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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。
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セクハラ発言を一覧で紹介!具体例を交えてわかりやすく解説

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

不当解雇、残業代、セクハラ、パワハラ、労災などの労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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セクハラ発言は、悪意なく交わされる言葉がきっかけで起こる例も少なくありません。

自覚のない発言が、被害者に深刻な苦痛を与えることがあります。「どのような言葉がセクハラ発言になるか」を理解しておかなければ、気付かないうちに被害者にも加害者にもなってしまいます。近年、セクハラが社会問題化し、慰謝料請求の訴訟や刑事事件に発展する事例も相次いでいますが、始まりは何気ない一言であることも少なくないのが実情です。

セクハラ発言による被害を防ぐには、すぐに指摘できるよう、また、無意識のうちに加害者にならないよう、どのような言葉が問題となるかを具体的に知る必要があります。

今回は、セクハラ発言を一覧で分かりやすく整理し、該当するかどうかを判断できるよう具体例を示しながら、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 身体的接触がなく、発言のみだと軽視されがちだが、違法なセクハラである
  • セクハラ発言には様々な種類があるが、グレーゾーンの判断が重要である
  • セクハラ発言となる言葉の具体例を知ることが、セクハラの防止につながる

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目次(クリックで移動)

セクハラ発言とは

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、相手方の意に反する性的な言動や嫌がらせによって不快感や精神的苦痛を与える行為を指します。

セクハラには様々な形態がありますが、最も多いのが言葉によるセクハラ、つまり、セクハラ発言です。セクハラというと、身体的な接触を伴う行為を想像しがちですが、言葉だけでもセクハラになり得ることを理解しておく必要があります。

セクハラ発言を軽視すると、損害賠償請求や刑事事件となり得る重度のセクハラに発展するおそれがあります。発言の段階で問題を認識し、深刻化する前に対処することが重要です。

以下では、セクハラ発言の基本的な知識と、その重大性について解説します。

セクハラ発言を軽視してはいけない

セクハラにあたる言動には、発言によるものと、具体的な行動を伴うものがあります。

ボディータッチや肉体関係の強要など、行動を伴うセクハラが不適切であるのは明らかですが、セクハラ発言は「言葉だけだから」と軽視されることも少なくありません。

しかし、セクハラ発言は、決して「軽度」とは言い切れません。むしろ、加害者が無意識のまま行いやすいため対策が難しいという特徴があります。また、被害者自身もセクハラ発言だと気付かないまま精神的なダメージを蓄積してしまうケースがあります。

たとえ発言だけでも、継続的かつ執拗に繰り返されれば、不快感は増大し、被害者に与えるストレスや負担は決して無視できるものではありません。セクハラ発言は、重大な人権侵害となり得る行為であることを認識すべきです。

セクハラ発言の被害者は女性に限らない

セクハラとして問題視される被害は、男性から女性へのものが多いです。

しかし、セクハラ発言では、女性だけでなく、男性も被害者になります。同性間の性的な言動やLGBTに対する性差別的な発言も、セクハラに該当します。行動を伴うセクハラでは、力の強さが問題となるのに対し、セクハラ発言であれば、性別や力の差に関係なく被害を生じさせることができます。いわば「言葉の暴力」であり、誰しもが被害者にも加害者にもなり得ます。

特に、性的マイノリティに対する偏見や固定観念に基づく発言は、発言者が無自覚のまま行っているケースが少なくありません。

「セクハラ問題に強い弁護士」の解説

セクハラ発言になる言葉の例【一覧】

次に、セクハラ発言となる言葉について、具体例を交えて解説します。

些細に思える言葉も、状況や関係性、頻度によってはセクハラ発言と判断されます。発言集・事例集として一覧で紹介するので、自身の言動や状況を確認する際の参考にしてください。

執拗に食事へ誘う発言

上司と部下、同僚同士など、職場で食事に誘う機会は珍しくありませんが、誘う際の何気ないやり取りがセクハラ発言になることがあります。「社内の人間関係を円滑にするためだ」「性的な意図はない」と反論しても、特定の相手を繰り返し誘うことはセクハラになりやすいです。

例えば、次のような発言がセクハラになることがあります。

  • 「仲良くなるために、毎日一緒にランチに行こう」
  • 「ディナーデートに行こうよ」
  • 「2人でゆっくりしたいな」
  • 「しっぽり一杯いこう」
  • (断られても)「いつなら行ける?」
  • (夜遅くに)「今から食事行かない?」
  • 「○○ちゃんは特別にランチおごってあげる」

