社長が失踪して音信不通のとき、社員はどう対応したらよいのでしょうか。
未払いの給料すら受け取れないまま社長が逃亡したり、業績が悪化して都合が悪くなると夜逃げしたりする社長がいますが。しかし、労働者として給料を受け取る権利は失いません。
相談者社長が飛んだので、連絡が取れない
相談者給料未払いのまま社長に逃げられた
やむを得ない事情で音信不通になる社長がいる一方、実は計画倒産であったケースもあります。対外的な責任も問題になります。経営の責任は社長にあり、労働者は指示に従う存在に過ぎないものの、社長が逃亡して音信不通になると、顧客や取引先の追及は社員に向いてしまいます。
今回は、社長が失踪して音信不通になったとき、社員が取るべき適切な対応と、未払い給与の扱いについて、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 社長が失踪、逃亡するケースは、業績悪化が理由となることが多い
- 社長が失踪、逃亡しても会社に未払いの給料を請求し、証拠を残して退職する
- 会社の責任を社員が負う必要はないが、利益を害さないよう慎重に対応する
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社長が失踪してしまうケースとは

社長が失踪し、逃亡してしまうケースがあります。
社長は、経営に関する重責を負っています。不適切と分かっていても、経営の調子が悪いと「逃げたい」「消えてしまいたい」と逃げ腰になる経営者は、思いのほか多いものです。すぐに倒産するほど危機的な事態でなくても、「利益が残っているうちに資金を海外に移して失踪しよう」といったように、悪質で計画的なケースもあります。
社長が失踪してしまう例には、次のようなものがあります。
- ある日突然、社長が会社に来なくなった。
- 給料を未払いのまま、社長が逃亡した。
- 社長が海外に逃げて、帰ってこなくなった。
- 会社のお金を持ち逃げして、音信不通になった。
- 社長が一家で夜逃げした。
- 残業代を請求したら、会社が計画倒産した。
経営の責任は社長(経営者)にあるのであって、労働者にはありません。そして、労働者と会社(法人)は法的に全く別の人格であり、そこで働いているからといって会社の責任や債務を負担させられるいわれはありません。
しかし、社長が逃げると、業績悪化の理由や現状について、第三者に説明する立場の人がいなくなってしまいます。社外の人にとっては、そこで働く労働者に詰め寄るほかなく、適切に説明し、対応しなければ、社長が失踪したツケを負わされる危険があります。
給料未払いのまま社長が逃亡した場合に、請求する方法

社長が逃亡し、失踪しても、労働者は給料を受け取る権利を失いません。
労働者に対して給料を支払う義務は「社長」ではなく「会社」にあるからです。そのため、給料が未払いなら、社長がいなくなった後でも、会社に請求することが可能です。
突然連絡が取れなくなってしまうような無責任な社長の下では働き続けたくないでしょう。退職するのであれば、未払いの給料や残業代は必ず回収しておきたいところです。
ただし、勝手に現金を持ち出したり、会社の預貯金を引き出したりすると、横領や背任として違法となるおそれがあるので注意してください。
正しい対応は、法的手続きによって給料請求をすることです。
万が一、会社の経営が危機的な状況となって給料が払われそうにないときは、「未払賃金立替払制度」を利用する方法も検討しましょう。この制度は、倒産などで未払いとなる給料を国が立て替えてくれる、労働者保護のための制度です(ただし、制度の利用には条件があり、全額を払ってもらえるわけではありません)。
なお、社長が逃亡しただけでは法的には倒産ではありませんが、「事実上の倒産」であれば、未払賃金立替払制度を利用できます。
「未払い賃金を請求する方法」の解説

