MENU
浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。
★ 労働問題を弁護士に相談する流れは?

リモートハラスメント(リモハラ)とは?よくある事例と原因、対処法を弁護士が解説

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

不当解雇、残業代、セクハラ、パワハラ、労災などの労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

>>弁護士の詳細はこちら

リモートハラスメント(リモハラ)は、テレワークなどオンラインで起こるハラスメントです。

近年、働き方改革やコロナ禍の影響により、テレワークが急速に普及しました。法律上、パワハラの起こる「職場」はオフィスだけでなく、自宅で業務を遂行する場合はその場所も含まれます。オンライン上の言動も、直接対面した際と同じく、パワハラとして規制の対象となります。コミュニケーション不足がハラスメントの原因となるという、テレワーク固有の問題もあります。

具体的には、業務時間外の連絡の強要、オンライン会議で私生活を映させたり、容姿について指摘したりする行為が該当します。事業主(会社)には、リモートで起こるハラスメント行為についても、防止するために必要な措置を講じる義務があります。

今回は、リモートハラスメントの意味やよくある事例、被害を受けたときの対処法について、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • テレワークで起こるハラスメント問題を「リモートハラスメント」と呼ぶ
  • リモートハラスメントは証拠に残しにくいなど、テレワーク特有の難点がある
  • テレワーク中でも、ハラスメントが起こったらすぐ会社に報告することが大切

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)

リモートハラスメントとは

リモートハラスメントは、テレワークに伴って生じるハラスメントです。

在宅勤務などで起こるハラスメントが典型例で、リモハラ(リモートハラスメント)、テレハラ(テレワークハラスメント)などと呼ばれることもあります。メールやチャット、オンライン面談やウェブ会議といったオンライン環境で生じる、現代の新たなハラスメントです。

以下ではまず、リモートハラスメントの基本的な知識について解説します。

パワハラ型とセクハラ型がある

リモートハラスメントは、起こる場所がオフィスでない点を除いて、通常のハラスメントと変わりません。そのため、大きく分けて、パワハラ型とセクハラ型があります。職場における優位な立場を利用するものがパワハラ型、性的な要素を伴うのがセクハラ型と分類することができます。その他に、育児・介護に関するハラスメントや、マタハラ類似のものもあります。

リモートハラスメントは違法である

リモート環境下でも、ハラスメントの違法性の判断基準は変わりません。

パワハラは、労働施策総合推進法30条の2において、職場における優越的な関係を背景とした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超え、労働者の就業環境を害するものと定義されます。したがって、これに該当すればパワハラとなり、不法行為(民法709条)に該当する場合には慰謝料や損害賠償を請求することが可能です。

労働者は、リモートハラスメントが疑われる場合は速やかに会社に相談して対応を求めるとともに、誠実な対応がなければ責任追及を検討します。会社側としても、リモートだからといって甘く見ず、ハラスメント対策を徹底しなければなりません。

「職場」には業務を遂行する場所が含まれる

上記のパワハラの定義にいう「職場」は、オフィスを指すことが多いです。

しかし実際は、リモートハラスメントで労働者が業務を遂行する場所を含むため、通常就業しているオフィス以外でも、業務を遂行している限り「職場」に含まれます。したがって、テレワークにより自宅で業務を行っている場合は、自宅も「職場」に該当し、そこで受けた言動はパワハラに該当します。また、ウェブ会議やビジネスチャットなどのオンライン上での発言も、対面で行われるものと同じく、ハラスメントに該当する可能性があります。

リモートハラスメントの具体的な事例

厚生労働省では、典型的なパワハラを次の6つの類型に区分しています。

パワハラの6類型とは
  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害
パワハラの6類型とは
ハラスメントの類型と種類(あかるい職場応援団)

したがって、リモートハラスメント(リモハラ)の具体例を知るには、この類型のいずれに該当するかを考えるのが有益です。なお、性的な要素を伴うセクハラ型もあることに注意してください。「身体的な攻撃」のみ、物理的接触のないリモート環境では発生しませんが、その他のハラスメントはいずれも発生する可能性があると考えるべきです。

精神的な攻撃となるリモハラ

リモートハラスメントは、精神的な攻撃となるケースがあります。例えば、不相当な態様でメールやチャットを送る、オンライン会議の際に人格否定的な言動を浴びせる、メーリングリストで社内に誤った噂を流すといった例があります。

パワハラにあたる言葉一覧」の解説

人間関係からの切り離しとなるリモハラ

リモートハラスメントが、人間関係からの切り離しに該当するケースがあります。例えば、オンライン上のグループから排除する、特定の社員が参加できないチャットグループを作成する、ウェブ会議に誘われていない、特定の社員へのチャットのみ返信せずに無視するといった例です。

過大な要求となるリモハラ

リモートハラスメントでは、過大な要求が起こりがちです。例えば、業務時間外や夜遅い時間にメールやチャットに即答することを強要するのが典型例です。テレワークでは、業務中の監督がしにくいため、「サボっている」と思われてこのような圧力を受けることがあります。

