一度は弁護士に依頼したものの、不満を抱える人も少なくないでしょう。
依頼中の弁護士の対応に不安がある、方針や価値観が合わない、信頼関係が築けないと感じるなら、途中で弁護士を変更することも可能なので、選択肢の一つとして検討する価値があります。労働問題は、他の法分野とは異なる特有の専門知識が必要であり、十分な実務経験がないと、依頼者の希望に沿った解決にならない危険があります。
労働問題は、生活に直結する深刻なトラブルなので、単純な金銭の問題だけでなく、個々の事情に応じた丁寧な方針決定が必須となります。利益や効率を重視する弁護士だと、依頼者の思いや背景事情への配慮が不十分となるケースがよく見られます。
今回は、弁護士を変更する方法と、その際に注意すべきポイントについて、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 失敗を避けるため、信頼して任せられる弁護士か、依頼時に慎重に吟味する
- 弁護士を変えたいときでも、まずはセカンドオピニオンから始める
- 弁護士を変更するときは、弁護士費用で採算が合わなくならないかを検討する
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弁護士を変えたい方へ

信頼して任せた弁護士を「変えたい」と感じるケースは少なくありません。
一度は信頼して依頼しても、状況や気持ちは変化するので、その後に「弁護士を変えたい」と感じるのも全く不自然ではありません。はじめに、「弁護士を変えたい」という気持ちが少しでも生じた人に向けて、最初に考えることを解説します。
弁護士を変更することは可能
まず、「弁護士を変更することは可能である」という大原則を理解してください。
当事務所でも、既に弁護士に依頼中の方から「弁護士を変更することができるのか」「そもそも変更自体が難しいのではないか」と相談を受けることがあります。しかし、結論としては弁護士を変更することは全く問題なく可能です。本解説の通り、リスクやデメリットを伴うため慎重に判断すべきですが、「変更できない」というのは誤解です。
ただし、「不満だ」「乗り換えよう」といった軽い気持ちで進めるのは適切ではありません。少なくとも、次章の通り変更する理由を整理し、感情的にならないように決めてください。
弁護士の変更を検討すべきケース
現在依頼中の弁護士に抱く、よくある不満・不安には、次のものがあります。当事務所での相談例でもよく聞くものばかりです。
- 解決したい法分野の専門知識に乏しい弁護士だった。
- 弁護士の意見が、依頼時から大きく変わった気がする。
- 態度が高圧的で、雑に扱われている感じがする。
- 依頼者の気持ちや意向、希望を反映してくれない。
- 連絡が遅く、動きが非常に悪い。
- 報告や説明がなく、質問しても回答が理解できない。
これらの不満は、当初の依頼時に避けられた可能性があります。例えば、「緊急だったので、相談予約が早い事務所に依頼した」「方針が強気な弁護士に依頼した」といった場合、複数の弁護士の意見を聞いていれば失敗を回避できたでしょう。
とはいえ、法律相談で弁護士の能力から相性まで全て見抜くのは難しく、法律知識のない人にとってはなおさらです。
本当に弁護士を変更すべきか整理する
ただし、弁護士を変えたいと希望するときも、焦って動けば同じ失敗を繰り返します。
先に、変更を希望する理由を整理し、それが現在依頼している弁護士の問題なのか、それとも事案の性質上やむを得ないことなのかを検討すべきです。変更を希望する理由に応じて、次のように最初の対応方針を決める必要があります。
- 弁護士の問題であり、改善可能な場合
「連絡が遅い」「丁寧に説明してくれない」といったコミュニケーション不足が原因なら、要望を率直に伝えることで改善できる場合があります。弁護士変更はリスクを伴うので、話し合いで解決できるに越したことはありません。 - 弁護士以外に原因がある場合
事案の性質や、依頼者の非現実的な期待、高すぎる理想が原因だと、弁護士を変えても不満が残るおそれがあります。それでも現在の弁護士に不信感がある場合、セカンドオピニオンから始めましょう。 - 弁護士に大きな非がある場合
一方的に辞任された、業務停止になったなど、弁護士側に非があるケースでは、返金や責任追及を検討します。次に依頼する弁護士は並行して探す必要があります。
弁護士変更に伴うリスクを少しでも減らすために、一度失敗して弁護士に疑念を抱いている状況だからこそ、次の弁護士は慎重に探してください。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