社長が失踪し、労働者が、会社の責任を追及されたらどうするか

次に、社長が失踪した後、労働者が、会社の責任を追及されたときの正しい対応を解説します。
労働者が、会社の責任や債務を負担する必要は法的には全くありません。ただ、社長が逃亡したり失踪したりすると、現場には社員しかいません。会社の内情を知らない人は「残った社員が責任を果たすべきだ」と強く要求してくるでしょう。
会社の借金の返済を請求された時の対応
社長の失踪後に最も気をつけるべきは、借金などの会社の債務です。
会社を存続させるにせよ清算するにせよ、債務の返済が滞ると窮地に陥ります。多額の借金で社長が逃げてしまうと、債務者が押しかけてきて対応を要するケースも少なくありません。
社長が逃げた理由が「経営の悪化」だと、逃亡後には多額の借金が残されるケースが多いです。事態が悪化すると、社長個人の消費者金融、さらには闇金や反社会的組織など、危険な借入が存在するおそれもあり、法的な責任のない労働者にまで厳しい返済要求がされる例もあります。
法的に返す義務のない借金については断固として拒否すべきです。暴力や脅迫など、違法な手段で返済を迫られたら、警察に通報してください。
なお、例外的に、役員などの重要な役職につき、会社の借金を連帯保証していると返済義務が生じてしまいます。このとき、社長が失踪して借金が返せないなら、自己破産が必要かもしれません。
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お客さんからクレームを受けた時の対応
社長が逃げ出してしまって、お客さんからクレームを受けるケースがあります。
社長の人脈や看板で集客していた事業では、無責任にも逃げ出せばクレームは避けられません。お客さんのクレームに対し、返金や返品といった対応を行うには、会社の決定が必要です。社長に相談する必要があるのですが、その社長が音信不通だと、すぐには対応できません。
クレームを言うお客さんに対して誠実に対応すべきことに変わりはありません。社長が逃亡する前でも後でも、クレーム対応は、マニュアルに沿って進める必要があります。ただ、「社長が逃げた」という点で会社に否がありますから、まずは謝罪から入るのが筋でしょう。
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取引先から会社の債務の履行を求められた時の対応
社長が逃げてしまったことで、お客さんへの商品提供、取引先へのサービス提供など、会社の債務を履行できなくなったときの対応について説明します。
この場合も、労働者が会社の債務を代わりに履行する必要はありませんが、社長が逃亡前に倒産を決断していた場合、会社財産を外に流出させないよう注意を要します。したがって、社長が逃げてしまったという緊急事態でも、会社の業務を進める必要はあるものの、倒産などの場合には対応は慎重にしなければなりません。
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マスコミの取材を求められた時の対応
社会的影響の大きい社長の失踪では、マスコミ取材を受ける可能性もあります。このとき、社員として適切に対応しなければ、炎上を招いてしまいます。
社長の「逃げる」という判断は、経営者として不適切なことに違いはありません。それでもなお、マスコミ対応には十分注意してください。不適切な対応がメディア報道で拡散され、本来にも増して誇張して捉えられたことで、取り返しのつかない事態に発展することもあります。
入社時の誓約書や秘密保持契約書などにより、社員は秘密保持義務を負っています。企業秘密を外部に漏らさないと約束している場合、マスコミの取材で内部事情を漏らす行為は、この約束違反となるおそれがあります。会社として公式発表を検討していたり、責任の取り方を考えていたりするケースは特に、社員からの情報流出は控えるべきです。
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社長がいなくても退職する方法

責任をとるべき立場の社長が逃げてしまったら、社員としても「これ以上働いてはいられない」「付き合いきれない」という気持ちが正直なところでしょう。給料が払われないなら尚更です。
このとき、退職という選択肢をとるのが最適です。社長が逃げても、労働者は会社を退職することができます。「社長がいないと退職できない」ということはないので安心してください。
ただし、会社をトラブルなく辞めるためにも、退職前にしっかり証拠を集めましょう。社内にいないと集められない情報は、今のうちに保存しておかないと後悔してしまいます。「退職の意思表示をした」という事実を証拠に残すため、退職届を提出する必要があります。社長が失踪してしまったときは、退職届を内容証明で会社に送るのがお勧めです。
社長の失踪後に退職すると、通常すべき退職手続きができないこともあります。社長が逃げてしまうと、小さな会社では総務部門すら機能不全になるでしょう。
このとき、必要な手続きは、例えば次のように進めます。
- 離職票の交付
ハローワークに確認請求し、雇用保険の被保険者でなくなったと確認してもらえれば離職票が交付されます(参考:離職票が届かないときの対処法)。 - 貸与品の返還
社内に残置することで足ります(参考:退職時の貸与品の返却)。 - 私物の返却
社内の私物の所有権は労働者にあるため、持ち出すのに社長の許可は不要です。
会社の実情に応じた対応が必要なので、迷うときは弁護士に相談してください。
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【まとめ】社長が失踪した場合の対応

今回は、社長が逃亡し、失踪してしまったときの労働者側の対応を解説しました。
経営者である社長が会社を捨てて逃げるのは、不適切な行為に違いありません。労働者としては、給料すら受け取れないまま、事後処理に奔走せざるを得なくなります。非常事態に備えて、労働問題の知識をしっかり身につけておいてください。
未払いの給料があったり、退職できなかったり、顧客からの責任追及を受けてしまったりするとき、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
- 社長が失踪、逃亡するケースは、業績悪化が理由となることが多い
- 社長が失踪、逃亡しても会社に未払いの給料を請求し、証拠を残して退職する
- 会社の責任を社員が負う必要はないが、利益を害さないよう慎重に対応する
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