法的なトラブルに直面したとき、速やかに弁護士へ相談するのがお勧めです。
法律相談を考えるとき、「何から話せばいいのか分からない」と悩む方は少なくありません。限られた相談時間の中で、自分の状況を正確に伝えるために役立つのが「時系列表」です。
時系列表は、起こった出来事を整理し、重要な情報を抜けや漏れなく、わかりやすく伝えるための強力なツールです。多くの法律事務所で、事前もしくは当日の持参が推奨されています。
今回は、時系列表を作成するメリットから、書き方の基本、実際に使えるテンプレートなどを、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 法律相談で時系列表を使うメリットは、時間を有効に使い、誤解を防ぐこと
- 時系列表の書き方は、出来事を日付順にまとめ、5W1Hを意識する
- 時系列表を作る際は、曖昧な表現を避け、不利な内容も隠さず記載する
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弁護士への相談で時系列表を使うメリット

はじめに、弁護士へ相談する際に時系列表を使うメリットについて解説します。
弁護士へ相談するときは、事実関係を整理した時系列表を用意しておくと相談がスムーズです。無料相談でも時間には限りがありますし、有料相談なら尚更です。出来事の流れや必要な資料が準備されていると、弁護士としても内容を正確に把握しやすくなります。
時系列表は、初回相談の際に持参するか、弁護士の指示に従って事前に送付します。
相談時間を有効に使える
法律相談は、時間との勝負でもあります。
初回相談では特に、限られた時間の中でトラブルの概要や経緯を正確に伝える必要があります。弁護士への相談前にあらかじめ時系列表を作っておけば、必要な情報を効率的に共有し、時間配分を最適化することができます。時系列表があれば一から説明する手間を省けるので、弁護士も効率よく状況を把握できます。
多くの法律事務所は、無料相談を設けていますが、一定の時間を過ぎると料金が発生する場合もあるため、無駄なく説明した方がよいでしょう。
必要な資料が準備できていれば、短時間で全体の流れを理解でき、アドバイスや見積もりを示しやすくなるなど、相談の質が高まるメリットもあります。
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要点を的確に伝えられる
弁護士は法律の専門家ですが、相談者の状況は何も知らない状態から相談が始まります。
時系列表を用意しておくと、複雑な事実関係もひと目で把握できます。労働問題では特に、感情や背景が複雑なケースもあり、何をどう説明すべきか、迷う方も多いです。その場で考えながら話すと錯綜しがちですが、時系列で可視化しておけば、自分の頭の整理にもなります。
弁護士側も、要点が明確に書かれた時系列表があれば、口頭の説明では伝えきれない事情もしっかりと聴き取れ、誤解を防げるメリットがあります。
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重要な情報の伝え漏れを防げる
あらかじめ時系列で書き出しておくことで、相談前に整理し、伝え漏れを防げます。
人の記憶は曖昧なもので、労働問題では特に、トラブルとなった出来事が数週間から数ヶ月、時には年単位も前のこともあります。残業代請求や労災など、長期化しやすいトラブルほど、記憶だけを頼りに話すと、細かい出来事を伝え忘れることも少なくありません。
時系列表を作成する過程でも、記憶が喚起され、忘れていた重要な事情や相手の言動を思い出すことができます。また、時系列表には、関係者の行動を整理して記載できるので、事実関係を網羅した資料としても役立ちます。
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事実関係の誤解を防げる
口頭の説明だけだと、どうしても主観が混ざり、事実関係にズレが生じることがあります。
話す順番や情報の前後関係が曖昧だと、弁護士も誤って理解してしまう危険があります。時系列順に整理すれば、全体像を把握し、相談内容を論理的に理解しやすくなります。労働問題では特に、相談者(労働者)は感情的になりやすいので、時系列表のメリットは大きいです。
文章化されていれば、曖昧な伝え方となってしまう事態を回避でき、相談者と弁護士の認識違いをなくすことができます。また、作成段階で矛盾に気付き、事前に修正することができるので、何度も説明し直す手間も省けます。
弁護士が事件の見通しを立てやすくなる
弁護士は、相談者にヒアリングした情報をもとに、「何が争点になりそうか」「どのような証拠が必要か」「交渉や訴訟の見通しはどうか」といった専門的な判断を行います。
方針を決める際には、出来事の順序・関係者・相手の言動などを把握する必要がありますが、時系列表があれば、弁護士としても争点を素早く見抜くことができます。労働問題では特に、迅速に着手すべき事案も多く、見通しを素早く立てられるメリットは大きいです。