個の侵害となるリモハラ

リモートハラスメントが個の侵害に該当することがあります。

例えば、不必要に頻繁なオンライン面談を設定する、部屋の様子を映すよう強要する、部下の容姿に言及するといった言動は、プライベートに過度に干渉する点で、違法なハラスメントとなります。部屋や容姿への指摘は、性的な要素を伴えばセクハラにもなります。

会社のプライベート干渉の違法性」の解説

リモートハラスメントが起こる原因

次に、リモートハラスメント(リモハラ)が起こる原因について解説します。

リモートハラスメントは、柔軟な働き方が普及することで、オンライン環境に特有の要因が重なり合って引き起こされることが少なくありません。

コミュニケーションの希薄化

リモートワークでは、対面ほど円滑にコミュニケーションを取れないことがあります。

表情や声のトーンといった非言語情報が読み取れず、メールやチャットの文面では感情が伝わらないため、自覚のない言葉で、思いがけずパワハラの加害者となる事例は少なくありません。物理的な距離があることでコミュニケーションが希薄化した結果、過度な干渉や冷たい態度と評価され、行き違いからハラスメントを招きやすくなっています。

公私の境界線が曖昧になる環境

自宅を職場とするテレワークでは、仕事とプライベートの区別がつきにくくなります。

このことがリモートハラスメントにつながる例として、オンライン会議中に映り込んだ部屋の様子や同居する家族について不必要に言及すれば、プライバシー侵害となります。また、労働時間の管理が杜撰になり、深夜や休日でも業務連絡を強要されるトラブルも起こりやすくなっています。

業務管理への不安とルールの未整備

部下の仕事ぶりを直接目視できない管理職の不安が、ハラスメントにつながるケースもあります。「仕事をさぼっているのではないか」という疑心暗鬼から、常にカメラをオンにすることを求めたり、過剰な業務報告や即レスを求めたりするケースがその一つです。

会社として、就業規則やリモートワークの運用ルールを整備しないと、管理職個人の感情に任せ、過干渉や嫌がらせが生じやすくなってしまいます。

労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

リモートハラスメントを受けた場合の対処法

次に、実際にリモートハラスメントを受けた場合の対処法を解説します。

ハラスメントの程度にもよりますが、まずは証拠を集めて会社に相談することが適切です。しかし、会社が誠実に防止策を講じてくれない場合、社外への相談を検討してください。

リモートハラスメントの証拠を集める

リモートハラスメント(リモハラ)には、証拠を集めにくい行為が多く含まれています。

直接対面の場合に比べ、こっそりと行われることが多いからです。一方で、オンライン会議の録画、メールやチャットの保存といった手段で証拠を残せるケースもあります。特に、継続的にリモートハラスメントを受けている場合、証拠を残す工夫をしておきましょう。

  • リモハラをしてくる上司とのオンライン会議を録画しておく。
  • メールやチャットの履歴はバックアップを取っておく。
  • 電話などで問題となる発言があったときは、必ず録音しておく。
  • リモハラを受けた直後に内容をメモしておく。

リモートハラスメントの録音・録画により証拠を残すとき、加害者の同意は不要です。自身の参加している会話や会議であれば、相手の同意を得ずに行った「秘密録音」でも証拠になります。ただし、会議の内容に企業秘密が含まれる場合、情報漏洩には注意が必要です。

ハラスメント被害から時間が経過した後になって証拠を入手するのは困難なことが多く、できる限り早く着手しておくのが重要なポイントです。

パワハラの証拠」の解説

信頼できる上司に報告する

リモートハラスメントは、対面の場合に比べて気軽に相談しにくいことが多いです。

同じ職場で働いている場合、同僚や上司に不平不満を伝えやすいものの、テレワーク中だと、「軽い相談」「雑談」がしにくいためです。そのため、リモートハラスメントは我慢されやすいです。オフィス勤務中でも、人間関係の悪化を懸念して我慢する人は少なくありませんが、テレワーク中だとなおさら被害申告がなされず、対応が遅れてしまいがちです。

とはいえ、ハラスメントは、軽度のうちに対処し、悪化させないことが重要です。会社に早いうちに知らせれば、注意指導や懲戒処分などによって加害者に改善を求めることができます。したがって、リモートハラスメントを受けたら、信頼できる上司に速やかに報告しましょう。

このような相談は、リモート環境下だからこそ、メールやチャットなどの方法で行えば、相談した事実を記録に残すことができます。

会社のハラスメント相談窓口に相談する

労働施策総合推進法により、事業主(会社)にはハラスメント対策が義務付けられています。

その中でも、ハラスメントの相談窓口の設置が義務とされているため、窓口が周知されていない会社は違法の可能性があります。むしろ、テレワークを積極的に導入している会社では、その弊害としてリモートハラスメントが放置されないよう、相談体制を充実させるべきです。

