無理難題の条件を押し付けられて、クリアできなければ解雇といった具合に退職を強要された労働者の方からの法律相談です。
※ご相談内容は架空のケースです。労働問題に強い弁護士は、法律相談の秘密は必ず守ります。
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私は、東京都内のIT企業の経理担当の社員です。
新卒で今の会社に入社してから、一心不乱にはたらき続け、貢献し続けてきたつもりでいます。今年で勤続35年、定年も近づいてきました。
しかし、今年になって突然、会社の業績にかげりが見え始め、社長が、「社員を減らすつもりだ。」と言い始めました。
真っ先に槍玉にあがったのが、定年間際で給料もある程度高くなり、お荷物社員とみなされた私でした。
社長から、「自主的に退職をしてはくれないか。」と言われましたが、私はこの会社で一生を終えるつもりでしたから、退職はもちろん、転職などこの年齢になって到底考えられず、お断りしました。
すると、私の業務上の問題点とされるチェックリストを渡され、すべての条件をクリアしなければ、問題社員として解雇をするつもりだつ通告してきました。
「条件をクリアすれば、残っていてもよい。」とは社長から言われたものの、その条件はいずれも、到底クリアの困難な厳しいノルマばかりで、クリアすることは不可能です。
つまり、私は、クリアが不可能な無理難題を吹っ掛けられ、自主的に退職するよう、退職強要されているというわけです。
このままこの会社で一生を終えるつもりでしたから、退職強要、ましてや解雇の危機など初めての経験で、どうしたらよいか自分では判断がつきません。
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「退職をしてはくれないか。」と自主的に退職を勧めることは、違法行為ではありません。
しかし、これはあくまでも「退職勧奨」といって、退職をオススメする行為です。
これに対して、ご相談内容にあるような、「条件をクリアできなければ解雇する。」と伝えて無理難題を吹っ掛けることは、退職勧奨ではなく、退職強要です。
つまり、労働者の意思を無視して、強制的に退職させるための方法で、違法行為となる可能性があります。
退職に同意できない場合には、会社からの退職強要には屈せず、また、会社から出されたいかなる書面にもサインをせずに、弁護士に法律相談ください。
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私は、東京都内のIT企業の経理担当の社員です。
目次
1. 「条件付き」の退職勧奨は違法?
会社(使用者)が、労働者(従業員)に対して、退職をするよううながすことは、自由であり、違法行為ではありません。これを、労働法の専門的な用語で「退職勧奨」といいます。
今回のご相談で問題となっているのは、「条件付き」の退職勧奨です。
条件があまりに厳しく、クリアのハードルが高すぎる場合には、それは、そもそも退職の「オススメ」ではなく、退職を強要しているのと同じです。
場合によっては、「解雇」であると評価されるケースも少なくないといえます。
したがって、厳しい条件の付いた退職勧奨は、退職強要や解雇と同様であり、相当な理由がない限り、違法、無効となりうるものです。
2. 「条件付き」退職勧奨に対する対応策は?
では、会社から、厳しい条件のついた退職勧奨を受け、退職を強要された場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
まず、一番重要なことは、会社の言うことを真に受けて、条件をクリアできなかった場合に、自主的に退職してしまうことです。
条件が真っ当なものであれば仕方ないともいえますが、条件がそもそも無理難題であった場合には、会社の指示する条件を、そのまま鵜呑みにする必要はありません。
むしろ、条件をクリアできなかったことで、退職届などを記載してしまった場合、あとから争うことが困難となってしまうケースもあるため、注意が必要です。
3. 弁護士に退職強要を相談するときのポイント
最後に、無理難題を押し付けられて、退職を強要されてしまったときに、弁護士に法律相談するときのポイントについてまとめておきます。
ブラック企業から退職を強要されている場合には、自主的に退職してしまう前に、労働問題に強い弁護士にご相談ください。
3.1. 費用
退職強要についての労働問題を弁護士に相談するときの費用として、まずは法律相談料が必要となります。
というのも、退職強要を受けている場合、これをストップさせたり、退職強要に対する直近の対応策について、弁護士のアドバイスを受けることが有益だからです。
場合によっては、退職強要に対する対処だけで、問題が解決する場合もあります。
3.2. 会社に対するはたらきかけ
弁護士に、退職強要の問題を依頼をした場合、弁護士はまず、内容証明などの方法によって、退職強要が違法行為であることを警告します。
特に、今回のご相談内容にあるような、クリアすることの困難な厳しい条件を付け、無理難題を押し付けることによって退職を強要するようなケースでは、会社が、違法行為であることを理解していないケースもあります。
3.3. 相談するメリット
退職強要の問題を弁護士に相談するメリットは、早期の解決が期待できることです。
というのも、先程申し上げたとおり、「条件をクリアすれば会社に居続けられるのだから。」と言うことによって、違法な退職強要ではないと考えているブラック企業もあるからです。
条件が妥当なものであり、通常の社員であればクリアできるようなものであれば、確かにその理屈も通るかもしれません。
しかし、在職し続けるための条件が、明らかに無理難題である場合には、弁護士から警告を送ることによって、早期の解決を目指すべきです。
4. まとめ
労働者の方からよくある法律相談のうち、無理難題を吹っ掛けられることによる退職強要の問題について、弁護士が解説しました。
無理難題を吹っ掛け、明らかにクリアできないような条件を付けての退職勧奨は、違法な退職強要と同じとみるべきであるケースも多いと言えます。
場合によっては、「解雇」であると考えるべきでしょう。
会社から不当に解雇されてお困りの労働者の方は、労働問題に強い弁護士へ、お気軽に法律相談ください。