるほど重いものであり、労働者としての地位や退職金が失われるだけでなく、再就職の支障になり得るといった重大な不利益をもたらします。
そのため、その有効性は厳しく判断されているため、懲戒解雇されたら速やかに弁護士に相談し、法的なアドバイスを受けるべきです。
懲戒解雇は不当解雇になりやすい
懲戒解雇には、懲戒権の濫用を規制する労働契約法15条と、解雇権の濫用を規制する同法16条が適用されます。その結果として、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、不当解雇として違法・無効となります(労働契約法16条)。

懲戒解雇は、労働者に対する制裁としての意味合いがあるため、普通解雇、整理解雇、諭旨解雇といった他の解雇に比べ、厳しく審査されます。懲戒解雇の有効性は、個別のケースに応じて判断する必要があるため、法律相談で、争う価値があるかどうかを質問しておきましょう。
「解雇の意味と法的ルール」の解説

懲戒解雇の対象となる具体的なケース
懲戒解雇は極めて重い処分であり、認められる場面は限定されています。
どのような行為が懲戒解雇の理由となるかを具体的に知ることが重要です。例えば、業務上横領や背任といった犯罪行為、重大な経歴詐称が発覚した場合、懲戒解雇になる可能性があります。また、正当な理由のない長期間の無断欠勤や度重なる業務命令違反、重度のセクハラやパワハラなども、悪質な場合は懲戒解雇の理由になります(参考:「懲戒解雇の理由ランキング」)。
なお、これらの理由に該当する場合でも、必ず懲戒解雇が有効になるとは限らず、行為の内容や程度を考慮して相当でなければなりません。
懲戒解雇に必要な手続き(弁明の機会と解雇予告)
懲戒解雇を有効に行うには、会社側が適切な手続きを踏んでいるかどうかも重要です。
特に重視されるのが、処分を下す前に労働者へ弁明の機会を与えたかどうかという点です。就業規則に規定された懲戒解雇事由に該当する疑いがあっても、労働者の言い分を聞かずに一方的に処分を決定することは手続き上の不備となり得ます。
また、即時に解雇する場合、会社は労働基準監督署長による解雇予告の除外認定を受けなければなりません。この認定を受けない場合、少なくとも30日前に予告するか、不足する日数分の平均賃金に相当する解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法20条)。なお、予告手当の支払いや除外認定を受けたとしても、それだけで、懲戒解雇自体が必ず有効になるとは限りません。
公務員の懲戒免職との違い
民間企業の懲戒解雇に相当する処分として、公務員には懲戒免職が存在します。
どちらも重大な秩序違反行為に対する制裁という意味合いがある点は共通しますが、対象が民間企業の労働者か公務員かという点が異なり、争う際の手続きにも違いがあります。民間企業の労働者が懲戒解雇を争う場合、労働審判や訴訟を通じて解決を図ることとなります。一方、公務員が懲戒免職を争う場合、国家公務員であれば人事院に対し、地方公務員であれば地方公共団体の人事委員会または公平委員会に対して審査請求を行い、その結果に不服がある場合は取消訴訟を提起します。
それぞれの立場で適用される法律や争うためのルートが異なる点に注意が必要です。公務員の場合、労働問題だけでなく行政事件にも精通した弁護士への相談が適切です。
懲戒解雇されたら弁護士に相談すべき理由
次に、懲戒解雇されたら弁護士に相談すべき理由について解説します。
「懲戒解雇は最も厳しい処分」の通り、懲戒解雇は労働者にとって多くの不利益があるので、その有効性を精査し、争うべきかどうかを判断する必要があります。放置するほどデメリットは拡大し、「懲戒解雇を認めた」と評価されかねないため、初動対応には速やかに着手してください。
有効性を法的観点で判断するため
懲戒解雇を弁護士に相談すれば、その有効性を法的に判断することができます。
前述の通り、懲戒解雇は法的に厳しく制限され、他の解雇に比べても不当解雇と判断されやすいと考えられます。特に、次の3点は、初回の相談時に弁護士から必ずアドバイスを受けてください。
- 懲戒解雇の理由が合理的か
懲戒解雇の理由は、重大な服務規律違反や犯罪行為といったものに限られます。理由とされた事情が事実でない場合や、就業規則上の事由に該当しない場合などは、不当解雇となります。 - 懲戒解雇という処分が相当か
就業規則上の事由に該当しても、懲戒解雇に相当する重大な事情に限られるため、軽度の違反しかない場合などは、不当解雇となります。 - 懲戒解雇の手続きが適正か
懲戒解雇は重大な処分なので、手続きの適正性も問われます。弁明の機会を付与し、懲戒委員会を開くといった所定の手続きを踏まなければならず、労働基準監督署長による除外認定を得ない限り、解雇予告または解雇予告手当が必要です。
以上の点について、法律違反がないかどうかを確認し、アドバイスをもらうことが、弁護士に相談すべき最大の理由です。
早期相談により不利な対応を避けるため
懲戒解雇は、今後のキャリアにも大きな影響を及ぼすおそれがあります。
懲戒解雇を争わずに放置すれば、転職活動の際、「争わなかったのは、解雇理由となった問題行為が事実だったからなのではないか」と見られ、問題社員扱いされる危険があります。徹底的に争うかはともかく、弁護士のアドバイスを受けたり、依頼して懲戒解雇に異議を述べたりすることで、将来の転職活動で不利にならないよう「争った」という証拠を残すことができます。
「懲戒解雇は再就職するときバレる?」の解説