弁護士を変更する方法の具体的な進め方

次に、弁護士を変更する方法について、具体的な流れを解説します。
セカンドオピニオンを求める
弁護士の変更を決断する前に、セカンドオピニオンを聞くようにしてください。
セカンドオピニオンとは、現在任せている法律問題について、別の弁護士の意見を聞くことです。次の依頼先の候補となる弁護士をピックアップし、初回相談の予約をしてください。相談では、現在の状況を正確に説明し、「先生ならどう進めますか?」とアドバイスを求めましょう。

セカンドオピニオンでは次の点に注意すると、より有効なアドバイスが得られます。
- 現在の状況を包み隠さず話す。
- 自分に有利な事情だけでなく、不利な事情も伝える。
- 現在の弁護士への不満も率直に伝える。
- 方針については現在の弁護士との違いを意識する。
他の弁護士に依頼中であることを隠して相談する人もいますが、状況に応じてアドバイスが変わってしまうのでおすすめしません。再発防止のため、現在の弁護士への不満も伝えるべきですが、感情をぶつけすぎないよう注意してください。
セカンドオピニオンは、最終的に弁護士を変えないことを決断した場合も、現在の弁護士にあらためて希望を伝える役に立ちます。まずは無料相談からでも試してみる価値があります。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

次の弁護士を決めてから解任を申し出る
弁護士変更で重要なのが、先に新しい弁護士を見つけてから解任することです。その場の感情や勢いで現在の弁護士を先に解任することには、次のデメリットがあります。
- どの弁護士にも生じる不満を見逃した
現在依頼中の弁護士の問題ではなく、どの弁護士にもあてはまる不満だと、他の弁護士に相談しても回答が同じことがあります。 - 次の弁護士が見つからなかった
解任・辞任の経緯から「問題のある依頼者」と見られたり、裁判手続きが相当程度進行していて状況的に引き受けられなかったりといった理由があります。 - 空白期間に不利益が拡大した
あなたの事情は相手方には関係なく、交渉で次の手を打たれたり、労働審判や訴訟の次の期日が迫ったりすると不利になるおそれがあります。
法曹業界でセカンドオピニオンはよくあることで、通常の弁護士であれば嫌な顔はしません。当事務所でも、他の事務所に依頼中に来られる方もいますし、逆に、当事務所に依頼中でも、疑問があれば他の弁護士の意見を聞くことも差し支えないとお伝えしています。
「セカンドオピニオンの弁護士が、責任を持って案件を引き受けてくれるか」という点は注意を要します。「相談で終了」と考え、希望的観測だけを伝える弁護士もいるからです。
「本当に依頼可能か」「時間や費用はどれくらいか」なども深掘りして質問し、最終的には委任契約を締結してから(少なくとも、引き受けてもらえる確約を得てから)、前任の弁護士を解任する流れが安全です。
前任の弁護士を解任する(契約解除)
次の弁護士との契約を締結したら、依頼中の弁護士を解任します。
弁護士を解任するときの伝え方にルールはなく、対面やメールなどで「契約を解除したい」「弁護士を変えたい」と率直に伝えるので差し支えありません。既に弁護士との信頼関係が破壊されているときは、記録に残るよう書面やメールで伝えるのがおすすめです。
自分で直接伝えるのがストレスとなる場合、後任の弁護士に代理で解任の意思表示をしてもらう方法もあります。中には、「筋を通すために、先に自分で伝えたい」という人もいますが、既に弁護士変更を決断しているなら、自分のリスクを減らすことを優先してください。
弁護士変更時の引き継ぎを行う
最後に、弁護士変更時の引き継ぎを行います。
本来、法律トラブルは依頼者本人の問題なので、「前任弁護士から全資料の返還を受け、後任弁護士に渡して説明する」という手順が正式です。
現在の弁護士に依頼すべき記録や資料は、次の通りです。
- 裁判所や相手方とのやり取りのコピー
- 提出済みの書面一式(訴状、答弁書、準備書面など)
- 証拠資料のコピー
- 事件の進行状況の説明(今後の期日やスケジュール)
事件に関する資料は依頼者のものなので、交付を拒否するのは不適切です。率直に「新しい弁護士に引き継ぐため、記録のコピーを送ってほしい」と伝えて構いません。
一方、新しい弁護士に渡すために、次の準備をするとスムーズです。
- 前任弁護士との委任契約書・費用明細
- 上記で引き継ぎを受けた書面・証拠資料一式
- 事件の経緯を時系列でまとめたメモ
特に、依頼者作成の時系列メモがあると事情の把握が早く進みます。
ただし、前任弁護士の説明が不十分で状況が把握できなかったり、必要書類の共有が漏れていたりすることもあります。この場合、業務の引き継ぎも後任の弁護士に依頼することが可能です。業務資料についてデータで保管する弁護士も増えており、労働審判や訴訟などで書面や証拠が多数ある場合、弁護士間の引き継ぎの方がスムーズです。
「時系列表の書き方」の解説

弁護士を変更するタイミングは?

