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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。
★ 労働問題を弁護士に相談する流れは?

花粉症で在宅勤務にしてもらえる?仕事を休む理由になる?

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

不当解雇、残業代、セクハラ、パワハラ、労災などの労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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花粉症は、日本人の約4割がかかっていると言われるほど広がっています。

しかし、会社の対策が必ずしも十分でないこともあります。鼻や目がかゆいと、仕事の集中力も削がれてしまうでしょう。業務効率が下がれば、低評価にもつながりかねません。

マスクや薬などの個人でできる対策はあるものの、一日の大半を過ごす職場の対策が不十分だとつらいでしょう。職場での花粉症対策が徹底されていないことは、労働者にとって深刻な問題です。では、花粉症を理由に、在宅勤務にしてもらうことができるのでしょうか。どのように伝えるべきでしょうか。さらに、症状があまりにひどいときは、花粉症を理由に仕事を休めるのでしょうか。

今回は、職場の花粉症対策と、不十分な場合に労働者が取るべき対処法について、法的な観点から、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 職場の花粉症対策に不備がある場合、安全配慮義務違反の問題になり得る
  • 職場で働く際、個人での花粉症対策には限界があり、会社の協力が必要となる
  • 職場全体の理解が必要であり、パワハラや差別発言につながらないよう注意

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目次(クリックで移動)

職場の花粉症対策は会社の課題である

例年、春になって暖かくなると、花粉の飛散が始まります。

「花粉症は個人の問題である」として、対策をしない会社がありますが、職場で働く以上、個人の対策だけでは限界があります。また、花粉症は個人の努力で避けられるものではありません。

花粉症対策は、職場環境の整備に関わるため、労働問題としての側面があります。

会社は、労働契約法5条に基づき、労働者の心身の安全に配慮する義務(安全配慮義務)を負っています。また、労働安全衛生法71条の2は、事業者に対し、快適な職場環境を形成するための措置を継続的・計画的に講じる努力義務を課しています。

花粉症対策としてのオフィスの環境整備(換気の徹底、空気清浄機の設置、清掃の徹底など)は、この努力義務の一環として、積極的に取り組むことが期待されています。

こうした対策を講じないことが直ちに損害賠償責任につながるとまでは言い切れないものの、会社が重篤な症状を認識しながら配慮せず、労働者の健康状態を著しく悪化させた場合、安全配慮義務違反の問題となる可能性があります。

職場における花粉症対策には、例えば次のようなものがあります。

  • 換気を徹底する。
  • 花粉を持ち込まないよう社内に周知する。
  • 空気清浄機を設置する。
  • 清掃を徹底する。

職場における花粉症対策を円滑に進めるには、周囲の労働者の理解を得ることが重要なポイントです。花粉症でない人にはつらさが理解しにくく、無配慮な行為が花粉症の人の神経を逆撫でし、トラブルに発展するケースもあります。

対策を怠るだけでなく、「花粉症など我慢しろ」「根性がないのでは」「やる気の問題だ」といった理解のない発言をすれば、パワハラになってしまうおそれもあります。

「パワハラにあたる言葉一覧」「パワハラの相談先」の解説

会社の花粉症対策が不十分な場合の対応

前述の通り、会社には安全配慮義務があり、花粉症でも働ける職場環境を整備すべきです。

職場全体の協力が必要ですが、花粉症対策が十分に講じられていない企業もあります。症状が重度の人にとっては業務への支障が大きく、健康被害につながるおそれもあります。

以下では、会社の花粉症対策が不十分な場合の対応について解説します。

個人の対策や健康管理を怠らない

まず、個人でできる対策や健康管理は怠らないようにしましょう。

会社には安全配慮義務や快適な職場環境を形成する努力義務がある一方で、労働者にも自身の健康の保持に努める義務(自己保健義務)があると考えられています。花粉症対策は、職場だけでなく、私生活でも徹底してください。重篤な症状を引き起こしたとき、それが職場の不十分な対策に起因すると言えなければ、会社の責任は追及できません。

業務への具体的な支障を伝える

花粉症でない人には、健康被害や心身のつらさは理解しにくいでしょう。

職場の花粉症対策について、労働問題という側面から解決するには、「つらい」「きつい」といった感情ではなく、業務への具体的な支障を伝えるのが効果的です。

会社の花粉症対策が不十分なまま放置されているのは、そのデメリットが理解されていないからなのかもしれません。業務効率が低下する、仕事に集中できない、ミスやクレームが増えるといった業務への支障が明らかになれば、会社にとっても必要なこととして対策が進む可能性があります。したがって、自身の体調のつらさではなく、業務への支障を伝え、職場環境の改善を求めてください。会社としても業績に直結するのであれば、費用をかけて対策を講じる動機が生まれます。

