仕事中の離席が多いと、「サボっている」と評価される懸念があります。
実際、業務時間中に席を離れている時間が長かったり、離席回数が多かったりすると、上司から注意を受けたり、人事評価が低下したりすることもあります。とはいえ、始業から終業まで、常にデスクに向かい続けていることは現実的に不可能でしょう。息抜きやトイレなど一定の休息は不可欠で、あまりに長時間のデスクワークは、業務効率が下がる要因ともなります。
一方で、どの程度の回数や長さの離席が問題視されるのか、注意の対象となるのかについて、法律上の明確な基準はありません。体調不良や業務上必要な離席などもあるため、「席を離れている=仕事をしていない」とも断言できません。
今回は、仕事中に離席が多い場合に、注意される基準と、トラブルを防ぐための対処法について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 仕事中の離席が多いと「サボり」と見なされ、低評価や注意の対象とされる
- 「離席が多い」と評価される回数や時間に、法律上のルールはない
- 業務に支障が生じる離席は許されない一方、体調不良や休憩には配慮が必要
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仕事中に離席が多いと注意される?

仕事中に離席が多いと注意される可能性があります。
ただし、問題になるかどうかは個別の事情によっても左右され、「離席が多い」というだけで直ちに違法となったり、処分の対象になったりするわけではありません。実務上も、まずは注意指導によって改善されるかを見極めなければ、不当な処分となるおそれがあります。
一方で、離席による業務への支障や、周囲への影響が顕著な場合、正当な理由がない離席は「サボり」と判断され、低く評価される原因になりかねません。
法律上の明確な基準がないからこそ、上司や会社の感情に影響されやすい場面でもあります。そのため、適切な労務管理がなされているかに十分注意してください。
離席が多いと判断される回数・長さの基準

始業から終業まで、離席を全くせずに仕事を進めるのは困難でしょう。ある程度の離席は不可欠であるとしても、回数や頻度が高いと「離席が多い」と評価されます。
以下では、離席が多いと判断される回数・長さの基準を解説します。
法律上の明確な基準はない
法律上「何分以上」「何回以上」の離席は許されないといった明確な線引きはありません。
就業規則で離席のルールを設ける会社もありますが、不当な制限は許されません。例えば、生理現象であるトイレを制限したり、離席回数を制限することでストレスを与えたりすることは、安全配慮の観点からも問題があり、公序良俗違反として無効になります(民法90条)。
業務への支障の有無が判断基準となる
一方で、業務に支障が生じるような離席は、不適切であると判断されます。
例えば、次のようなケースでは、仕事中の離席に対して厳しい評価が下される可能性があります。就業規則に基づいて注意指導、懲戒処分の対象となるほか、改善が見られず繰り返されると、最悪の場合は解雇が検討されます。
- 離席によって業務が滞っている。
- 上司とのコミュニケーションが不足して対応漏れが起きている。
- 周囲の社員が離席した人の業務のフォローで残業している。
離席の理由によっても判断が異なる
仕事中の離席が許されるかどうかは、回数や時間だけでなく、理由によっても判断が異なります。
例えば、体調不良や持病などの健康上の理由で離席が多くなるなど、理由があるなら、労働者に配慮しなければならない場合もあります。一方で、何となく離席している、私用のスマホや雑談、喫煙などのために離席しているといった場合は問題視されやすいです。
理由が説明できるかどうかも、会社の判断において重要になるため、離席について注意を受けたら、正確に事情を説明しましょう。
仕事中の離席が多いとなぜ問題?注意される理由

仕事中の離席が多いとなぜ注意されるのか、会社側の理由も知っておきましょう。
業務時間中は職務に専念する義務(職務専念義務)を負っているため、離席が多く、仕事をしていないとみなされる社員は、業務に集中できていないと評価されます。
サボっていると疑われる
仕事中の離席により、「サボっている」と疑われて注意されるケースは珍しくありません。
実際は任された業務を滞りなくこなしていても、離席していることで「仕事をしていない」と誤解されやすくなります。特に、成果が目に見えづらい間接部門の仕事で、その傾向が顕著です。サボっていると誤解されると、評価や信頼の低下につながり、トラブルに発展する危険があります。
周囲との不公平感が生まれる
仕事中の離席が多いと、実際に働いている時間は他の社員と比べて短くなります。
チームで仕事している場合、他の社員の負担が増えるため、不公平感や不満を抱かれてしまいます。「あの人だけ自由でズルい」といった不満は、他の社員のモチベーション低下を招きます。会社が注意せず、対策を講じなかった場合、周囲の社員の不満は、会社への不信感につながります。
このような不公平感の解消のため、会社としては離席が多いことを理由に人事評価を低くしたり、昇給や昇格を見送ったりといった対策を講じることとなります。
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業務効率や生産性が低下する
仕事中の離席が多いと、当然その間は業務が中断することになります。
本来であれば終わるはずだった業務が終わらないなど、効率の低下につながってしまいます。一度離席すると、戻ってきてもすぐに作業を再開できないことも多いものです。また、会社では複数の社員がチームで業務に当たっているため、一人の社員が離席すると、部下の指示待ちや上司の決裁待ちなどが生じ、さらに生産性が低下する要因となります。
上司とのコミュニケーションが不足する
仕事中の離席が多いと、上司とのコミュニケーションが不足します。
正確な状況が把握できず指示が出せない、報連相が足りていないと評価されるなどの弊害に注意が必要です。また、すぐに相談したり指示したりできない状態は、重要な業務を任せてもらいにくくなり、結果的に評価の低下につながってしまいます。
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顧客対応の機会を逃す
仕事中の離席が多いと、電話や来客対応に支障をきたし、クレームや機会損失につながります。取引先や顧客と接する機会が多い接客・営業職では大きな不利益となります。
仕事中の離席に関する法的な考え方

