失業保険をもらうには「失業状態」であることが条件となります。
会社を退職するなら、きちんと手続を進めて、確実に失業保険をもらうのが重要です。失業保険は、再就職までの生活のため、必須の収入源となるからです。
失業保険は、「就職したいのにできない」という人の生活費を補うための給付です。そのため、そもそも就職する気がない人や、労働できない人は、失業保険をもらえません。この「就職したいのにできない」という状態を、法律用語で「失業状態」と呼びます。失業状態は、失業保険の必須の条件であり、失業状態でなければ受給自体ができません。
今回は、「失業状態にある」と評価されるために満たすべき要件を、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 失業保険をもらうためには「失業状態」にあることが要件
- 「失業状態」と認められるには、就職の意思・能力があり就職活動をしている必要あり
- 「失業状態」にあてはまらないのに失業保険をもらったら不正受給となる
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失業保険をもらうには資格認定が必要
失業保険は、職を失った期間中の収入について、一定の保障をしてくれます。失業保険は、「失業手当」「失業給付」とも呼びます。
失業保険は、雇用保険に加入する人にもらう権利があります。ただし、離職日前の2年間に、雇用保険の被保険者だった期間が12ヶ月以上必要となります(自己都合退職の場合)。
そして、重要なことは、今回解説するように「失業状態」になければもらえないということです。
失業保険を受給するには、一定の受給要件を満たしている必要があります。そのため、この受給要件を満たすかどうか判断する「資格認定」の手続きを踏まなければなりません。「失業状態」をはじめ、受給要件を満たさないと判断されれば、資格認定が受けられず、失業保険をもらえません。
「失業保険の手続きの流れと条件」の解説
「失業状態」にあることは資格認定の要件となる
失業保険の資格認定の手続きは、ハローワークにて行います。具体的には、認定日に、ハローワークに「失業認定申告書」を提出し、「失業状態」にあることの認定を受けます。
このとき、失業状態だと認められなければ、資格認定も受けられません。失業状態とは、「就職したいのにできない」状態のことです。
そして、資格認定は、4週間ごとに1度おこなわれます。つまり、4週に1度は「就職したいのにできない」とハローワークに示さなければ、失業保険がもらえません。
資格認定のときには、認定日前の4週間について、失業状態にあったことを確認します。失業状態にあったと認定された場合には、その4週間分の失業保険をまとめてもらえます。
「失業状態」とはどのような状態?
失業状態とは、「就職したいのにできない状態」と解説しました。
失業保険がもらえるかどうか詳しく知るため、失業状態とは具体的にはどんな状態なのかを解説します。失業状態にあるといえるためには、次の3つのポイントをおさえなければなりません。
就職を希望している(就職の意思がある)
まず、失業状態であると認定されるためには、就職を希望していることが必要です。そもそも就職を希望しておらず、退職後に働く意思がないなら、失業保険を受け取れません。
例えば、次の人は、退職しても就職を希望していないので失業状態ではありません。
- 定年退職し、年金生活をする予定の人
- 育児に専念するために退職する人
- 学業に専念するために退職する人
就職できる状態にある(就職の能力がある)
次に、失業状態だと認定されるために、就職できる状態にあることが必要です。就職するだけの能力、つまり、働ける力がなければ、そもそも失業状態ではありません。
健康状態が悪化し、すぐ就職する能力がない方や、就職できる環境にないとき、失業保険を受け取れません。ケガや病気によって動けないなら、治るまで働けないのですから失業状態だということはできません。
例えば、次の人は失業状態ではありません。
- 事故で働けなくなって退職する人
- うつ病が悪化して、退職する人
- 病気によって動けず、労働できない人
積極的に就職活動をしている
最後に、失業状態であると認定されるためには、積極的に就職活動する必要があります。積極的に就職活動をしていなければ、就職できないのは自分の責任でもあります。就職の意思と能力があっても、まったく就職活動していないなら失業保険を受給できません。
「失業状態」と認められないケースとは?
失業状態の3つの要件とは逆に、就職の意思がなく、就職の能力もなく、就職活動もしていないなら、「失業状態」とは認めてもらえず、失業保険を受給することができません。
つまり、失業状態だと認められないのは、具体的には次のような例です。
- 結婚して退職後、主婦になると決めている場合
- 退職後、しばらくはリフレッシュし、就職する気のない場合
- 病気やケガを理由に退職し、すぐ労働できない場合
- 妊娠・出産を理由に退職し、育児のためすぐに職場復帰は困難な場合
- 介護を理由に退職し、介護の継続のため就職が難しい場合
- 学校に通うために退職し、日中の業務ができない場合
たとえ無収入のボランティアでも、活動があれば「失業状態」と認定されなくなります。そのため退職後にボランティアしていると、失業保険の待期期間の満了は、先送りされてしまいます。
また、当然ながら、既に新しい仕事をしているなら失業保険はもらえません。この点から、次のケースも、失業状態とは認められないので注意が必要です。
- 短期の空白のみで、再就職に成功した場合
- アルバイトとして生活費を稼いでいた場合
- 会社をやめた後も副業の収入がある場合
- 派遣社員として働いていた場合
- 役員や顧問に就任し、収入を得ていた場合
- 退職後、自営業として独立起業した場合
失業状態になく、本来受け取れないはずなのに失業保険をもらうと、不正受給となってしまいます。既に仕事しているのを隠して失業保険をもらうなど、不正受給には重いペナルティがあります。失業保険を不正受給すると、受給できなくなるだけでなく「3倍返し」のペナルティがあります。
「失業保険の不正受給」の解説
まとめ
今回は、失業保険をもらうための要件となる「失業状態」について解説しました。
失業保険の知識を得ておけば、できるだけ有利に給付を得ることができます。失業保険についての法律知識は、不正受給となってしまわないためにも大切。「失業状態」にないのに、失業保険をもらってはいけません。
退職するときの失業保険に不安のある方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。
- 失業保険をもらうためには「失業状態」にあることが要件
- 「失業状態」と認められるには、就職の意思・能力があり就職活動をしている必要あり
- 「失業状態」にあてはまらないのに失業保険をもらったら不正受給となる
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