また、時系列表は、証拠との整合性をチェックする資料としても役立ちます。メールやメッセージ、録音、勤怠データなどの資料と照らし合わせることで、説明に矛盾がないか、裁判で認められる内容かを事前に判断できます。
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分かりやすい時系列表の書き方の基本
次に、時系列表の書き方について解説します。
時系列表を分かりやすく作成するには、5W1Hを意識し、箇条書きで整理するのが大切です。基本的な書き方を押さえた時系列表は、情報が明確であり、弁護士の状況把握に役立ちます。
起きた出来事を日付順に書き出す
時系列表の基本は、出来事を時系列順に並べることです。
年月日が明確なら、具体的に記載しましょう(例:2025年11月22日)。日付が曖昧な場合も、可能な限り特定します(例:「今年5月上旬」「2024年の夏頃」など)。
発生した順番に沿って記録することで、トラブルの流れが明確になります。日付順に整理すれば、連続して起きた出来事の繋がりも理解できます。労働問題の例では、「上司の誘いを断った翌日から、仕事が極端に減った(報復人事)」「退職意思を伝えた途端に嫌がらせされた(ヤメハラ)」のように、流れによって原因を特定できます。
このような連続した出来事の流れは、交渉や労働審判、訴訟の方針を検討するにあたって、重要な判断材料となります。
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関係者や登場人物を整理する
弁護士としては、「誰が関わっているのか」「その人物が相談者とどのような関係にあるのか」を正確に把握することが欠かせません。
主な登場人物の氏名や肩書き・立場を整理しておけば、読み返したときに役割が明確になり、トラブルの構造を理解しやすくなります。また、当事者と第三者を区別しておくことも重要です。登場人物が多いケースでは、関係図や簡単な説明リストを作るのも有効です。
労働問題では、相談者本人(労働者)と会社以外に、社長や同僚、上司、取引先担当者などが登場するので、「組織図」があると整理に役立ちます。特にハラスメント事案などでは、関係性を明記することで、人間関係や力関係を把握しやすくなります。
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5W1H(いつ・どこで・誰が・何をしたか)を具体化する
時系列表では、出来事ごとに5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのようにしたのか)の情報をできるだけ具体的に書きましょう。時間や場所が正確に記載されていれば、弁護士としても文脈を正しく理解することができます。

また、主語と述語をはっきり示すことが大切です。「上司Aが注意した」「相手から深夜に連絡が来た」など、人物と行動の結びつきが不明確だと、事実関係が曖昧になってしまいます。
相談者の置かれている環境をより深く理解するために、行動の背景や理由も簡潔に整理しておくとよいでしょう。
関連する証拠を出来事ごとにメモする
法律相談では、事実関係だけでなく、裏づける証拠があるかも重要となります。
時系列表を作成する際、各出来事に対応する証拠があるなら記載しましょう。重要な証拠が手元にあるかを確認し、日時の横などに「メールあり」「録音あり」「勤怠データあり」といった形でメモを添えておくと、弁護士が証拠を整理し、方針の見通しを立てる役に立ちます。
証拠には、物的証拠(メール・LINE・チャット・写真・録音データなど)と、人的証拠(同僚や家族などの証言)があります。客観性が高く、裁判所でも重視されやすい「物的証拠」の有無について、重点的に整理しておくのがよいでしょう。
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箇条書きで簡潔に読みやすく整える
文章にしようとすると長くなったり、話が脱線したりしがちです。
法律相談のための時系列表では、「1文につき1つの事実」を原則として、箇条書きで簡潔にまとめることをお勧めします。事実を分けて整理することで、情報が明確になり、誤解を避けられます。必要に応じて見出しや太字を使っても構いません。相談時間には限りがあるので、長文は避けましょう。
時系列表は「伝えるためのツール」であり「読み物」ではないので、読みやすくなるような工夫を心がけてください。
弁護士相談で使える時系列表テンプレート

弁護士へ相談する際の時系列表は、テンプレートを利用して作成しましょう。
時系列表は、特別なツールやソフト、スキルがなくても簡単に作成できますが、ひな形や書式、テンプレートを使えば、短時間で必要な情報をまとめることができます。
最もわかりやすいのは、表形式のテンプレートです。Excelなら追記や修正がしやすく、相談後に弁護士から追加の情報提供を求められた場合にも柔軟に対応できます。実際にどのように書けばよいかイメージできるよう、記入例を紹介します。
| 日付 | 出来事 | 関係者・場所 | 補足(証拠など) |
|---|---|---|---|