相談されたのに適切に対処せず、社員の労働環境を悪化させた場合、会社にも責任があります。そこで、会社の責任を追及するためにも、相談窓口に連絡しておくことが重要です。

パワハラの相談先」の解説

弁護士に相談する

テレワークの導入には、会社側で相当な配慮が必要となります。

しかし、時代の流れに合わせて働き方を柔軟化させるという目的から、あまり深く考えずにテレワークを導入してしまった会社も少なくありません。このとき、会社が労働者に対して負う「安全配慮義務」を十分に果たせていないことがあります。

このように会社側の体制に不備があるケースのほか、社長が加害者であって社内の解決が難しいケースなどでは、社外の相談を検討すべきです。特に、次章のように加害者や会社の法的責任を追及するなら、弁護士への相談が適切です。

労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

損害賠償を請求する

リモートハラスメントは、パワハラやセクハラと同じく違法なハラスメントに該当します。そのため、直接の加害者に対して不法行為(民法709条)の責任を追及したり、会社に対して使用者責任(民法715条)や安全配慮義務違反の責任を追及したりすることができます。これらの法的根拠をもとに、リモートハラスメントによって受けた精神的苦痛について慰謝料を請求できます。

リモートハラスメントを防ぐための対策と注意点

最後に、リモートハラスメントを防ぐための対策と注意点について解説します。在宅勤務など、リモート環境下で起こるトラブルには特徴があり、防止策を講じる際にも注意が必要です。

テレワーク中でもハラスメント防止措置義務がある

事業主(会社)は、テレワーク時でも、ハラスメント防止措置を講じる義務があります。

ハラスメントのない安全な職場環境で働けるよう配慮することは会社の責任であり、これはオフィス出勤時に限らず、テレワーク時でも同様だからです。

具体的には、ハラスメント防止の方針を明確化し、就業規則などに規定を設けて労働者に周知・啓発すること、労働者からの相談に応じて適切に対応するための体制を整備し、相談しても不利益がないことを周知することといった対策が必要です。また、テレワーク勤務規程を作成して、オンライン上の言動もパワハラに含まれることを明記しておくのがおすすめです。

テレワークの禁止がパワハラになる場合もある

働き方改革やコロナ禍の影響で、テレワークの積極的な活用が推奨されています。

労働者にとって働きやすい職場となるだけでなく、企業にとっても業務効率が上がるメリットがあります。「テレワークでは対応できない業務である」といった理由がないのに、他の労働者と差別的に扱い、リモートを禁止することは違法なパワハラになる可能性があります。特に、正社員と非正規の不合理な待遇差は、パートタイム・有期雇用労働法で禁止されています。

例えば、次のような扱いが問題視されるケースが見られます。

  • 特定の社員のみ、合理的な理由なくテレワークが禁止される。
  • リモートワーク前提で雇用されたのに、原則出社であると言われた。

これらのトラブルも、リモートワークが普及した現代になって新たに生じた労働問題です。

テレワークで長時間労働を強要される場合

在宅勤務は、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、長時間労働となりやすいのが実情です。

会社にとっても労働時間を把握しにくいことから、適正な管理がされないまま残業代が未払いとなっているケースは少なくありません。しかし、テレワーク中でも労働時間を把握・管理する会社の義務が免除されることはなく、残業代の未払いや長時間労働は違法となります。

労働者としては、プライベートの時間と区別して業務時間を証拠に残し、未払い残業代がある場合は会社に請求すべきです。なお、事業場外みなし労働時間制(労働基準法38条の2)は「労働時間を算定し難いとき」に認められる制度であり、労働時間の把握が可能なときには適用できません。昨今のテレワークは、電話会議やチャットシステムなどでコミュニケーションを取ることで、労働時間の把握が可能であるケースが多いと考えられます。

【まとめ】リモートハラスメントについて

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、急速に広がるテレワークの影響で増加するリモートハラスメントについて解説しました。

リモートハラスメント(リモハラ)は、在宅勤務、リモートワークといった就業形態において生じるハラスメントであり、場所が自宅でも、職場におけるハラスメントに該当します。したがって、事業主(会社)には、リモートハラスメントを防止するための対策を講じる義務があります。

例えば、業務時間外の連絡やプライバシーへの過度な干渉といったリモート特有の問題点に留意しながら、就業規則の整備、教育・研修の実施、相談窓口の設置といった措置が必要となります。これらの防止策は、対面で起こるハラスメントと同様です。

リモート時に受けた言動が、業務上の必要性がなく、社会通念上許容される範囲を超えている場合、違法なハラスメントとなります。リモートハラスメントの疑いがある場合、被害を抑止するため、早い段階で弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • テレワークで起こるハラスメント問題を「リモートハラスメント」と呼ぶ
  • リモートハラスメントは証拠に残しにくいなど、テレワーク特有の難点がある
  • テレワーク中でも、ハラスメントが起こったらすぐ会社に報告することが大切

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)