誘われる側にとっては「性的な意図があるのでは」といった不快感の原因になり得ます。善意のつもりでも、特別扱いをすることは「見返りを期待されている」「下心がある」といった印象を持たれ、セクハラと受け取られやすい点に注意しなければなりません。

執拗にデートへ誘う発言

社内恋愛や社内結婚そのものが問題とは限りませんが、相手が嫌がっているのに好意を押し付けるのはセクハラに該当します。例えば、次のような発言は、セクハラになることがあります。

  • 「土日どっちか空いてたら会わない?」
  • 「今度、温泉デートしよう」
  • 「嫁に内緒で泊まりにいかない?」
  • 「俺とかどう?タイプじゃない?」

泊まりを前提とした誘いは、性的関係を連想させるため、セクハラ発言となりやすいです。既婚者だと不倫になるため、社内の人との交際やデートそのものが不適切です。社長や上司などの上位者からの誘いは拒否しにくく、エスカレートしやすいため、問題視される傾向にあります。

ボディータッチを伴う声かけ

親しさを理由にした馴れ馴れしい接触も、セクハラ発言に該当する場合があります。

  • (肩を組みながら)「ねぇねぇ、○○ちゃん」
  • (狭いスペースで)「ちょっと後ろ通るね」
  • (つつきながら)「ねぇ、聞いてる?」

「反応がなかったから」「後ろを通りたかっただけ」といった反論を聞くことがあります。しかし、言葉でも伝えられる状況で、あえて接触することは不要であり、ボディータッチの回数が不自然に多いと「わざと触っている」と受け取られても仕方ありません。

加害者側は「仲が良い」と感じていても、被害者が合わせてくれていたり、愛想よく振る舞っていたりするだけの可能性も大いにあります。

性的な内容を尋ねる質問

性的な内容を異性に執拗に質問する行為は、セクハラ発言になります。

  • 「最近、いつエッチしたの?」
  • 「初体験はいつ?早い?」
  • 「もしかしてまだ処女なの?」
  • 「彼氏とどんなエッチしてるの?」
  • 「ちゃんと子作りに励んでる?」

質問形式の発言は、命令口調よりも柔らかく感じ、問題意識を持てない人もいます。しかし、軽い冗談のつもりでも、答えたくないことを質問されるのは不快であり、精神的苦痛につながります。

宴会・飲み会での卑猥な発言

飲酒をすると、下世話な話題や卑猥な発言で盛り上がることがあります。しかし、時と場合を弁えるべきであり、職場の関係者がいるなら配慮は不可欠であり、出すべきでない話題もあります。

  • 下ネタばかり話す
  • 宴会の余興で裸芸を強要する
  • (職場の人のいる席で)「昨日の夜、ワンナイトラブしてさ」
  • 「マッチングアプリで遊んでるよ」
  • 「この後2人でホテルに行こうよ」

女性がいる職場では特に、卑猥な発言は不適切であり、セクハラ発言になりやすいです。その場の空気に合わせて笑ってくれたとしても、居心地の悪さを我慢している方は少なくありません。アルコールを理由にしても、セクハラ発言は正当化されないので注意してください。

「飲み会でのセクハラ」の解説

職場での下ネタ発言

職場は仕事をする場であり、性的な話題を持ち込むのは不適切です。

私語や無駄話が全く許されないわけではないものの、異性にとって不快な言葉や話題は、セクハラ発言になるおそれがあります。

  • 皆の前で下ネタを話す
  • 「昨夜は一晩中激しくてさ」
  • デスクにグラビアポスターを貼る
  • セクシーなフィギュアを席に置く

職場で公然と、性生活を赤裸々に語ったり、卑猥な発言をしたりすることは、男女いずれでもセクハラ発言に該当します。無意識のうちにセクハラ被害を生みやすいため、注意が必要です。

性的な噂話を広める発言

性的な噂を流したり、中傷したりする行為は、嫌がらせの意図が明確であり、違法なセクハラです。痴情のもつれや嫉妬心から、報復を目的として行われるケースもあります。

  • 「あの人、浮気しているらしい」
  • 「社内で手を出してると聞いた」
  • 「二股をかけているらしい」
  • 「淫乱」「ビッチ」「酔えば簡単にヤらせてくれる」