| 2025/4/12 | 上司から強い口調で叱責を受けた。 | 上司:田中(部長) | メールの写しあり |
| 2025/5/3 | 社内会議で退職を促された。 | 同席者:鈴木(課長) | 録音データあり/同席者が目撃者 |
| 2025/6/1 | 解雇通知書を受領した。 | 社長:佐藤(社長) | 解雇通知書あり |
| 2025/6/2 | 心療内科を受診し、診断書を受領。 | 医師:加藤クリニック | 診断書あり(抑うつ状態) |
表に沿って出来事を記入すれば、読み手(弁護士)にも理解しやすくなります。表の作成が難しければ、テキスト形式の箇条書きでも構いません。
- 【2023年5月1日】田中部長からLINEが届き、「すぐ対応しろ」と強い口調で指示された(LINEのスクショあり)。
- 【2023年5月5日】社内会議で、佐藤部長から「このままだと厳しい」と退職を促された(録音済み)。
- 【2023年5月10日】心療内科を受診し、「うつ病」との診断を受けた(診断書あり)。
この形式であれば、メール本文やWordファイルでも作成できますし、パソコンやスマートフォンが使えなくても手書きで作成できます。
時系列表を作成する際に押さえておきたいポイント

次に、時系列表を作成する際のポイントを解説します。
時系列表では、曖昧な表現を避け、推測ではなく実際に起きた出来事のみを記載します。弁護士が判断材料とするのは「客観的な事実」であり、「相談者の感情・意見」とは区別すべきです。
曖昧な表現は避ける
時系列表では、「多分」「おそらく」などの曖昧な表現はできるだけ避けましょう。
このような言い回しを入れると、事実と推測の境界が不明確になり、弁護士が正確な判断をしづらくなってしまいます。法的判断をするには、情報の正確さが求められます。
時系列表では、実際に起きた出来事が重要であり、推測や曖昧な記載は避けるべきです。例えば、「夏頃に上司にきつく当たられた」ではなく、「2024年8月10日、社内会議で田中課長から、『君は無能だから給料泥棒だ』と言われた」といった具体的な記述を心がけてください。
不確かな情報しか思い出せない場合でも、「これ以上は記憶が曖昧である」と注記した上で、可能な範囲で具体化しておかなければなりません。
客観的な事実と、感情や意見を区別する
時系列表には、客観的な事実のみを記載するようにしてください。
事実と感想が混ざると、出来事の内容が曖昧になってしまいます。例えば、「ひどい対応をされた」「精神的に追い詰められた」「大きな声で怒鳴られた」といった表現だと、相談者(労働者)の感情や評価が主となり、法的判断の基礎としづらいこともあります。この場合、「ひどい対応」の内容や、「怒鳴られた」際の発言などを、具体的に記載することが大切です。
相談者の気持ちや主観を否定するわけではありませんが、専門家である弁護士は、第三者的な視点で、冷静に法的な見通しを立てる必要があります。
自分に不利な内容も正直に記載する
時系列表には、つい自分に有利な内容だけを書きたくなる人も多いです。
しかし、自分にとって不利に見える内容を隠すと、弁護士が正しい情報を把握できず、適切なアドバイスや方針を示せなくなります。不利な内容があったとしても、事前に判明していれば、その影響を最小限に抑える対策を講じることも可能です。
仮に隠していたことが後から発覚した場合、法的に不利になるだけでなく、弁護士との信頼関係が損なわれてしまう危険もあります。
嘘や誇張は書かない
たとえ相手に強い不満があっても、嘘や誇張は絶対に避けてください。
虚偽があると正しい方針が示せず、適切なアドバイスも受けられません。そのまま裁判に発展した場合、相手に矛盾を突かれたり、証拠で覆されたりして、主張全体の信用性も失われかねません。裁判所の審理では、相手の反論をもとに証拠との整合性が精査されるので、嘘をついても発覚して、自分にとって不利になってしまいます。
労働問題では特に、労働者が会社を恨んで、「これまで耐えてきた仕返しをしたい」「社長に痛い目を見てほしい」と考えることが多いですが、結果的に自分の損になってしまいます。
意図的な虚偽があったと判断されると、場合によっては名誉毀損などの別のトラブルに発展するリスクもあるため注意が必要です。
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パソコンで作成して修正しやすくする
法律相談では、弁護士から追加の情報提供を求められたり、新しい出来事を後日思い出したりすることも多くあります。
紙に手書きしたものだと、その都度書き直す必要があり手間がかかりますが、デジタルデータであれば短時間で更新できます。
また、ExcelやWordで作成した時系列表は、項目の並び替えや行の追加がしやすいのもメリットです。柔軟に情報を整理でき、データとして保存しておけば、メールに添付したり、オンライン相談にアップロードしたりと、弁護士への共有もしやすくなります。
法律相談時のよくある質問
最後に、法律相談時のよくある質問について回答しておきます。
時系列表の書き方がわからないときは?
