7月27日に開催された、厚生労働省の第49回中央最低賃金審議会において、平成29年度の地域別最低賃金額改定について、その目安が示されました。
今回示された、地域別最低賃金額改定の目安によれば、平成29年度の引き上げ額は、全国平均25円(昨年度25円)となっており、二年連続で過去最大の上げ幅となる予定です。
1. 最低賃金とは?
最低賃金とは、最低賃金法という法律に定められた、労働者保護のための賃金の下限のことをいいます。わかりやすくいえば、「これ以下の賃金(時給)で働かせたら違法」ということです。
最低賃金法は、労働者保護のための最低限度を定める法律であるため、これ以下の賃金を、労働者と会社が合意で定めたとしても、「違法無効」となり、最低賃金分を請求することができます。
最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類がありますが、今回発表された増額の目安は「地域別最低賃金」に関するものです。
2. 全都道府県の上げ幅が「20円」以上!
最低賃金のうち、「地域別最低賃金」は、各都道府県ごとに定められており、その都道府県で労働をする場合の、「最低時給」を定めています。
地域別最低賃金は、都心部に近付くほど高額になる傾向にありますが、今回の増額の目安では、全都道府県で、「20円」を超える引上げの目安となっています。
具体的には、A~Bの4種類のランクに分け、次のように引き上げ額の目安が示されています。
- Aランク(引上げ額26円)
:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府 - Bランク(引上げ額25円)
:茨城県、富山県、長野県、静岡県、京都府、広島県など11県 - Cランク(引上げ額24円)
:北海道、宮城県、群馬県、新潟県、岐阜県、山口県など14県 - Dランク(引上げ額22円)
:青森県、岩手県、福島県、鳥取県、長崎県、鹿児島県、沖縄県など16件
3. 実際の改定は2017年10月
今回、2017年7月に発表されたのは、あくまでも引上げ額の「目安」に過ぎません。
実際に、地域別最低賃金の増額がなされるのは、平成29年(2017年)10月になります(具体的には、10月1日から10月中旬までに、順次発効されます。)。
今回の、厚生労働省の中央最低賃金審議会の発表をもとに、各地方最低賃金審議会において目安を参考に実態調査が行われた結果、各都道府県労働局長が、地域別最低賃金を決定します。
4. あなたの会社は最低賃金違反ではない?
最後に、平成29年度の地域別最低賃金が引上げとなるにあたって、労働者(あなた)のはたらく会社が、最低賃金を下回る給与で労働者を酷使する、違法なブラック企業ではないかどうか、チェックする方法を、弁護士が解説します。
特に、最低賃金は、「時給」によって示されていることから、アルバイトやパートにしか適用されないのでは?と勘違いしている会社では注意が必要です。
今回解説するとおり、最低賃金は、時給ではたらくバイト労働者などでなくても、月給制の正社員にも当然適用されるものです。
4.1. 最低賃金の対象となる賃金
最低賃金の対象となるのは、次の賃金です。基本的には、給与の名称、費目によらず、「所定労働時間の労働の対価として、毎月支払われている金額」が、最低賃金法の対象となります。
- 基本給
- 諸手当
- ただし、家族手当、通勤手当、残業代(時間外手当、休日出勤手当、深夜勤務手当)は除く。
そして、これらの賃金の合計を、1時間当たりの時給に換算した場合の金額が、地域別最低賃金を下回っていないかどうかをチェックしていきます。
4.2. 具体的な計算方法
では、時給制社員だけでなく、月給制の正社員であっても最低賃金を下回っている場合には給料を請求できることをご理解いただいた上で、具体的な最低賃金違反のチェック方法、計算方法を、弁護士が解説します。
具体的な計算方法の基本的な考え方は、「1時間あたりの時給になおし、最低賃金と比較する。」ということですが、給与制度によって、次のように説明されます。
- 時給制の場合
:時間給と、最低賃金とを比較する。 - 日給制の場合
:【日給÷1日の所定労働時間】と最低賃金とを比較する。 - 月給制の場合
:【月給÷1ヶ月の平均所定労働時間】と最低賃金とを比較する。 - 歩合給制
:【歩合給÷賃金計算期間内の総労働時間数】と最低賃金とを比較する。
歩合給制度を導入している会社ではたらく労働者の方は、歩合給部分もまた最低賃金の適用対象となることに注意してください。平成29年10月がきたら、再度この計算方法でチェックしましょう。
5. まとめ
今回は、平成29年(2017年)7月に、厚生労働省の中央最低賃金審議会から発表された、平成29年度の地域別最低賃金の増額目安について、最低賃金についての基礎知識とともに、弁護士が解説しました。
最低賃金よりも低い給与で働かせることは違法ですから、あまりにも給与が低すぎる場合には、最低賃金を下回っていないかどうか、確認をしてみてください。
最低賃金を下回る給与で酷使され、差額給与や残業代の請求を検討されている労働者の方は、労働問題に強い弁護士に、お早目に法律相談ください。