社内に悪評が広がると、被害者は職場にいづらくなるでしょう。セクハラであると同時に、「職場いじめ」に該当するおそれもあります。

性的な魅力を強調する発言

表面上は褒め言葉であっても、性的な視点での評価はセクハラ発言になります。「相手も好意があるから」「褒めているだけだ」と言い訳をしても、職場の関係では不快感を与えやすいです。

  • 「かわいい」「きれい」
  • 「色気がある」「セクシーだね」
  • 「グラマー」「出るとこ出てるね」「スタイル最高」
  • 「いい匂いがするね」
  • 「触りたくなる髪だね」

社長や管理職といった上位の立場にある人は、職場で求められるのは「外見」ではなく、「業務」に関する評価であることを忘れてはいけません。

性別や年齢を過度に指摘する発言

性別や年齢をことさらに指摘すると、セクハラ発言になってしまいます。

自身の年齢を気にする人は多く、性別の差も相まって「女性だから活躍の機会がないのではないか」と不安を抱く人もいます。次のような発言は、セクハラになります。

  • 「若い女のくせになかなかやるね」
  • 「女みたいな根性なしだな」
  • 「女のくせになまいきだ」「男のくせにまったく力がないな」
  • 「そろそろはらまないと、高齢出産になっちゃうよ」

性別に対して特定の役割や固定観念を押し付ける発言は、「ジェンダーハラスメント」に該当することもあるため、くれぐれも注意が必要です。

外見や身体的特徴への言及

外見や身体的特徴は、本人の努力では変えられないものが多いです。そのため、ことさらに取り上げる発言は、不快感や屈辱感を与えるおそれがあり、セクハラ発言に該当します。

  • 「口臭がする」「臭い」
  • 「○○菌がうつる」
  • 「貧乳」「ペチャパイ」「牛みたいな乳」
  • 「スリーサイズ教えて」
  • 「おっぱい大きいね、何カップ?」
  • 「安産型でよかったね」

身体的特徴について性的に評価する言葉を受けると、人格を否定されたと感じやすいです。気にしているかどうかは人によりますが、触れないのが無難です。

容姿や服装に言及する発言

容姿や服装に執拗に言及する言葉はセクハラ発言となります。

容姿や服装は外見の一部であり、本人の趣味や価値観が反映されます。社会人として常識的な範囲内にとどまる限り、職場で指摘すべきではありません。たとえ容姿や服装を褒める意図があっても、相手が不快に思う可能性は大いにあります。

  • 「スカート短すぎない?パンツが見えそうだよ」
  • 「胸を強調してるの?」
  • 「おめかししてるけど今夜デート?」
  • 「肌荒れひどいけど、寝てないの?」
  • 「最近肌つやがいいけど、彼氏と順調?」
  • 「メイクが濃すぎない?」

特に、女性の服装やメイクを性的な視点で評価する言葉は、セクハラ発言となりやすい傾向があるため慎重になるべきです。

異性に対する差別的な言葉

職場では、性別にかかわらず相手に敬意をもって接する必要があります。

俗語やスラングの中には、異性を貶める差別的な意味を含む言葉も多いため、安易に使用するとセクハラ発言になってしまいます。

  • 「おじさん」「おばさん」「ジジイ」「ババア」
  • 「デブ」「ブス」「ハゲ」
  • 「クソババア」「クソジジイ」
  • 「中年おやじ」「頑固親父」
  • 「お局さん」

冗談やあだ名のつもりでも、年齢や性別を理由にした呼称を付けると、差別的だと受け取られやすく、少なくとも職場では発するべきではありません。

私生活に踏み込む発言

公私の区別は明確にされるべきであり、プライベートな話題には慎重になるべきです。

私生活に関する発言の中でも特に、結婚、恋愛、性生活といったセンシティブな話題に触れると、セクハラ発言となりやすい傾向があります。

  • 「昨日嫁と一発やってさ」
  • 「今まで相当遊んできたから」
  • 「彼氏いるの?」「毎晩してるの?」
  • 「いつ結婚するの?」「まだ結婚しないの?」
  • 「30歳すぎて独身なんて、どこか問題あるんじゃない?」
  • 「出産の予定はあるの?」