仕事中の離席について、法律に明確な基準はないものの、職務専念義務の観点から、違法となりやすいケースがあります。以下では、離席に関する法的な考え方について解説します。
労働者には職務専念義務がある
前提として、労働者には職務専念義務があります。
これは、所定の労働時間の間は、会社の業務に専念すべき義務のことであり、その対価として会社からは賃金が支払われています。したがって、始業から終業までの間、適切な残業命令があった場合は残業時間の間は、業務以外のことを行ってはなりません。
仕事中に、業務と無関係な離席を繰り返す行為は、この職務専念義務の観点から問題となります。なお、法律上の義務である休憩や、常識の範囲内の離席はこの限りではありません。
違法になりやすい離席の具体例
前述の職務専念義務の観点から、次のような離席は違法になりやすいです。
- 業務を放置して長時間離席している場合
- 離席によって会社の不利益を生じさせた場合
- 私用のスマホや雑談などで離席をしている場合
- 注意指導を受けても改善せずに繰り返している場合
個別の事情によっても異なるものの、業務に重大な支障を生じさせてしまうような離席は、違法と判断される可能性があります。また、会社としてはこのような離席を防ぐため、注意指導や懲戒処分の対象とすることが許されます。
認められやすい離席の具体例
一方で、相応の理由があれば、仕事中の離席もある程度は認められます。例えば、ある程度は認められる離席には、次のような具体例があります。
気分転換が必要となる場合
細心の注意を払って臨むべき業務である、長時間労働であるためリフレッシュが必要など、仕事中でも気分転換を要するケースは少なくありません。10分ほど席を外して飲み物を買いに行くなど、常識の範囲内で短時間の離席をすることは、許容されやすいのが実情です。
トイレや水分補給などの生理現象の場合
トイレや水分補給などの生理現象を理由とする離席は、過度に制限することは問題です。
特に、体調が悪化している場合、水分補給やトイレの回数が多くなることは誰しもあり、ある程度は許容すべきです。生理現象なのに離席を制限したことで体調の悪化を招けば、健康で安全な職場環境で働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)の違反となります。
長時間労働やハラスメントなど職場側に問題がある場合
長時間労働やハラスメントなど、職場に問題があるとき、離席がやむを得ないケースがあります。職場の問題が原因でメンタルヘルス不調を生じてしまい、離席を余儀なくされることもあります。安心して働ける環境でない場合、離席しても仕方ないと考えられます。
職場環境の改善、配置転換や休職などの対応を検討すべき状況もあります。「離席が多い」という表面上の理由にとらわれず、会社は慎重に対応しなければなりません。
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仕事中に離席が多いと注意された場合の対処法

仕事中に「離席が多い」といって注意された場合、どのように対処すべきでしょうか。
離席は、許される場合と違法となる場合があると解説しましたが、注意されたときは感情的にならず、落ち着いて対応することが重要です。
事実関係を整理して記録する
仕事中の離席・回数・理由を客観的に把握するため、事実関係を整理してください。
離席の回数・時間・理由を記録した上で、労使間で確認しておきましょう。これにより、感情ではなく事実に基づいて対応することが可能となります。特に、仕事中の離席の多さを注意されたときは、その回数と時間を客観的な証拠として残し、後から過大視されないようにしておくべきです。
正当な理由がある場合は上司に伝える
仕事中の離席について、正当な理由がある場合は上司に伝えましょう。
正確に理由を伝えれば、配慮をしてもらえる可能性があります。例えば、取引先の担当者から頻繁に私用携帯に電話がかかってくる場合、注意して防止してもらう必要があります。また、家族の病気や事故など、頻繁に連絡を取る必要がある場合も、勝手に離席してしまうのではなく、配慮を求めるようにしましょう。
また、健康上の理由でトイレに行く回数が多くなりそうな場合は、必要に応じて医師の診断書を提出するのが適切な対応です。
離席の改善策を講じる
仕事中の離席を注意されたら、改善する姿勢を示すことが重要です。改善策は状況によっても異なりますが、例えば次の方法を試してみてください。
- ポモドーロ・テクニック(25分間の作業と5分間の休憩を繰り返す時間管理術)を利用して、集中・休憩のメリハリをつける
- 頻尿、腹痛など健康上の理由がある場合は医師の診断を受ける。
- 離席する前後に「5分休憩します」など周囲に声掛けをする。
また、職場の人間関係が合わないことが理由で離席が多くなってしまっていた場合、配置転換を申し出たり、退職や転職を検討したりすることも選択肢の一つとなります。本人に合った環境での勤務であれば、ストレスが軽減され、結果として離席も少なくなると考えられます。
離席を理由とした注意や処分は不当となる可能性がある