会社との交渉を有利に進めるため
弁護士は、法律知識と交渉力を活かし、会社との交渉を有利に進める助けになります。
弁護士が介入することで、会社側も慎重に対応せざるを得なくなり、弱い立場に置かれがちな労働者でも、会社と対等に交渉できるようになります。労使間には上下関係・主従関係が生じやすいです。まして、懲戒解雇されるケースでは、労働者の問題点やミスが指摘され、責任追及を受けやすい状況にあるため、法律知識に基づいた主張が欠かせません。

撤回や解決金の増額を目指すため
懲戒解雇が不当と考えられる場合、会社に撤回や復職を求めることが可能です。復職ではなく金銭による解決を選ぶ場合、解決金の支払いを求めて交渉するケースもあります。弁護士に依頼すれば、法律や裁判例を踏まえて説得的に説明でき、より有利な条件での解決を目指せます。
「解雇を撤回させる方法」「解雇の解決金」の解説


証拠収集を適切に進められるため
弁護士に相談すれば、どのような証拠が役に立つかを具体的にアドバイスしてもらえるため、後の交渉や法的手続きを見据えた準備を進められます。
懲戒解雇の有効性を争うには、証拠が非常に重要です。労働審判や訴訟などの裁判手続きでは証拠のない事実は認定されないおそれがあり、ひいては交渉段階でも、証拠がなければ会社の譲歩は期待できないでしょう。就業規則、会社からの通知書や解雇理由証明書、業務に関するメールやチャットの履歴など、懲戒解雇が不当であると示す証拠を集めてください。
「不当解雇の証拠」の解説

労働審判や訴訟の手続きを進めるため
会社との交渉で解決しない場合、労働審判や訴訟などの法的手続きを検討します。これらの裁判手続きでは、主張や証拠の整理、裁判所に提出する書面の作成などが必要であり、弁護士の経験を活かすことでスムーズに進められます。
直接交渉による精神的負担を軽減するため
懲戒解雇は、大きな精神的苦痛を伴うため、冷静な判断が難しいでしょう。
一人では対応が難しいとき、弁護士に相談し、客観的な視点からアドバイスを聞くことが精神的な支えとなります。懲戒解雇について争う場合も、弁護士を窓口とすれば会社との直接交渉を避けることができ、精神的負担を軽減できます。特に、社長や上司からのハラスメントがある場合、争うとしても直接のやり取りは控えるべきです。
「解雇されたらやること」の解説