相手の性生活を詮索する発言だけでなく、自分の性生活をひけらかす発言も、聞く人に不快感を与えるため、セクハラに該当するおそれがあります。

「会社のプライベート干渉の違法性」の解説

性的な冗談、性的ないじり

冗談やいじりは人間関係を円滑にする側面もありますが、性的な視点を含むからかいになると、セクハラ発言として問題視されます。

  • 「イライラしてるけど、生理?(笑)」
  • 「その説教は更年期障害だな(笑)」
  • 「俺と性欲発散しない?(笑)」

「冗談だった」「笑わせたかった」といった意図があったとしても、セクハラ発言を正当化する理由にはなりません。

ちゃん付け・くん付けなどの呼称

職場の人間関係は友人とは異なり、過度にくだけた呼び方は不適切です。

女性社員への「ちゃん付け」、男性社員への「くん付け」は、敬意を欠く呼称であり、相手を軽んじていると受け取られかねません。次のような発言は、セクハラに該当します。

  • ちゃん付け、くん付けをする
  • 「事務のおねーちゃん」
  • 「お茶くみの女の子」

職場で異性を呼ぶとき、上司・同僚・部下を問わず、原則として「さん付け」とするのが望ましいです。過去には許された発言も、現在では男尊女卑的な価値観を想像させるとして問題視されることが多く、世代間ギャップがセクハラ発言を生む原因となっています。

「職場の男女差別の例と対応方法」の解説

性的指向・性自認をからかう発言(SOGIハラ)

近年では、性的指向や性自認に関する不適切な言動が「SOGIハラ」と呼ばれ、セクハラの一部として問題視されています。例えば、次のような発言は、個人の尊厳を深く傷つけます。

  • 「男のくせに女みたいだ」
  • 「あいつはゲイらしいぞ」
  • 「まだ女性に興味が持てないのか」

本人が公表していない性的指向や性自認を、同意なく第三者に暴露する「アウティング」も、重大なハラスメントです。性的マイノリティの方が身近にいないと思い込み、職場の雑談でからかいの対象にすることは避けるべきです。

特定の属性を冷やかしたり、勝手な憶測で決めつけたり、偏見を示したりする発言は、職場環境を著しく悪化させる原因となってしまいます。

職場におけるセクハラ発言の種類

セクハラは、主に対価型セクハラと環境型セクハラの2種類に分類されます。

セクハラ発言も、このいずれか、または両方に該当する形で問題となることが多く、発言の内容だけでなく、発言された状況やその影響も重要な判断要素となります。

以下では、それぞれの特徴と、どのように分類されるかについて解説します。

対価型のセクハラ発言

対価型セクハラとは、労働条件や人事評価などの点で、性的な言動を受け入れることを条件に利益を与えたり、拒否したことを理由に不利益を与えたりする行為です。セクハラ発言も、その裏に見返りを求めるような言葉が含まれる場合、「対価型セクハラ」に該当します。

  • 「付き合ってくれたら評価を上げる」
  • 「デートを断るなら、昇進は難しいな」
  • 「飲みに来ないなら、この仕事は任せられない」

対価型のセクハラ発言は、社長や上司などの上位者から行われると、直接的な命令でなくても、被害者がプレッシャーを感じて従ってしまうケースは少なくありません。

環境型のセクハラ発言

環境型セクハラとは、性的な言動によって職場環境を悪化させる行為です。

セクハラ発言の多くは、この環境型セクハラに該当します。特定の相手に直接向けられた発言でなくても、繰り返されることで周囲の人の労働環境に影響を与える点が特徴です。

  • 職場で繰り返される下ネタ発言
  • 性的な噂話を広める発言
  • 容姿や身体的特徴を話題にする発言
  • 性的な冗談やからかい
  • ちゃん付け・くん付けなどの呼称

環境型のセクハラ発言は、一つひとつは些細に見えて、繰り返されることで労働環境が悪化し、ストレスから業務に集中できなくなったり、職場に居づらくなったりします。

セクハラ発言の判断基準(どこからがセクハラ発言になるか)

セクハラ発言かどうかは、その言動が労働者の意に反するかが重要な基準となります。

発言者が「冗談のつもりだった」「悪気はなかった」と考えても、その発言を受けた人の意に反する性的な言動であれば、セクハラに該当します。

ただし、受け手が不快であれば直ちにセクハラになるとは限りません。受け手の主観を重視しつつ、一般的な労働者であればどう受け止めるかという客観面も考慮されます。被害者が女性であれば平均的な女性労働者、男性であれば平均的な男性労働者の感じ方が基準となります。

また、発言の内容だけでなく、発言者と相手の関係、発言された場面、頻度や継続性なども重要です。例えば、社長や上司のように拒否しにくい関係で、嫌がっているのに何度も性的な発言を繰り返した場合、セクハラと判断されやすくなります。また、明確に拒否や抗議を受けた場合や、強い精神的苦痛を与えた場合、一度でもセクハラになり得ます。