「いつまでなら変更できる?」「タイミングが分からない」といった質問もあります。
この点について、弁護士の変更に決まった期限はありません。裁判中でも問題なく、極論すれば、判決確定や和解成立の直前まで、いつでも弁護士を変更できます。
しかし、期限がないからといって「いつでも良い」わけではありません。むしろ、状況が進行するほど、取れる選択肢は限られていき、弁護士を変更しても軌道修正の余地は小さくなります。そのため、「このまま任せて大丈夫だろうか」と少しでも疑問を感じるなら、「弁護士を変更する方法の具体的な進め方」を参考に、できる限り早い段階で検討すべきです。
「少し気になる」「なんとなく不安だ」といった違和感も放置しないことが大切です。思い立ったら、まずはセカンドオピニオンを求めるなど、早めに行動を起こしましょう。たとえ依頼後でも、弁護士に全てを任せきりにするのではなく、「自分の問題である」という当事者意識を持って状況を把握することが、後悔のない選択につながります。
今の弁護士との契約解除のポイント
次に、弁護士変更の際に起こる、今の弁護士との契約解除について解説します。
特に重要なのが費用面でしょう。弁護士を途中で変更したことでかえって費用が高くつき、採算が合わなくなっては本末転倒です。
委任契約はいつでも解除できる
弁護士との委任契約は、依頼者側からいつでも解除できます。
このことは、弁護士との委任契約書に記載されるほか、民法651条が「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる」と定めていることからも明らかです。
「途中で解約してもいいのだろうか」と遠慮する必要はありません。弁護士の委任契約は、長期的な信頼関係が前提となっているので、信頼できないと感じた時点で見直すのは当然です。
契約解除時の費用の扱いに注意する
ただし、契約解除時の費用の扱いには、くれぐれも注意してください。
「委任契約はいつでも解除できる」と解説しましたが、費用が全て戻るとは限りません。弁護士費用は主に、依頼時に発生する「着手金」と成功時(終了時)の「報酬金」がありますが、それぞれ次のような扱いとなることが多いです。

契約内容や進行状況によっても異なるので、弁護士変更でかえって費用面で損しないよう、事前に確認しておきましょう。
着手金が返還されない可能性がある
依頼時に生じる着手金は、「結果にかかわらず返金しない」と定める契約が多いです。
したがって、依頼者の事情による中途解約では、着手金は返還されません。分割払いや後払いの契約でも、既に発生している着手金は払い切る必要があります。一方で、着手後すぐの解約など、まだ弁護士が依頼事項に着手していないと考えられる場合は、少なくとも一部を返金できないか、弁護士に申し出るのがよいでしょう。
報酬金の一部を請求される可能性がある
既に事件がかなり進んでいる場合、報酬金の一部を請求される可能性があります。
例えば、残業代を請求して会社から一定の支払い提案を受けていた、不当解雇の解決金額の調整中であったというように、「今すぐに終了しても一定の経済的利益が見込まれる」という状況では、その利益に応じた報酬金を請求される可能性が高いです。
特に、着手金無料・成功報酬制の場合、中途解約をすると違約金が発生することを定める例もあるので、委任契約書や約款を確認しておいてください。
今の弁護士への解任の伝え方
弁護士を解任するときは、その伝え方に注意が必要です。
不満だからといって感情的になると、弁護士から反発され、最悪の場合、引き継ぎの協力を得られないおそれもあります。冷静に、かつ簡潔に意思を伝えることが重要で、既に決断しているなら理由の説明も不要です(例:「一身上の都合」「方針が合わない」など)。
方法に制限はありませんが、後から争いになることを避けるために、口頭だけでなく、書面やメールなどの記録に残る形で伝えるのがおすすめです。次の文例も参考にしてください。
件名:委任契約の解除について
◯◯先生
いつもお世話になっております。
◯◯◯の件でご対応いただいております◯◯◯◯です。
本件につきまして、慎重に検討いたしました結果、一身上の都合により、貴職との委任契約を解除させていただきたく、ご連絡申し上げました。
これまでご対応いただきましたことに感謝申し上げます。
つきましては、事件記録一式(裁判所・相手方とのやり取り、提出書面、証拠資料など)の写しをご準備いただけますと幸いです。あわせて、現時点での費用精算についてもご教示いただけますでしょうか。
お手数をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
弁護士を変えるメリット・デメリット比較