「職場のモラハラの例と対処法」の解説

安全配慮義務違反の責任を追及する

最後に、花粉症の症状が悪化したことについて会社の責任を追及する方法もあり得ます。

職場環境の整備を怠り、労働者に重大な健康被害を生じさせた場合、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求や労災の問題とすることが理論上は可能です。ただし、花粉症は、私的なケガや病気(私傷病)であるのが基本であり、会社に責任追及できるのは例外的な場合に限られます。例えば、屋外での長時間の作業、重篤な症状を発症していて配慮を求めるための相談をしたのに放置されたケース、高濃度の花粉に暴露されるような特殊な環境での作業といったケースが該当します。

したがって、職場の花粉症対策に不十分な点があると考えたとしても、法的責任の追及よりも先に、会社へ対策を講じるよう働きかけたり、在宅勤務を求めたり、有給休暇を取得したりといった方法を優先することが現実的です。

「労災の慰謝料の相場」の解説

花粉症で在宅勤務にしてもらえる?

会社に理解がある場合、在宅勤務やリモートワークを活用する対策もあります。

自宅で働くのであれば、自身で徹底して花粉症対策をすることができます。職場には花粉症でない人もいて対策が適切に講じられていなくても、自宅であれば徹底できるでしょう。テレワークや在宅ワークなど、オフィス以外で働く方法は、近年急速に普及しています。これらの多様な働き方は、未払い残業代や長時間労働の対策として議論されますが、花粉症対策としても有効です。

ただし、就業場所を指定する権限は、原則として会社にあるため、就業規則などに在宅勤務の制度が明記されていない場合、労働者が権利として在宅勤務を要求できるわけではありません。会社に認めてもらいやすくするには、花粉症による業務効率の低下や出社時の負担など、業務への支障を具体的に説明し、医師の診断書なども踏まえて会社と交渉を試みるのがよいでしょう。

なお、在宅で仕事をする際は、「リモートハラスメント」「持ち帰り残業の違法性」といった労働問題が起こりやすいため、注意が必要です。特に、花粉症を理由として例外的に在宅勤務を実施する会社では、在宅勤務をめぐる労働法の理解が不足しているおそれがあります。

花粉症を理由に仕事を休むことはできる?

最後に、花粉症対策の最終手段として、休むことができるかを検討しましょう。

具体的には、花粉症の症状が重篤なときは、会社に連絡して欠勤扱いにしたり、有給休暇を取得したりといった方法が考えられます。有給休暇は法律上の権利であり、理由を問わず取得できるため、花粉症の症状が理由でも取ることができますし、理由を伝える必要もありません。一方、欠勤の扱いは会社によって異なりますが、ノーワーク・ノーペイの原則に基づいて無給扱いとされ、無断欠勤が続くと懲戒処分や解雇といった不利益な処分を下されるおそれがあります。

さらに深刻な場合には、休職制度の活用を検討しましょう。休職は、私的なケガや病気(私傷病)で会社を一定期間休むことができる制度です。就業規則上の要件を満たすことを前提に、会社の休職命令に基づいて行われるものであり、労働者側の事情によって就労が困難な場合でも、一定の勤続がある場合には解雇を猶予するという意味合いがあります。

花粉症は、業務とは無関係な「私傷病」であるため、その症状によって労働契約上の労務を提供できないなら、休職を利用するのは有効な方法です。なお、前述のように、会社の対策が不適切であることが理由で悪化した場合、業務に起因する労災であると主張できる場合があります。

会社に行けないほどにひどい花粉症になってしまったとき、不利な扱いを受けないようにするには、早めに弁護士に相談しておくのが適切です。

「休職を拒否されたときの対応」の解説

【まとめ】職場での花粉症への対応について

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、職場での花粉症への向き合い方について、法的な観点から解説しました。

会社は、安全配慮義務を負うとともに、快適な職場環境を形成する努力義務を負っており、花粉症対策はその一環となります。そのため、花粉症の労働者が一定数いることを想定して、労働者の健康に配慮しなければなりません。

一方で、花粉症の労働者としても、花粉症があくまで私傷病であるため、自身での対策や健康管理が欠かせません。また、リモートワークの申出や有給休暇の取得などの方法を検討しましょう。ただし、会社が適切な環境整備を怠り、労働者の心身に重大な健康被害を生じさせたときは、安全配慮義務違反などの法的責任の追及を検討することとなります。

できる限り円満に解決するには、会社にそのつらさを理解してもらうことが大切です。業務への支障という観点から具体的に説明し、花粉のシーズンが始まる前に、正しい対策を講じてもらえるよう働きかけておくのがよいでしょう。

この解説のポイント
  • 職場の花粉症対策に不備がある場合、安全配慮義務違反の問題になり得る
  • 職場で働く際、個人での花粉症対策には限界があり、会社の協力が必要となる
  • 職場全体の理解が必要であり、パワハラや差別発言につながらないよう注意

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