したがって、「一回だけなら問題ない」「冗談ならセクハラにならない」といった考えは誤りであり、発言の内容、相手の受け止め方、職場での関係性、繰り返しの有無などを総合的に見て判断することが重要となります。

【加害者側】セクハラ発言を防ぐ方法

セクハラ発言によるトラブルは、悪意がなくても、無自覚・無意識で起こるケースが多いです。セクハラ発言を防ぐには、事後対応よりも予防の意識が重要です。

以下では、自身が加害者とならないために知るべき、セクハラ発言を防ぐ方法を解説します。

セクハラ発言のグレーゾーンを把握する

セクハラ発言は、どこからが違法なのか、境界が曖昧になりやすい特徴があります。

身体的接触があれば、「触ったらセクハラ」と明確に判断できますが、セクハラ発言は、同じ言葉でも、関係性や場面、頻度、立場によって評価が変わります(例:好きな人に言われれば嬉しい褒め言葉も、上司に言われればセクハラ発言になる)。つまり、違法とされるセクハラ発言の周囲には、広いグレーゾーンが存在しています。

しかし、グレーゾーンだからといって、境界線を狙った際どい発言をするのは極めて危険であり、そのような意識ではセクハラ被害を生んでしまいます。自分にセクハラの意図がなくても、「不快に思われる危険性はないか」を、相手の視点に立って考えることが重要です。

セクハラにならない言いかえ表現を知る

セクハラ発言を防ぐには、社会人として適切な言いかえ表現を身につけることが有効です。

明らかな性差別発言は別として、セクハラ発言の中には、言葉選びを少し変えるだけで問題を回避できるケースも少なくありません。例えば、次のポイントを意識してください。

  • 食事へ誘う場合は「みんなで食事に行きませんか」と言う。
  • 業務上必要な質問について、育休・産休などの理由を説明してから尋ねる。
  • 相手の評価は外見や容姿ではなく、仕事ぶり・成果・努力・姿勢を褒める。
  • 特定の性別にしか通用しない表現は避ける。

発言に伴う行動にも配慮が必要です。用件があるからといって身体に触れたり、距離を詰めたりするのではなく、正面に立ち、言葉で伝え、相手の反応を尊重する姿勢を心がけましょう。

セクハラ発言は、意図の有無にかかわらず成立するので、自分がどう思って発言したかではなく、「相手がどう受け取ったか」「職場環境にどう影響したか」を意識して行動してください。

「セクハラで訴えられたら?」の解説

【被害者側】セクハラ発言を受けたときの対処法

次に、セクハラ発言を受けたとき、被害者側が取り得る対応について解説します。

セクハラ発言の具体例を知れば、被害に気付くことができます。被害を受けてしまった場合、職場の人間関係が気になるかもしれませんが、我慢してはなりません。状況や程度、悪質さに応じて、次のような対処法を段階的に検討してください。

セクハラ発言を明確に拒否する

セクハラ発言の問題点として、加害者に自覚がないことが挙げられます。

そのため、早い段階で、「不快である」「やめてほしい」という意思を明確にし、加害者に気付かせることが重要です。セクハラ発言を放置していると、被害は加速し、「この人は性的な話題も大丈夫だ」というレッテルを貼られ、周囲にも無自覚なセクハラが広がるおそれがあります。

強く指摘しにくい気持ちは理解できますが、冗談っぽく伝えるだけでは真意が伝わらず、「ふざけ合い」と受け取られる危険もあります。上下関係や職場の雰囲気から直接伝えるのが難しい場合は、後述する社内窓口や弁護士を通じた対応も検討してください。

上司や人事部、社内窓口に相談する

加害者に直接伝えるのが難しい場合や、拒否してもセクハラ発言が止まらない場合は、信頼できる上司や人事部、社内のハラスメント相談窓口に相談するのが有効です。

社内窓口に相談したにもかかわらず、注意指導がされず、被害が放置されたり、相談したことを理由に不利益な扱いをされたりすれば、会社の対応が不適切です。この場合、次章の通り、安全配慮義務違反を理由として会社の責任を追及することができます。

なお、セクハラ発言は証拠に残りにくいため、できる限り録音するとともに、相談の際は、日時・場所・発言内容などをメモにまとめておくと状況を正確に理解してもらえます。

加害者と会社に慰謝料を請求する

セクハラ発言は、被害者の人格権や名誉を侵害し、精神的苦痛を与える違法行為です。

社内での話し合いや相談で解決しない場合、法的な手段での解決を検討してください。セクハラ発言が不法行為(民法709条)である場合、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できます。性的関係を強要されるなどして心身に不調を来した場合、治療費などの損害賠償の請求も可能です。