懲戒解雇された直後の弁護士による具体的な対処法

懲戒解雇を言い渡された直後は、冷静に以下の対処法を実践してください。弁護士に相談する前に自分で行うこともできますが、すぐに相談すれば、弁護士に任せることもできます。
解雇理由証明書を会社に請求する
真っ先に行うべきなのが、解雇理由証明書の請求です。
懲戒解雇を争うにあたり、会社がどのような理由で処分を下したかを知る必要があります。労働基準法22条により、労働者から請求があれば会社は遅滞なく理由を書面で交付する義務があります。口頭の説明のみだと、後から理由を追加されるおそれがあるため、必ず証拠化すべきです。
弁護士に先に相談すれば、解雇への不服を述べる内容証明において、あわせて解雇理由証明書の請求を行ってもらうことができます。
就業規則や雇用契約書を確認する
次に、就業規則と雇用契約書を確認しましょう。懲戒解雇が有効となるには、就業規則に事由が明記されることが要件なので、自分の行為がどの条項に違反しているかを知る必要があります。会社の手元にある証拠が開示されない場合にも、弁護士から請求する方法が有効です。
失業保険の手続きを行う
懲戒解雇後の生活費を確保するため、速やかに失業保険の手続きをしましょう。
会社に「重責解雇」として扱われると、7日間の待期期間の経過後、3ヶ月間の給付制限が設けられます。離職理由の扱いに不服があるときは、離職票にその旨を記載し、ハローワークに異議を申し立てることができます。また、解雇を争う場合には、「失業保険の仮給付」を活用できます。
懲戒解雇を弁護士が解決する方法
次に、懲戒解雇を弁護士に相談することで得られる解決策について解説します。
弁護士は、まずは会社と交渉を試み、懲戒解雇が不当であることを伝えて撤回を求めます。ただ、懲戒解雇になるほどの事案だと、交渉で速やかに撤回されることは期待できません。労働者も復職を望まない場合、労使の話し合いによって金銭解決を選択するケースもあります。
その結果、交渉段階で、懲戒解雇を撤回して合意退職として、その代わりに解決金を受け取ることで解決するケースがあります。

懲戒解雇の影響の大きさからして、労働者としても「退職は仕方ないが、懲戒解雇は是が非でも撤回してほしい」と考えることが多く、会社も「たとえ懲戒解雇が無効でも、戻ってきてほしくない」と考え、和解が成立しやすい傾向があります。
懲戒解雇のような厳しい処分をされると、その会社で働きたいという人は少なく、弁護士に相談・依頼する場合にも「金銭解決」がゴールとなることが多いです。

「懲戒解雇を争うときのポイント」の解説

懲戒解雇の弁護士費用相場
次に、懲戒解雇を相談・依頼する際の弁護士費用について解説します。
弁護士費用は主に、相談料、着手金、報酬金(成功報酬)、実費・日当などで構成されています。依頼する事務所や業務の内容によっても異なりますが、おおよその相場は以下の通りです。

- 相談料
弁護士に初めて相談する際にかかる費用です。「30分5,500円」「1時間1万1,000円」程度が多いですが、懲戒解雇の法律相談は初回無料となる事務所もあります。 - 着手金
正式に依頼する際に支払う費用で、結果にかかわらず原則として返金されません。懲戒解雇の解決を弁護士に依頼する場合、11万円〜55万円程度が目安となります。 - 報酬金(成功報酬)
事件が解決した際、結果に応じて支払う費用です。懲戒解雇の解決を弁護士に依頼する場合、得られた経済的利益の17.6%〜33%程度が目安とされ、復職に成功した場合には固定額の報酬が設定されることが多いです。 - 実費・日当
労働審判や訴訟などで裁判所への出廷を要する場合、距離や時間に応じた日当が発生することがあります。また、弁護士費用とは別に、裁判所への申立手数料(収入印紙代)、郵便切手代、交通費といった実費が生じます。
懲戒解雇をめぐるトラブルは、残業代やハラスメントの慰謝料といった金銭請求とは異なり、「お金には換えられない」という側面があります。懲戒解雇による将来の不利益を回避するため、弁護士費用がかかっても争うべきだと考えるなら、「費用倒れになるかどうか」ではなく「納得の行く解決が実現できるか」という観点で検討すべきです。
懲戒解雇トラブルを任せる弁護士の選び方