法律相談が初めてだと、何を書いてよいか分からない人は多いです。
「どこまで詳しく書けばよいか」「どの順番で書くべきか」と迷う場合、雛形(テンプレート)を活用するのが有効です。Webサイトで無料配布されていたり、相談前にどのような情報が必要かを案内してくれたりする法律事務所もあるので、質問してみましょう。
弁護士によっては、時系列表の作成についてアドバイスを受けられる場合もあります。「こういう書き方で大丈夫か」といった疑問は、遠慮せずに尋ねていてください。
ただし、時系列表はあくまで相談をスムーズに進めるための「補助」に過ぎず、完璧に仕上げる必要はありません。情報に抜けがあっても、法律相談の場で弁護士が質問しながら進めてくれるので、まずは相談を行うことが重要です。
証拠や記録がない事実も書いてよい?
時系列表で、「手元に証拠がない出来事を書いてよい?」という不安があります。
相談段階で証拠が全て揃わなくても問題ないし、記憶に基づいて記載して構いません。むしろ、相談時点で証拠がないからといって出来事そのものを省略すると、事実関係が誤って伝わるおそれがあります。時系列表では、思い出せる内容を全て書き出す方が、弁護士も状況を把握しやすくなります(「証拠あり」「証拠なし」「探せば見つかるかも」などとメモしておくのも役立ちます)。
法律相談では、証拠が完璧なことの方が珍しく、弁護士のサポート受けながら資料を集めるケースが多いです。最初は記憶が曖昧でも、証拠を確認しているうちに思い出すこともあります。
証拠が不十分でも相談を先延ばしにせず、早い段階で弁護士のアドバイスを受ける方が適切な対応に繋がります。


弁護士への相談時に持参する物は?
弁護士への初回相談は、時系列表に加え、次の資料を持参するとスムーズです
- 時系列表
出来事の流れをまとめた資料。整理して伝えることで弁護士が状況を把握しやすくなり、限られた相談時間を有効に活用できます。 - 関係資料
契約書、通知書、メールやLINEのスクリーンショット、録音・録画、領収書など、トラブルに関連する証拠となる資料を用意します。 - 本人確認書類
委任契約や本人確認が必要な場合に備えて、免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書。 - 印鑑・メモ帳など
契約を締結する場合、印鑑が必要なことがあります。また、相談時のやり取りは重要な内容が多いので、メモの準備もお勧めです。
証拠となるものは全て用意できなくても、弁護士が資料を確認し、「これは使える」「これは不要」「もっとこういう資料を集めてほしい」などとアドバイスしてれます。
なお、弁護士への相談では手土産などは不要です。相談の質は資料の準備と事実関係の整理で十分に高められるため、形式的な贈り物は必要ありません。
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まとめ

今回は、弁護士へ相談する際に使用する時系列表について解説しました。
弁護士への相談をスムーズに進めるには、事実関係を整理した「時系列表」が役立ちます。出来事を日付順に書き出し、関係者や証拠を整理するだけでも、限られた相談時間を有効に使い、正確なアドバイスを受けることができるでしょう。
重要なのは、完璧に仕上げることではなく、正確な事実を、客観的に伝えることです。初めはシンプルな形式で構わないので、思い出せる範囲から箇条書きで列挙していきましょう。
本解説の書き方やテンプレートを参考に準備を整え、安心して弁護士に相談してください。
- 法律相談で時系列表を使うメリットは、時間を有効に使い、誤解を防ぐこと
- 時系列表の書き方は、出来事を日付順にまとめ、5W1Hを意識する
- 時系列表を作る際は、曖昧な表現を避け、不利な内容も隠さず記載する
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