次に、仕事中の離席を理由に不利益な処分をされたとき、どう対応すべきかを解説します。
業務命令として離席回数や時間が決められているとき、これに違反することによって注意指導や処分の対象とされることがあります。しかし、仕事中の離席を理由とした注意や処分は、不当となる可能性があります。前述の通り、健康上の理由やトイレなどの生理現象、ハラスメント被害の回避といったやむを得ない理由で離席する場合、これを理由に不利益な処分を下すことは許されません。
会社としても配慮すべき理由があるにもかかわらず、一方的に評価を下げたり、不利益な扱いをしたりすることは、ハラスメントにもなりかねません。
労働者としては、やむを得ない離席であるのに、給料の引き下げや懲戒処分といった大きすぎる不利益を負わされそうになったときは、不当な処分として争うべきです。上司の独断で決められたものについては社内の相談窓口へ相談すべきであり、社内での解決が難しいものについては、労働問題に精通した弁護士に相談し、サポートを受けるのが適切です。
「懲戒解雇を争うときのポイント」の解説

仕事中の離席に関するよくある質問
最後に、仕事中の離席に関するよくある質問に回答しておきます。
1日の離席時間は合計何分まで許容される?
許容される1日の離席時間について、明確な基準はありません。
重要なのは、離席時間が長いことで業務にどれほど支障が出るかという点です。基本的には短時間で、常識的な範囲内であれば、問題視されないことがほとんどです。ただし、体調不良や病気でもないのに必要以上にトイレ休憩を取るなど、合理的な範囲を逸脱している場合、注意指導の対象となるおそれがあります。
離席が多いことを理由に解雇は可能?
離席が多いことだけを理由にいきなり解雇することは認められません。
解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であり、注意指導を経て改善がない場合に限って行うべきです。離席を理由とする場合も、相当長時間かつ頻度の高い離席が、理由もなく繰り返されるケースでもない限り、解雇は困難です。
なお、裁判例では、遅刻や長時間の離席に加えて、上司に反抗的な態度を取り、業務と無関係なウェブサイトを頻繁に閲覧するなどの問題行為を繰り返し、注意や出勤停止などの処分をしてもなお改善されなかったケースで、解雇を有効とした事例があります(三菱電機エンジニアリング事件:神戸地裁平成21年1月30日判決)。
頻繁な離席を防ぐ企業側の対策は?
頻繁な離席を防ぐため、企業にも、労働者に負担をかけない、働きやすい職場環境を整える責任があります。具体的な対策として挙げられるのは、以下の通りです。
- 一部の従業員に業務が集中しないよう注意する。
- 業務量や人員配置を定期的に見直す。
- 上司から部下に話しかける機会を増やす。
- 産業医面談やストレスチェックなどで従業員の健康状態の悪化に気付く。
離席の多い社員がいた場合は、上司の側でも感情的に叱責するのではなく、その理由を確認し、どのようにしたら離席を減らせるか、コミュニケーションを取りながら対策を講じることが重要です。
不利益な処分を検討する場合も、注意指導からはじめ、軽度の懲戒処分から重度のものへと段階的に進め、それでも改善が見られない場合には解雇を検討します。
【まとめ】仕事中の離席について

今回は、仕事中の離席についての考え方を解説しました。
仕事中の離席が多い場合からといって直ちに違法となるわけではなく、回数や時間に明確な基準があるわけでもありません。重要なのは、離席の理由を合理的に説明できるか、離席によって業務に支障を与えていないかという点です。
一方で、周囲との不公平感が生じたり、業務に影響が及んだりする場合、過度な離席は注意指導の対象となることがあります。この場合でも、離席そのものを制限したり、従わない労働者に不利益を課したりする対応は不適切と考えられます。
体調不良などのやむを得ない理由があるときは、無理に我慢せず、配慮を求めるべきです。離席を理由とした不当な扱いを受けていると感じる場合は、速やかに弁護士へ相談してください。
- 仕事中の離席が多いと「サボり」と見なされ、低評価や注意の対象とされる
- 「離席が多い」と評価される回数や時間に、法律上のルールはない
- 業務に支障が生じる離席は許されない一方、体調不良や休憩には配慮が必要
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