「労働問題弁護士ガイド」でも、以前に、こちらの解説で、平成29年1月、違法な長時間労働を行うブラック企業の企業名を公表するという内容の通達が出されたという解説をしました。
厚生労働省は、平成29年5月10日、労働法の重大な違反を行った会社の企業名を、ホームページで一括して企業名公表を行いました。
制裁(ペナルティ)として、非常に大きな意味を持ち、今後、労働法違反を行う企業に対して、強いプレッシャーを与えることとなったのではないでしょうか。
今回は、厚生労働省が行った、一斉の企業名公表について、労働問題に強い弁護士が解説します。気になる会社があれば、以下のサイトから、公表された企業名を探してみてください。
1. 厚生労働省が、労働法違反の企業名を一斉公表
このたび、平成29年5月10日に厚生労働省が行った企業名公表について、まずは、報道されたニュースの内容を見てみましょう
労働法令違反の企業名公表厚生労働省は10日、違法な長時間労働や労災事故につながる瑕疵、賃金不払いなど労働関係法令に違反した疑いで書類送検された企業の社名を同省のホームページ(HP)で公開した。各労働局が発表した内容を一覧表にまとめ、一括して掲載した。
公表されたのは昨年以降、労働関係法令で書類送検した334件に関わる企業名。「工事現場に手すりを設置しない」など労働安全衛生法違反や最低賃金法違反に関わるケースが大半を占めたが、労使協定(三六協定)で決めた延長時間を超えて従業員に残業や休日労働をさせたとする労働基準法違反容疑で送検されたケースもあった。
引用元:共同通信
昨年(平成28年)以降に送検した企業のうち、334件の事件にかかわる企業の名称を公表しました。
実際に企業名を公表された厚生労働省のホームページは、以下のとおりです。
2. どのような行為が問題行為とされている?
今回、厚生労働省がホームページで企業名を公表した企業が行った重大な労働法令違反とは、例えば次のような、違法性の高い行為です。
- 違法な長時間労働
- 労災事故
- 賃金の不払い
特に、労働者の健康や生命にかかわるような、あまりにも過酷な長時間労働や労災事故、労働者の生活の維持にかかわるような賃金の不払いについては、送検、企業名公表など、厳しい処分となる傾向にあります。
3. 今回の「企業名公表」は、これまでと何が違う?
電通の過労死問題、ヤマト運輸の残業代問題など、有名企業が労働問題について、社会的な関心事となり、ニュースで企業名があかされることがよくあります。
今回の「企業名公表」は、このような例とは異なり、厚生労働省が一斉に企業名を公表したことに、重大な意味があります。
今後、電通の過労死問題と同様の、長時間労働、残業代などの問題を起こさないよう、ブラック企業に対する大きなプレッシャーとなるのではないでしょうか。
平成29年1月の通達により、厚生労働省から、重大な労働法違反の場合には企業名を公表する旨の通達がされても、企業名を公表するかどうかは、労働局の判断によってまちまちでした。
4. 企業名を公表された基準は?
企業名を公表する際に、公表するかどうかを決める基準についても、今回、厚生労働省から発表されています。
厚生労働省の発表によれば、企業名を公表された事案は、次の基準にあてはまるものです。すでにこちらでも解説しました、平成29年1月に出された通達に基づいていることがわかります。
企業名を公表する事案
- 労働基準関係法令違反の疑いで送検し、公表した事案
- 平成29年1月20日付け基発0120第1号「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」に基づき、局長が企業の経営トップに対し指導し、その旨を公表した事案
引用元:厚生労働省
また、これらの要件にあてはまる、重大な労働法令違反の事件について、企業名公表を行う際の公表される情報は、次のものとされています。
「企業名公表」といっても、単純に「企業名」が公表されるだけでなく、どのような違法行為を行ったのかということまで、ある程度わかってしまいます。
- 企業・事業場名称
- 所在地
- 公表日
- 違反法条項
- 事案概要
- その他参考事項
最後に、厚生労働省の発表によれば、企業名公表は、1年間とされています。
- 企業名が公表されてから1年間経過するか、
- 1年以内っであっても、必要性がなくなったか、是正・改善がなされた場合
以上のいずれかの場合には、企業名が削除されるものとされています。
実際に企業名を公表された厚生労働省のホームページは、以下のとおりです。
5. まとめ
平成29年5月10日に厚生労働省が行った、労働法に違反する企業名公表についてまとめました。
基本的には、平成29年1月20日に厚生労働省が出した通達にしたがって、その基準に達するような重大な違反のあった会社を、1年間公表し続けるというものです。
労働者の方は、労働問題が起こっている、もしくは、当事者となっているなど、気になる会社があれば、探してみるとよいでしょう。