この際、直接の加害者だけでなく、会社の責任を問うことも可能です。セクハラ対策を怠り、相談を受けても放置していた会社には、安全配慮義務違反の責任が生じます。また、加害者によるセクハラ行為が事業の執行について行われた場合、不法行為の使用者責任(民法715条)も追及できます。

「セクハラの慰謝料の相場」の解説

社外の第三者機関を利用する

社内での解決が難しい場合、社外の第三者機関の利用を検討してください。

弁護士に相談する

セクハラ発言が法的に問題となるか、どのような対応が適切かは、弁護士に相談してアドバイスを得るのが賢明です。弁護士は、内容証明を送ることで会社に警告したり、慰謝料請求の交渉や裁判手続きを被害者に代わって進めることができます。加害者や会社との直接のやり取りをなくすことで、精神的な負担を減らせるメリットがあります。

「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

公的相談窓口に相談する

公的機関の相談窓口を利用することも検討してください。

セクハラ発言について相談できる代表的な窓口には、各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、総合労働相談コーナーなどがあります。重度のセクハラ被害による労災申請を行う場合は、労働基準監督署への相談も可能です。いずれも無料で相談できます。

犯罪行為として告訴する

発言にとどまるセクハラでも、内容や態様によって犯罪となることがあります。

例えば、名誉毀損罪(刑法230条)、侮辱罪(刑法231条)といった犯罪に該当します。執拗なセクハラ発言は、つきまとい行為としてストーカー規制法違反となるおそれもあります。刑事責任を追及する場合、警察に相談し、被害届の提出や告訴を行います。どの段階で刑事手続きを選択すべきかについて、事前に弁護士へ相談するのがおすすめです。

「犯罪になるセクハラの対応」の解説

セクハラ発言を防止するのは会社の義務

セクハラの防止は、法律上、事業主(会社)に課された義務です。

男女雇用機会均等法は、職場で行われる性的な言動によって、労働者が不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じることを求めています。措置の具体的な内容は、厚生労働省のセクハラ指針(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)に詳しく定められています。

セクハラ指針では、会社に対し、例えば次のような措置を講じることを求めています。

  • セクハラを許さない方針の明確化と周知
  • 相談窓口の設置と適切な運用
  • 相談があった場合の迅速・公正な調査
  • 被害者への配慮と不利益取扱いの防止
  • 再発防止のための教育・研修の実施

企業は、法律と指針に基づいて適切な対策を講じなければならず、これを怠り、セクハラ発言が放置された場合、加害者個人だけでなく、会社自体の法的責任も問題となります。

特に、言葉によるセクハラは、加害者が無意識に、しかも継続して行うケースが多いため、監視が難しい特徴があります。そのため、軽視せず、日頃から「セクハラ発言は絶対に許さない」という姿勢で指導、教育、啓発を行うことが重要です。

【まとめ】セクハラにあたる発言の一覧

弁護士法人浅野総合法律事務所
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今回は、言葉によるセクハラ、いわゆるセクハラ発言について一覧で解説しました。

セクハラ発言の被害に遭っている方はもちろん、「セクハラだと指摘されたが、本当に問題なのか分からない」と不安を感じている方も、判断の目安として参考にしてください。

セクハラ発言となる言葉を全て網羅するのは難しく、紹介した一覧もあくまで「氷山の一角」で、その周囲には、判断が分かれるグレーゾーンが存在します。一方で、セクハラ発言となる典型例を知っておけば、「無自覚に加害者になってしまった」「不快に感じているが、セクハラ発言かどうか判断できず我慢している」といったトラブルを未然に防ぐことができます。

セクハラ発言の被害を減らすには、発言者自身が、意図の有無にかかわらず相手に不快感や苦痛を与えるおそれがあることを理解し、日頃の言動に注意を払うことが重要です。セクハラ発言を放置すれば、より深刻なハラスメントや法的トラブルに発展するおそれがあるため、早い段階で弁護士に相談することを検討してください。

この解説のポイント
  • 身体的接触がなく、発言のみだと軽視されがちだが、違法なセクハラである
  • セクハラ発言には様々な種類があるが、グレーゾーンの判断が重要である
  • セクハラ発言となる言葉の具体例を知ることが、セクハラの防止につながる

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