最後に、弁護士を変えるかどうか悩む方に向けて、メリット・デメリットを解説します。
弁護士の変更は、非常に大きな決断です。感情だけで動くのではなく、メリットとデメリットを整理し、変更後の見通しを踏まえた合理的な判断が重要です。
弁護士を変更するメリット
弁護士を変更することには、次のメリットがあります。
方針を修正してより良い解決を目指せる
前任の弁護士の方針が適切でなかった場合や、該当分野の知識経験が不足していた場合、交代によって流れが変わることがあります。このメリットを最大限活かすためにも、その分野に深い知識と豊富な実績を有する弁護士を選びましょう。
納得感のある解決につながる
法的な結論が大きく変わらなくても、不信感を持ったまま進むのは精神的な負担となります。解決に至っても、「あのとき弁護士を変更していれば、もっと良い解決になったかもしれない」と後悔が残ります。
信頼できる弁護士に依頼し直すことで、気持ちを立て直し、未来に向けて納得できる形で進められるメリットがあります。
コミュニケーションが改善する
連絡が取りづらい、説明が不十分といった不満は、相性の問題であることもあります。
弁護士を変えることで報告や相談がしやすくなれば、コミュニケーションを密に取ることができ、今後の手続きの流れがスムーズに進められるメリットがあります。依頼者と弁護士が信頼関係を築けている環境は、法的トラブルを解決する際の大きな強みとなります。
弁護士を変更するデメリット
一方で、弁護士を変更するデメリットも見逃してはなりません。以下の点が許容できるか、変更前に今一度見直しておきましょう。
引継ぎに時間と費用がかかる
弁護士が変わると、どうしても時間がかかってしまいます。これまでの事案把握のため、一から説明を行う必要があり、進捗状況も確認しなければなりません。
新たな着手金が必要となり、経済的な負担も増大してしまいます。引き継ぎには手間がかかることから、弁護士側も「途中だから割引」というわけでもないことが多いです。
ただし、費用面のデメリットがあるからといって我慢して、「信頼できないと感じながら最後まで進める」こと自体が大きなリスクなので、後悔のない決断をしてください。
途中からの受任を断られることもある
事件がかなり進行している場合、途中からの受任をためらう弁護士もいます。
特に、進行の状況からして選択肢が限られ、ここから依頼を受けても大きな改善が望めない場合、依頼を断らざるを得ないケースもあります。例えば、既に判決直前であるなど、不満があっても弁護士を変えない方がよい場面もあります。
努力の過程を否定される可能性がある
新しい弁護士が、前任者の方針を必ずしも肯定するとは限りません。
状況を改善するために従前の戦略を大きく転換することが多く、これまでの対応の問題点を指摘されたり、依頼者自身も過去の行動を批判されたりする可能性があります。
【まとめ】弁護士を変更する方法

今回は、弁護士を変えたいと考える方に向けて解説しました。
一度は弁護士に依頼して「会社と戦おう」と決意したにもかかわらず、その弁護士に不安を感じてしまう状況は非常に心細いでしょう。依頼した後になって「十分な信頼を築けない」と感じたとき、途中で弁護士を変更することに、遠慮や後ろめたさを感じる必要はありません。
ただし、本来は、最初から信頼できる弁護士に依頼するのが理想であり、「途中で弁護士を変える」という選択は、「当初から良い弁護士に依頼する」よりもリスクを伴うのも事実です。費用や手続き面で少しでも不利益が及ばないよう注意しなければなりません。
弁護士を変更するかどうかを判断する際は、想定される影響や注意点を十分に理解して進めてください。まずはセカンドオピニオンから、ぜひ弁護士に相談してください。
- 失敗を避けるため、信頼して任せられる弁護士か、依頼時に慎重に吟味する
- 弁護士を変えたいときでも、まずはセカンドオピニオンから始める
- 弁護士を変更するときは、弁護士費用で採算が合わなくならないかを検討する
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