タイムカードを、強制的に打刻させられる会社があります。
特に多いのが「定時打刻」を強制される相談例です。「00分」などのちょうどの時間に一律の定時打刻をさせられると、タイムカードをもとに正しい残業代を計算できなくなります。定時に打刻させれば、それ以降は残業していなかった証拠が残ります。実際は働いていても、残業をしていなかったかように見せかけるやり方であり、労働者にとって不利益しかありません。
悪質な会社ほど、タイムカードの重要性を理解した上で悪用してきます。こうした不正は、会社ぐるみで強制されることもあれば、上司の独断で指示されるケースもありますが、「定時出社・定時帰り」という形式的な打刻では、タイムカードが役立たなくなってしまいます。
今回は、タイムカードの定時打刻を強制される違法な手口と、適切な対応について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- タイムカードを定時で打刻するよう強制するのは、不適切な扱いである
- タイムカードを押した後、さらに労働していたなら、違法な残業代未払い
- 定時での打刻は必ず拒否し、どうしても押さなければならないならすぐ帰る
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タイムカードを定時打刻するよう強制されるケースの問題点

ブラック企業に勤務すると、タイムカードの不正打刻は、ごく当たり前に行われます。日常になっており、泣き寝入りしてしまっている労働者も多いかもしれません。
その中でも、今回解説する定時打刻の強制には、次の例があります。
- 早出しても、始業時刻ぴったりにタイムカードを押すよう強制される。
- タイムカードを終業時刻に打刻した後で残業するよう指示される。
- 休憩時間に労働していても、1時間ちょうど打刻させられる。
- 打刻後に残業を指示されても、打刻を修正してもらえない。
会社には、労働時間を把握する義務があるため、いずれの行為も不適切な方法です。定時打刻されたタイムカードを前提にして残業代を支払わないことは、労働基準法違反となります。タイムカードの定時打刻が長年行われてきた会社では、未払いの残業代は相当高額になることもあり、請求すればまとまった額の獲得が期待できます。
不正な打刻が横行するのは、労働者が明確に拒絶しないことも要因の一つです。雰囲気に流され、「サービス残業は当たり前」という意識では、ブラック企業の思うままになってしまいます。残業代に未払いがあるなら、正当な対価として当然に請求すべきです。
「サービス残業の違法性」の解説

ブラック企業がタイムカードを定時で打刻するよう強制する理由

違法なのは明らかなのに、なぜ、タイムカードの打刻の強制が起こるのでしょうか。次に、ブラック企業がタイムカードを定時で打刻するよう強制する理由を解説します。
残業の証拠を隠したいから
タイムカードを定時で打刻するよう強制するのは、残業の証拠を隠したいからです。タイムカードを押した後も残業をさせれば、証拠上は、タダ働きをさせることができます。
タイムカードを強制的に切ったところで、その後も働いているなら残業があることは明らかです。しかし、客観的な証拠に残らなければ、社外の第三者にとっては残業があることに気付けません。特に、労働審判や訴訟といった裁判手続きで残業代を請求されたとき、裁判所では、証拠のない事実は認定されません。また、労働基準監督署の立入検査を受けたときも、違法な残業実態があるかどうかは証拠をもとに判断されます。
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残業していない証拠を作りたいから
定時にタイムカードを打刻させれば、「残業した証拠がない」というだけでなく、むしろ「残業をしていない証拠」を作り出すことが可能です。その結果、いざ残業代の請求を労働者からされたとしても、会社に有利な証拠を手元に用意することができます。
タイムカードは、残業代のトラブルにおいて重要度の高い証拠とされます。たとえ嘘の証拠でも、一度形に残ってしまうと、後から「実態と反している」「虚偽である」と証明するのは困難です。しかも、労働者が自ら打刻しているなら、(たとえ強制によるものだとしても)形式上は、自らその時刻に退社したと認めていると評価され、覆すのには相当な苦労を要します。
タダ働きさせたいから
残業代を払わずに働かせれば、労働力をタダで利用することができます。その分の人件費が節約でき、会社の利益を増やすことができるのです。
タイムカードを定時に押させた後に働くよう命じても、一定数の労働者は従ってしまいます。職場の人間関係を悪化させたくないという意識が働くからです。自発的に労働する人がいることは、さらに社内の空気に影響します。また、嫌になった人は早々に辞めていくでしょう。
しかし、あきらめてはいけません。泣き寝入りせず、徹底して残業代を請求すれば、会社の不適切なやり方を露見させ、不当な利益を手元に残さないようにできます。
「残業代請求に強い弁護士に無料相談する方法」の解説