最後に、懲戒解雇をめぐるトラブルを任せる弁護士の選び方を解説します。
「懲戒解雇されたら弁護士に相談すべき理由」は数多くあると解説しましたが、どのような弁護士でも有利な解決を実現できるわけではありません。懲戒解雇という深刻な事態だからこそ、弁護士選びは特に慎重になるべきです。
労働問題に詳しい弁護士
懲戒解雇は、労働問題でも特に重大なケースなので、労働問題に詳しい弁護士に相談するのが前提です。労働法や裁判例の知識・経験が乏しい弁護士は、困難な懲戒解雇のトラブルには向きません。懲戒解雇は労使の対立が激化しやすいため、裁判例も数多く存在し、最新の法改正や裁判例を理解しているかどうかが重要なポイントとなります。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

懲戒解雇トラブルの解決実績が豊富な弁護士
労働問題にも様々な種類があるので、懲戒解雇トラブルの解決実績が豊富な弁護士を選びましょう。初回相談で、過去にどのようなケースを扱ったかを聞いた上で、自身の状況を踏まえた具体的な見通し、戦略について質問してください。

昨今、社員を退職に追い込む手口は巧妙化し、軽い問題で即座に懲戒解雇するようなケースは減少しています。だからこそ、懲戒解雇された場合、企業秩序違反があったか、法令遵守の意識の低い会社かといった複雑な問題が潜んでいる可能性があります。非常に難しいケースなので、依頼する弁護士も、懲戒解雇トラブルの分野で豊富な経験がなければ十分に対応できないでしょう。
事実関係を丁寧に確認してくれる弁護士
「懲戒解雇」と一言でいっても、その事案は様々であり、定型化は危険です。
厳しい処分をされたケースほど、事情に合った対処法を詳細に検討しなければ、有利な解決は望めません。その前提として、法律相談でしっかりとヒアリングし、事実関係を丁寧に確認してくれる弁護士を選ぶのがおすすめです。信頼関係が築けるか、コミュニケーションの相性がよいかといった点も、法律相談で確認すべき重要なポイントです。
迅速な対応が可能な弁護士
懲戒解雇に関する争いは、初動が重要となります。そのため、迅速に対応してくれる弁護士を選ぶことが成功の鍵となります。豊富な知識と経験があっても、連絡が滞ったり相談が先の日程になってしまったりすると、会社に先手を取られるおそれがあります。懲戒解雇は即日解雇となることが多く、会社からはすぐに排除され、速やかな決断が求められやすい傾向があります。
懲戒解雇でもあきらめない弁護士
懲戒解雇された事案の中には、労働者側にも一定の非がある場合があります。
昨今では、事実無根なのに全く調査もせずに懲戒解雇されるといったケースは減少しています。後ろめたい点があったとしても、「懲戒解雇されるほどの問題ではないのではないか」と考えるのであれば、懲戒解雇は不相当であると主張して争うべきです。
このような事案こそ、労働者の立場で親身に考えられる弁護士でなければ、そもそも信頼関係を築くこと自体難しいと考えられます。心の中では「懲戒解雇をされる人にも問題がある」と考えているのでは、会社と徹底的に戦うパートナーとしてふさわしくありません。懲戒解雇のトラブルこそ、弁護士にも労働者にも、「あきらめない気持ち」が求められます。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

【まとめ】懲戒解雇されたら弁護士に相談すべき

今回は、懲戒解雇されたらすぐに弁護士に相談すべき理由について解説しました。
懲戒解雇は労働者にとって非常に厳しい処分だからこそ、「不当解雇」になりやすい性質があります。懲戒解雇されて争うことを検討しているなら、速やかに弁護士へ相談すべきです。依頼はしなかったとしても、解雇直後に法的なアドバイスを受ければ、有利な戦略を知ることができます。
懲戒解雇されたときの相談は、労働問題の解決を得意とする弁護士を選びましょう。懲戒解雇のトラブルは、ケースに応じた適切な方針を立てる必要があるため、豊富な経験から見通しを具体的に教えてくれる弁護士に依頼することが有益です。
懲戒解雇されて、会社と争うことを少しでも検討しているのであれば、まずは無料相談から、できるだけ早めに弁護士のサポートを受けてください。
- 懲戒解雇後すぐに弁護士に相談することで、デメリットやリスクを軽減できる
- 懲戒解雇直後の初動が、解雇撤回や解決金請求といった有利な解決につながる
- 懲戒解雇について弁護士に相談する際は、無料相談となることが多い
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