タイムカードを定時で押させられた時の対処法

最後に、タイムカードを定時で打刻させられるケースの対処法を解説します。
タイムカードを定時で押させるのは、企業の利益のためであり、決して労働者のためではありません。定時で打刻後、すぐ帰れるならよいですが、そうもいかない場合が多いでしょう。
違法な業務命令には従わない
労働者は、雇用契約を結ぶと、業務命令には従わなければなりません。正当な理由なく命令を無視したり、違反したりすれば、懲戒処分の対象となり、悪質な場合は解雇されてしまいます。
しかし、違法な業務命令に従う必要がなく、拒否する正当な理由があります。定時にタイムカードを打刻させる命令も違法であり、拒否すべきです。

「懲戒処分の種類と違法性の判断基準」の解説

プレッシャーに負けず断固拒否する
ブラック企業では、在職中に対抗すると、問題社員扱いされることもあります。その結果、会社側から嫌がらせをされることも珍しくありません。社長による妨害のほか、上司や同僚からの嫌がらせもあり得ます。しかし、社内でいじめ、パワハラに遭っても屈してはならず、拒否すべきです。定時で打刻するよう命じられても、違法な命令に従ってはいけません。
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タイムカードを打刻したらすぐ定時で帰宅する
拒否してもタイムカードを定時に打刻させられてしまう場合もあります。このとき、タイムカードを打刻したらすぐ帰宅することを徹底しましょう。つまり、定時出社・定時帰りを貫くのです。タイムカードを打刻した時間に帰宅すれば、未払い残業代は発生しません。本来、タイムカードは仕事を終えた時間に押すのがルールであり、その通りに運用することに問題はありません。
「残業代が出ないから帰る」の解説

退職する
タイムカードを打刻せざるを得ないなら帰宅すれば、違法なサービス残業は抑止できますが、残業代は得られなくなります。生活に不安が残る方もいるでしょう。問題ある会社で反発すると、打刻の強制に応じて従順に働く社員より評価を下げられる危険もあります。
ブラック企業に屈する必要はないものの、貢献し続けるのも考えもので、退社する覚悟を決めるべきケースもあります。退職時には、これまでの未払い残業代は必ず請求しましょう。
「会社の辞め方」「退職したらやることの順番」の解説


タイムカード以外の証拠を用意する
残業をしたと証明するための証拠は、タイムカードだけに限られません。タイムカード以外の証拠で労働時間を認定した裁判例も多くあります。
タイムカード以外の証拠を、労働者側で保全しておけば、残業代請求の準備ができます。今すぐでなくても、退職時に請求したいなら事前の準備は不可欠です。
タイムカードが重要視されるのは、客観的な証拠だからです。これに対し、労働者が作るメモ、証言などは主観的であり、証拠としての価値は低いです。とはいえ、タイムカードが真実と異なるなら、他の証拠を積み重ねなければなりません。一つでは価値が小さくても、同様の証拠資料が多くそろえば、タイムカードを覆すことができます。
「残業代請求で必要な証拠」の解説

【まとめ】定時打刻の強制

今回は、タイムカードの不正打刻のうち、定時打刻の強制について解説しました。
定時打刻を強制されても、断固として拒否すべきです。タイムカードが実態を反映しないとき、労働者が正確に残業代を計算して請求すれば、会社に強く改善を促すことができます。
定時に打刻しても、その後も働いていたなら、対価を受け取る権利があります。むしろ「毎日00分ちょうどに帰宅する」というのは不自然でしょう。残業代は、労働の正当な対価であり、請求を躊躇する必要はありません。周囲に合わせて定時打刻に協力する必要も全くありません。
残業代の証拠としてタイムカードが役立たないとき、他の証拠を早めに入手しておく必要があります。残業代請求を検討している方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
- タイムカードを定時で打刻するよう強制するのは、不適切な扱いである
- タイムカードを押した後、さらに労働していたなら、違法な残業代未払い
- 定時での打刻は必ず拒否し、どうしても押さなければならないならすぐ帰る
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